はじめに
背景
本調査は、AI Overview機能がGoogleサーチコンソールにどのように計測・記録されるかを中心にまとめたものです。AI OverviewはGoogleのAIモデルが検索結果を要約して表示する機能で、2024年に正式提供が始まりました。サーチコンソールではAI Overview由来のトラフィックを新たに把握できるようになり、従来の検索データの見方に変化が生じています。
本調査の目的
本書の目的は次の通りです。AI Overviewの定義を明確にし、主な機能と改善点を整理します。さらに、サーチコンソールでの計測方法と記録のしかたを示し、SEOへの影響を検討します。実務で使える観点に焦点を当てて記載します。
AI Overviewの簡単な説明
AI Overviewは、検索クエリに対して短い要約や手順、関連リンクを提示します。たとえば「料理レシピの手順」や「観光地の見どころ」を一段で示す形式です。ユーザーは要約を見てすばやく情報を得られるため、サイトへの導線やクリック行動に変化が出ます。
本書の構成と読み方
全5章構成で、第2章は概念説明、第3章は機能と改善点、第4章は計測と記録方法、第5章はSEO影響の分析です。まず第1章で全体像をつかみ、第2章以降で詳しく読み進めてください。
AI Overviewとは何か
導入
AI Overviewは、GoogleのAIモデル「Gemini」を使って関連するWebページの情報を自動でまとめ、検索結果の最上部に要約を表示する機能です。従来のリンク一覧に代わり、クリックしなくても概要を素早く把握できます。
仕組み（簡単に）
Geminiが検索結果に関連する複数のページを読み取り、重要な点を抽出して自然な文章で要約を作成します。要約は短く要点を伝える形式で、必要に応じて図や箇条書きのような見やすい表示を行います。
ユーザーにとっての利点
- 複数サイトを自分で比較する手間を減らせます。
- 時間がないときでも、短時間で全体像をつかめます。
- たとえば旅行先の比較や商品の特徴確認などで役立ちます。
引用元と精度について
要約には必ず引用元のリンクが付くため、詳細や出典を確認できます。要約は便利ですが、細かな条件や最新情報は元ページで確認することをおすすめします。
提供開始時期
米国では2024年5月に正式発表され、日本では2024年8月から提供が始まりました。
AI Overviewの機能と改善点
1. 役割の違い
AI Overviewは検索結果の上部に表示される要約です。短くポイントを示し、素早く情報を把握できます。一方、AI Modeは対話形式で深掘りします。Overviewは概要表示に留まり、Modeは追加の質問や詳細な案内に対応します。
2. 新しい機能
- 複雑な条件への対応：複数条件を含む質問（例：予算・日程・好みを組み合わせた旅行プラン）にも対応するよう改善されました。
- プラン作成機能：旅行や学習計画など、段階的なプランを提案します。
- マルチモーダル性の強化：画像などを用いた検索と組み合わせ、文と画像の両方で答えを改善します（例：写真から料理レシピを探す）。
3. 実装と用途の具体例
2024年はCircle to Searchと連携し、一部Android端末でOverviewが表示されました。将来的には2025年に向けて、より高度な推論や複数入力（テキスト＋画像）に対応する予定です。日常では、素早く結論を知りたい時はOverview、詳しく調べて対話しながら詰めたい時はAI Modeを使うと便利です。
4. 改善で期待できること
要約精度の向上で誤解が減り、複雑な依頼でも実用的な提案が出やすくなります。ユーザーは目的に応じて使い分けるだけで検索効率が高まります。
サーチコンソールへの計測と記録
概要
AI Overviewからのアクセスは、これまでのSGE期と異なりSearch Consoleに記録されるようになりました。AI Overview内のすべてのリンクは同一の掲載順位（1位）としてカウントされます。そのためSearch Consoleの「検索パフォーマンス」レポートで流入を把握できます。
Search Consoleでの確認方法（手順）
- 左メニューの「検索パフォーマンス」を開きます。
- 「ページ」タブで注目するページを選びます。
- 日付レンジと「クエリ」や「国」「端末」で絞り込みます。
- 平均掲載順位、表示回数、クリック数、CTRを確認します。AI Overview経由は掲載順位が1として計上される点に注意してください。
判別のポイントと例
- 例: 通常は順位が5〜10位のページが、急に「掲載順位1」で多く表示される場合、AI Overview経由の可能性が高いです。
- CTRが低い一方で表示回数だけ増えるなら、回答表示や概要経由の流入が多いことを示します。
記録と分析の工夫
- データをCSVで定期エクスポートして、日次・週次で比較します。
- Search ConsoleのデータはUTMが付かないため、GA/GA4と組み合わせて行動を追うと実態が分かりやすくなります。
運営上の注意点
AI Overviewの計測は掲載順位指標を変動させるため、順位の平均値だけで成果を判断しないでください。しかしこの記録で、どのページがAI Overview経由で露出しているかを把握できるようになり、対策や改善に役立ちます。
AI OverviewがSEOに与える影響
影響の仕組み
AI Overviewは検索結果ページ上で要約を提示します。ユーザーは要点をそこで得られるため、クリックせずに満足する場合があります。これがクリック率（CTR）低下につながり、流入数や評価に影響します。
具体的な影響例
- トラフィック減少：従来の1位ページでも訪問が減る例があります。例として、簡単なQ&A記事は要約だけで完結してしまいやすいです。
- 滞在時間やページビューの減少：要約で情報が完結するとサイトでの行動が減ります。
対策と実践ポイント
- 独自価値を強める：詳細な解説や事例、図表を増やします。要約だけでは得られない価値を用意してください。
- スニペット最適化：導入文で興味を引き、続きはサイトでしか読めない形にします。
- 内部導線とCTA：関連記事やメール登録などで滞在や再訪を促します。
測定と改善のサイクル
Search Consoleや解析ツールでCTR、流入、滞在時間を定期的に確認し、小さな変更を検証して改善を続けてください。
