はじめに
概要
本ドキュメントは「cdn ドメイン」について、実務で必要な知識と設定の全体像を分かりやすく整理します。CDNの基本、DNSとの関係、導入時のドメイン設計やAレコード/CNAMEの使い分けまで、手順と理由を丁寧に解説します。
対象読者
ウェブサイト運用者、インフラ担当者、これからCDNを導入するエンジニアを想定します。専門用語は最小限にし、具体例で補足します。
本書の構成と読み方
第2章でCDNの役割とドメインの関係を説明し、第3〜6章でDNSの基礎、仕組み、実際の設定手順、A/CNAMEの使い分けを順に解説します。設定例は実務で使える形で示します。
本章で得られること
全体像を把握し、どの章で何を学べば導入に進めるかが分かります。たとえば「画像配信を高速化したい」「サブドメインでCDNを使いたい」といった具体的な目的に応じて、該当章を参照してください。
CDNとは何か?ドメインとどう関係するのか
CDNの基本イメージ
CDNは世界中に置かれた「エッジサーバー」のネットワークで、Webの画像・CSS・JavaScript・動画などをユーザーに近い場所から配信します。オリジンサーバーは元のデータを持ち、CDNはそのコピー(キャッシュ)を配ります。これにより読み込みが速くなり、サーバー負荷も下がります。
ドメインとDNSの役割
ドメインはWebの住所です。ブラウザはまずドメイン名をDNSに問い合わせ、IPアドレスを受け取ります。CDNを使う場合、DNSはユーザーに最も近いエッジサーバーのIPを返すように設定されます。こうしてユーザーは直接、近くのエッジからコンテンツを受け取れます。
アクセスの具体的な流れ(例)
- ユーザーが example.com を開く
- ブラウザがDNSに問い合わせる
- CDNの設定により最寄りのエッジのIPが返る
- エッジから画像やスクリプトが配信される
なぜ速くなるのか
距離が短くなることで遅延が減り、キャッシュによりオリジンへの往復が減ります。これが速さと安定性の理由です。
注意点(簡単に)
ドメインの設定を間違えるとCDN経由にならないことがあります。TLSやキャッシュの挙動はCDNごとに違うので、導入時に確認してください。
ドメインとDNSの基礎:CDNを理解する前提知識
ドメインとは
ドメインは人が覚えやすい住所のようなものです。たとえば「example.com」はウェブサイトの名前で、ブラウザに入力するとそのサイトにアクセスできます。ドメイン自体は文字列で、実際のサーバーの場所(IPアドレス)とは別物です。
DNSとは何か
DNSはドメイン名とIPアドレスを結びつける仕組みです。電話帳のように、ドメインを調べて該当するIPを返します。これによりブラウザは実際のサーバーに接続できます。
DNSの階層と問い合わせの流れ
DNSは階層構造です。ルート→トップレベル(.comなど)→権威DNSの順にたどります。ブラウザはまずローカルのキャッシュやISPのDNSに問い合わせ、なければ上位へ問い合わせます。例:あなたが「example.com」を開くと、最終的にそのドメインを管理するDNSからAレコードやCNAMEが返ります。
AレコードとCNAME(簡単な説明)
Aレコードはドメインを直接IPに結びつけます。CNAMEは別のドメイン名を参照させる別名です。たとえば「www.example.com」が「example.com」ではなく別サービスを指すときにCNAMEを使います。
CDNとの関係(前提)
CDN導入時、DNSは重要な役割を果たします。DNSの応答を工夫して、ユーザーの近くにあるCDNのエッジサーバーのIPを返すことで、アクセスをCDNに誘導します。ドメインやDNSの基本を理解しておくと、CDN設定がスムーズになります。
CDNの仕組みとDNSアーキテクチャ
概要
CDNはユーザーの近くにある「エッジ」と呼ぶサーバーでコンテンツを配信し、応答を速くします。どのエッジに向けるかを決める重要な役割をDNSが担います。
DNSベースのルーティング
ユーザーがサイトを開くと、まずDNSに問い合わせます。DNSは問い合わせ元のIPや地理情報をもとに、最も適したエッジサーバーのIPを返します。例えば東京の利用者には東京のエッジ、ロンドンの利用者にはロンドンのエッジを返します。したがって応答が速くなります。
CDNの階層構造
CDN内部は通常、エッジ→リージョナル(中継)→オリジン(元のサーバー)の階層です。エッジでキャッシュがあれば即座に返します。無ければ上位のサーバーへ取りに行き、最終的にオリジンから取得します。
キャッシュの流れ(実例)
画像を配信する場合、初回はエッジに無ければリージョナルやオリジンから取得し、エッジに保存します。次回以降はエッジから配信され、表示が速くなります。
DNSが果たす役割と注意点
DNSはどのCDNノードに振るかを決める鍵です。TTLや地理判定の精度で振り分け結果が変わります。DNSの設定ミスや短すぎるTTLは、想定と異なるノードへ誘導する原因になりますので注意してください。
CDN導入時の基本的なドメイン・DNS設定の流れ
概要
CDN導入時のDNS設定は主に3つの方法があります。ネームサーバーをCDN側に変更する方法(例:Cloudflare)、CNAMEでCDNエンドポイントに紐づける方法、AレコードでCDNのIPに向ける方法です。それぞれの準備と手順を分かりやすく説明します。
前提の準備
- ドメイン所有権を確認します。レジストラの管理画面にアクセスできることを確かめます。
- オリジンサーバーのIPやホスト名を控えます。
- CDNプロバイダが提示するエンドポイント(CNAMEやIP、ネームサーバー)を入手します。
- SSL/TLSの取り扱いを確認します(CDNが証明書を発行するか、自前で用意するか)。
方法1:ネームサーバーをCDNに変更する(例:Cloudflare)
- CDNにドメインを登録します。
- CDNがDNSレコードをスキャンして一覧を作成します。
- レジストラで指定されたネームサーバーに変更します。
- 反映が完了したらCDN側でDNSやセキュリティ設定を行います。
メリット:DNSをCDN側で一元管理でき、機能が豊富です。
注意点:ネームサーバー変更は反映に時間がかかることがあります。
方法2:CNAMEでCDNエンドポイントに紐づける
- CDNが示すCNAMEターゲット(例:example.cdn.net)を確認します。
- DNSでサブドメイン(例:www.example.com)にCNAMEを追加してターゲットを指します。
- ルートドメイン(example.com)は通常CNAMEを使えないため、ANAME/ALIASやCDNの提供する代替方法を使います。
メリット:設定がシンプルで、CDNのエンドポイント変更に自動追従します。
方法3:AレコードでCDNのIPに直接向ける
- CDNが提供する任意のIPアドレスを確認します(Anycast IPなど)。
- ルートやサブドメインのAレコードをそのIPに向けます。
メリット:DNSプロバイダに依存せずルートドメインにも対応できます。
注意点:CDN側でIPが変わると手動で更新が必要になる場合があります。
共通の作業と確認項目
- TTLは短めに設定して変更反映を早めます。
- HTTPSを必ず確認し、証明書が有効か確認します(SNIやホストヘッダの設定も)。
- 変更後はdigやnslookup、curlで正しくCDNに到達するか検証します。
- キャッシュの初期化(Purge)やログの確認を行い、想定通り配信されているか監視します。
以上が、基本的なドメイン・DNS設定の流れです。各方法の特徴を踏まえて、自社の要件に合う手法を選んでください。
AレコードとCNAMEレコード:CDNドメイン設定の要点
Aレコードとは
Aレコードはドメイン名に対して直接IPv4アドレスを指定します。例: example.com → 203.0.113.12。DNSはこのIPに訪問者を案内します。
CNAMEとは
CNAMEはあるドメイン名を別のドメイン名に紐付けます。直接IPは書きません。例: www.example.com → example.cdnprovider.net。最終的にその先のAレコードが解決されます。
CDNでの使い分け
- サブドメイン(wwwやcdn.example.com)はCNAMEでCDN提供先に向けるのが一般的です。自社ドメインでアクセスさせつつ、配信はCDNのエッジから行えます。
- ルート(裸)ドメインはCNAMEが使えないため、AレコードでIPを指定するか、CDNの提供するALIAS/ANAME機能を使います。
注意点
- CDNはIPを変更することがあります。Aレコードで直接IPを指定する場合は運用負担が増えます。
- DNSのTTLを短めにすると切り替えが早くなりますが、問い合わせ数は増えます。
- HTTPSを使う場合は、CDN側で証明書を正しく設定する必要があります。
設定の具体例
- www.example.com → CNAME → example.cdnprovider.net
- static.example.com → CNAME → static.cdnprovider.net(静的ファイル専用)
- example.com(ルート)→ ALIAS/ANAME または AレコードでCDN指定IP
この章では、目的に応じてCNAMEを優先し、ルートはプロバイダ機能やAレコードで対応するのが実務的な要点です。












