はじめに
記事の目的
この連載では「直帰率が高い方がいいのか」を丁寧に解説します。直帰率の正しい定義、GA4での見え方の違い、直帰率が高くても問題ないケース、改善が必要なケースを具体例とともに扱います。数字だけで判断せず、文脈を重視する視点を身につけていただくことが目的です。
読者想定
ウェブ担当者、マーケター、サイト運営者、分析を始めたばかりの方を想定しています。専門用語は最小限に留め、具体例で分かりやすく説明します。
この章での内容
まず本記事の全体像と読み方を示します。各章は独立して読めますが、順に読むと理解が深まります。直帰率の判断に必要な視点や最低限押さえておく用語もここで紹介します。
読み方のポイント
数字だけで一喜一憂しないこと、ゴール(売上や問い合わせなど)を基準に見ること、ページごとの目的を意識することが大切です。次章から具体的に説明します。
直帰率とは何か?まずは正しい定義から
正しい定義
直帰率は、Webサイトを訪れたユーザーが最初に見たページだけを見て、他のページに遷移せずに離脱したセッションの割合です。セッション単位で数え、訪問の“最初のページ”で離脱したかどうかを見ます。
計算式
直帰率 =(直帰セッション数 ÷ 全セッション数)×100
直帰セッション数は“ランディングページでセッションが終了した数”を指します。
具体例
例:全セッションが100件で、そのうち30件が訪問後すぐ離脱した場合、直帰率は30%です。注意点として、会社の問い合わせページやシングルページのランディングは直帰率が高くなりやすく、それが必ずしも悪いわけではありません。
直帰率と離脱率の違い
直帰率は「最初のページで離脱した割合」です。離脱率(Exit Rate)は「そのページがセッションの最後になった割合」で、訪問経路にかかわらず最後に見られた回数を比べます。例えば、ユーザーがA→B→Cと見てCで離脱した場合、Cは“離脱”に数えられますが、Aは直帰には入りません。最初のページで離脱すると、同じページは直帰と離脱の両方に該当します。
なぜ正しく理解する必要があるか
直帰率はコンテンツの入り口での第一印象や導線の有効性を示しますが、数字だけで判断すると誤った改善を招きます。したがって、他の指標やページの役割と合わせて読み取ることが大切です。
よくある誤解
- 直帰率が高ければ必ず悪いというわけではない
- 直帰率だけでサイト改善の優先順位を決めないこと
GA4で直帰率の意味が変わっている点に注意
定義の違い
GA4では直帰率が「エンゲージメントのなかったセッションの割合」として再定義されました。エンゲージメントがあるセッションは次のいずれかを満たします:10秒以上滞在、2ページ以上閲覧、またはコンバージョンイベントが発生。直帰率は100%からエンゲージメント率を引いた値です。
UA(旧)との違いを具体例で説明
- 例1:1ページだけを見て15秒滞在すると、GA4ではエンゲージメントあり(直帰に含まれない)。
- 例2:1ページで購入完了(コンバージョン)が発生すれば、直帰になりません。
UA時代は「ページが1つだけで終わったセッション」を直帰と見なしていましたから、数値が大きく変わります。
実務での注意点
- 単純に数値を比較しないでください。移行前後で定義が違います。
- ダッシュボードやレポートはGA4の定義に合わせて見直しましょう。
- 必要ならカスタムイベント(滞在時間や重要な操作)を設定して評価基準を揃えてください。
指標解釈のコツ
エンゲージメント率を重視すると見方が分かりやすくなります。直帰率だけで判断せず、滞在時間やコンバージョンと合わせて見ることをおすすめします。
直帰率は高い方がいい?低い方がいい?結論の考え方
結論(端的に)
直帰率は「低い方が良い」と言われることが多いです。ただしサイトの目的によっては高くても問題にならないどころか好ましい場合もあります。
判断の基準
- 目的に照らす:購入や問い合わせを増やすサイトなら低い方が望ましいです。情報提供が目的で、訪問者が1ページで満足するなら高くても許容できます。
- コンバージョン経路:複数ページの遷移が前提なら直帰は改善点です。1ページ完結なら直帰は必ずしも悪くありません。
- 滞在時間やスクロール:直帰でも滞在時間が長く、スクロールが深ければ「読了して離脱」した可能性が高いです。
具体例で考える
- ECサイト:商品を比較・購入してもらう必要があるため、直帰率は低い方が良いです。
- ブログ記事:検索で来て記事を読んで去るなら直帰が高くても問題ありません。
- 問い合わせ型LP:CTA(申し込み)へ導く設計なら直帰は改善対象です。
測るときの注意
- 単一指標で結論を出さないでください。直帰率は他指標(コンバージョン、滞在時間、ページ別行動)と合わせて判断します。
直帰率が高くても“問題ない”どころか“良い”と判断できるケース
要点
直帰率が高くても、ユーザーがページで目的を達成しているなら問題ではありません。用途に合ったページでは離脱が自然で、むしろ効率が良い場合があります。
典型的なケース
- 1ページ完結のFAQ・店舗案内・連絡先ページ
- 例:電話番号や地図を確認してそのまま電話・来店する場合。サイト内での追加行動を必要としません。
- 単一の記事で完結するブログやレシピページ
- 例:検索で来て本文を読んで満足し、別ページに移らず離脱するケース。
- サイト外でのコンバージョンが主なビジネス
- 例:電話注文や実店舗への来訪、メールでの問い合わせが主要な成果で、ウェブ上で完結しない場合。
GA4での注意点
GA4は「10秒以上の滞在」やイベント発火があれば直帰と見なさない設定です。正しくイベント(電話クリック、スクロール、滞在時間など)を計測していれば、高い直帰率でも実際のユーザー満足を示すことがあります。
確認すべき指標と対応
- 電話リンクや地図クリックのイベントを計測する
- スクロール・滞在時間イベントを追加する
- セグメント(流入元やデバイス)別に直帰率を見る
- オフライン成果(来店数など)と照合する
これらを確認すると、高直帰率が“悪い”とは限らない判断ができます。ビジネス目標に照らし合わせて評価してください。
直帰率が高いと“危険シグナル”になるケース
1. EC・SaaSの詳細ページに進まず離脱が多い場合
購入・申込につながる“次の画面”に進まない傾向があるときは要注意です。具体例:商品一覧でクリックされるが商品詳細で離脱が急増する、料金ページで申込ボタンに到達しないなど。訴求不足、価格や機能が不明瞭、レビュ―や画像不足が原因になりやすいです。
2. 広告経由ランディングページで直帰率が極端に高い場合
広告のメッセージと着地ページの内容が合っていないと、ユーザーはすぐ離れます。期待と違う、読み込みが遅い、デザインやコピーで不信感を与えたときも直帰が増えます。広告文と着地内容を照合してください。
3. サイト全体で平均より大幅に高い場合
特定ページだけでなくサイト全体で高いときは、共通の技術的問題を疑います。モバイル表示崩れ、画像の遅延、404やスクリプトエラーなどが考えられます。
4. 調査すべきポイント
- 流入元・デバイス別の直帰率を確認
- ランディングページの読み込み速度(3秒ルールを目安)
- ページの目立つCTAや価値訴求の有無
- イベント計測の漏れ(GA4設定等)
- ヒートマップやセッション録画でユーザー行動を可視化
5. 優先して取るべき対応
1) ページ速度改善(画像圧縮・遅延読み込み)
2) 広告と着地の整合性を修正
3) CTAや見出しを分かりやすくする
4) 技術的エラーを早急に修正
5) A/Bテストで変更の効果を検証
問題の原因は複数重なっていることが多いです。まずはデータで切り分け、影響が大きいものから優先的に対応してください。












