AWS EC2でWindowsを快適運用するための基本ガイド

目次

はじめに

目的

本記事は、AWSのEC2上でWindows Server(例:2022、2025)を立ち上げ、リモートデスクトップ接続や初期設定を行う手順と注意点を分かりやすく説明することを目的とします。初心者の方が迷わず進められるよう、具体的な操作の流れや設定のポイントも解説します。

対象読者

初心者〜中級者の方を想定します。クラウドの基本やWindowsの操作経験があれば、より理解が早まりますが、初めての方でも順を追って学べます。

この記事で学べること

  • EC2でWindowsを動かすメリットと利用シーン(踏み台サーバ、Active Directoryなど)
  • Windows Serverの主要バージョンの違い(2022/2025の概要)
  • AWSマネジメントコンソールからのインスタンス作成手順
  • セキュリティグループとRDP(リモートデスクトップ)設定のポイント
  • Windows ServerへのRDP接続と初期設定の方法
  • 料金モデルやライセンスの基本

準備するもの

  • AWSアカウント
  • 鍵ペア(Key Pair)作成の準備
  • 基本的なネットワークの理解(VPC/サブネット/セキュリティグループの概念)

本シリーズの構成

全6章で、概念説明から実際の接続手順まで順に解説します。章ごとに手を動かしながら進めることで、実務で使える知識が身につきます。

AWS EC2でWindowsを動かすメリットと選択肢

なぜEC2でWindowsを使うのか

EC2では必要なときだけ仮想サーバーを起動して使えます。例えば開発中に数日だけWindows環境が必要な場合や、ソフトの動作検証を短期で行う場合、物理サーバーを用意するより初期費用を抑えられます。使わないときは停止して料金を節約できます。

主なメリット(具体例で説明)

  • 初期コストが低い:オンプレのサーバーを購入する代わりに、時間単位で利用できます。
  • 柔軟なスケール:ユーザー増加や負荷が高まれば、より大きなインスタンスに切り替えられます。
  • 短期利用に向く:踏み台サーバや検証環境、メンテナンス用の一時環境に便利です。

選択肢の比較

  • EC2上のWindows Server:サーバー用途に最適で、自由にソフトをインストールできます。リモートデスクトップで管理する典型的な使い方です。
  • Amazon WorkSpacesなどの仮想デスクトップ:Office中心のデスクトップ利用や、ユーザーごとに固定のデスクトップ環境が欲しいときに向きます。セットアップが簡単な反面、サーバー向けの細かい調整は制約があります。

選び方の目安

  • サーバーとしてアプリを常駐させる、サービスを公開するならEC2を選びます。
  • ユーザー個別のデスクトップ作業が中心で、管理を簡単にしたいならWorkSpacesを検討してください。

運用時のポイント

コストはインスタンスタイプや起動時間で変わります。短期利用なら停止・起動をこまめに行い、不要なストレージは削除すると節約できます。

EC2で選べるWindows Serverのバージョン(2022と2025)

ライセンス付きAMIが便利

AWSはライセンス込み(LI)のWindows Server AMIを提供しており、AMIを選んで起動するだけでWindowsライセンスが含まれます。面倒なライセンス手続きが不要で、短時間で検証環境や本番環境を用意できます。

2025の特徴(新しい選択肢)

最近、Windows Server 2025のAMIがEC2で利用可能になりました。AWSがAMIを作成・管理するため設定が簡単です。NitroベースのインスタンスとUEFI対応により起動時のセキュリティが強化されています。従来と同じ料金体系で課金されるため、最新OSを手軽に試せます。

2022との違い(現実的な使い分け)

Windows Server 2022は長期サポートの安定版として広く使われています。既存の構築手順や検証例が多い点が利点です。一方、2025は最新機能や改善点を含むため、新機能の確認や将来対応の検証に向いています。

選び方のポイント

  • 安定性重視:長期サポートが必要なら2022を選んでください。\
  • 新機能検証:最新の機能や互換性を確認したいなら2025を試してください。\
  • 共通の注意:本番導入前に互換性チェックとスナップショット取得、テスト環境での確認を必ず行ってください。また、Nitro対応インスタンスを使うとUEFIやセキュリティ強化の恩恵を受けやすいです。

実務では、安定運用は2022、検証や新機能採用は2025と使い分けるのが現実的です。

EC2でWindowsサーバーインスタンスを作成する手順

以下は管理コンソールからWindowsサーバーを立ち上げる基本手順です。初めての方でも分かるように順を追って説明します。

  1. EC2ダッシュボードを開く
  2. AWSマネジメントコンソールにログインし、EC2を選択して「インスタンスを起動」をクリックします。

  3. AMI(OSイメージ)を選ぶ

  4. 表示された一覧から「Microsoft Windows Server 2022 Base」や「Microsoft Windows Server 2025 Base」を選択します。用途に合わせて選んでください。

  5. インスタンスタイプを指定する

  6. 検証用途ならt3.mediumやt3.largeがよく使われます。Active Directory用の例ではt3.largeが選ばれることが多いです。

  7. ストレージを設定する

  8. 標準は30GiB前後の汎用SSD(gp2/gp3)です。容量は後で拡張できます。

  9. キーペアの指定(重要)

  10. Windows管理者パスワードを復号する際に必要です。既存のキーペアを選ぶか、新規作成して秘密鍵を必ずダウンロードしてください。

  11. ネットワークとセキュリティの簡単な確認

  12. デフォルトのVPCやサブネットを選び、後でRDP用のポート設定を行います(詳細は第5章)。

  13. 起動と初期パスワードの取得

  14. インスタンスを起動したら準備完了まで待ち、インスタンスを選んで「Windowsパスワードの取得」で秘密鍵を使って管理者パスワードを復号します。

  15. 接続後の初期作業

  16. リモートデスクトップで接続し、Windows Updateやパスワード変更、必要な役割の追加を行ってください。インスタンスの停止・起動で設定を調整できます。

この手順を踏めば、基本的なWindowsサーバーが立ち上がります。次の章でセキュリティ設定の詳細を説明します。

セキュリティグループとRDPポート設定のポイント

基本ポイント

Windowsサーバへリモートデスクトップ(RDP)接続するには、セキュリティグループでTCP 3389番ポートを開放します。RDP接続にはインスタンスにパブリックIPv4アドレスかElastic IPが必要です。ローカルPCにRDPクライアント(Windowsの「リモートデスクトップ」や、Macの「Microsoft Remote Desktop」)が入っていることを確認してください。

開放範囲の設定(重要)

セキュリティ面では送信元を0.0.0.0/0で全開放しないでください。自分のグローバルIPのみ許可することを推奨します。例: 123.45.67.89/32 のように/32で単一IPを指定します。自分のIPはブラウザで「what is my ip」と検索するか、ifconfig.me等のサービスで確認できます。

設定手順(簡単)

  1. EC2コンソールで対象のセキュリティグループを開く
  2. インバウンドルールにTCP、ポート3389、送信元に自分のIP/32を追加
  3. ルールに分かりやすい説明を付ける(例: “自宅IP RDP”)

代替と注意点

どうしても複数場所から接続する必要がある場合は、VPNや踏み台サーバ(bastion)、あるいはAWS Systems Manager Session Managerを検討してください。短時間だけ全開放して作業する場合は、作業後すぐルールを閉じてください。

トラブルシューティングのヒント

接続できないときは、インスタンスが起動中か、パブリックIPが付与されているか、WindowsファイアウォールがRDPを許可しているか、ローカルのネットワークで3389がブロックされていないかを確認してください。キーペアは管理者パスワードの復号に使いますので、手元にあることを確認してください。

Windows Serverへのリモートデスクトップ接続手順

前提

  • インスタンスが起動していることを確認します。EC2コンソールで対象インスタンスを選びます。

1. パスワードの取得

  1. コンソールで「接続」をクリックし、「Windowsパスワードの取得」を選びます。
  2. インスタンス作成時に指定したキーペア(.pem)をアップロードし、復号ボタンを押します。
  3. 表示されたAdministratorの初期パスワードをメモします。キーペアは安全に保管してください。

2. RDPファイルのダウンロードと開く

  • 「RDPファイルのダウンロード」をクリックしてファイルを保存します。
  • ローカルPCでファイルを開くと、リモートデスクトップクライアントが起動します。

3. リモート接続

  1. ユーザー名に「Administrator」を入力します。
  2. 先ほど取得したパスワードを貼り付けて接続します。

4. 初回ログイン後のおすすめ設定

  • パスワードを任意のものに変更してください。
  • 日本語入力を使いたい場合は、コントロールパネルから言語を追加します。
  • 画面解像度やクリップボード共有などはリモートデスクトップの設定で調整します。

トラブルシューティングのポイント

  • セキュリティグループでRDP(TCP 3389)が許可されているか確認してください。
  • 接続できない場合は、インスタンスの状態やネットワークACLを確認します。
  • キーペアを紛失した場合は既存のインスタンスから新しい管理者パスワードを取得できないため、新規作成や別手順が必要です。
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