はじめに
本記事の目的
本記事は、CMS(コンテンツ管理システム)の提供形式や種類をわかりやすく整理することを目的としています。専門用語をできるだけ減らし、具体例を交えてオープンソース型、クラウド型、パッケージ型(オンプレミス)、ヘッドレス型の特徴と使いどころを解説します。
CMSとは簡単に
CMSとは、ウェブサイトやブログの内容を管理・更新する仕組みです。たとえば、WordPressで記事を書いて公開する流れはCMSの典型例です。プログラムを書かなくてもページの追加や編集ができる点が魅力です。
なぜ“形式”を知る必要があるのか
同じCMSでも提供形態によって運用コスト、拡張性、セキュリティ対応が変わります。会社の規模や目的、担当者のスキルによって最適な形式が異なりますので、違いを押さえて選ぶことが重要です。
本記事の読み方
次章以降で各形式の特徴、メリット・デメリット、代表例、適したケースを順に説明します。まずは全体像をつかんでから、あなたの用途に合う形式を探していきましょう。
CMSとは何か?「形式」を理解する前の基礎知識
CMSの定義
CMS(コンテンツ管理システム)は、HTMLやCSSの知識がなくても、ブラウザ上でページを作成・編集・削除できるソフトウェアです。管理画面からテキストや画像を登録すると、自動でページを生成します。専門家でなくても運用できる点が特徴です。
CMSでできること(具体例を交えて)
- 記事やページの作成:エディタに文章を入力し、公開ボタンを押すだけで反映します。ブログ更新のイメージです。
- 画像やファイルの管理:メディアライブラリに画像をアップロードして、記事に挿入します。
- テンプレート適用:見た目はテンプレート(雛形)で統一します。デザインとコンテンツを分けて管理できます。
- ユーザー権限管理:編集者・管理者など役割を分けて操作を制限します。複数人での作業に向きます。
主な構成要素(簡潔に)
- エディタ:文章や装飾を入力する画面。WYSIWYG型(見たまま編集)やマークダウン型があります。
- テンプレート/テーマ:サイトの見た目を決める部品です。
- データベース:記事や画像のデータを保存します。
- プラグイン/拡張機能:機能を追加してカスタマイズします。
「形式」を理解する前に知っておきたいこと
CMSは提供形態やライセンス、用途によって導入方法が変わります。まずは「何をしたいか(例:ブログ、コーポレートサイト、EC)」と「誰が運用するか(社内人員・外部委託)」を明確にしてください。用途と運用体制が決まれば、形式の違い(インストール型・クラウド型など)を比較しやすくなります。
よくある誤解
- 「CMS=全部同じ」は誤りです。機能や管理のしやすさ、コストが大きく異なります。用途に合わせた選択が重要です。
次章では、CMSの代表的な提供形式をわかりやすく比較します。
CMSの代表的な3〜4つの形式(提供形態での分類)
オープンソース型CMS
特徴:ソースコードが公開され、自由に使えます。多くはコミュニティで開発されます。
例:WordPress、Drupal、Joomla。
長所:初期費用を抑えやすく、プラグインやテーマで機能拡張しやすいです。カスタマイズ性が高いです。
短所:設定や保守に技術的な知識が必要な場合があります。セキュリティ対応は自分で行う必要があります。
クラウド型CMS(SaaS型)
特徴:サービス提供会社が運営するクラウド上で利用します。インターネット経由で管理画面にアクセスします。
例:Wix、Squarespace、Contentful(SaaS提供の場合)。
長所:導入が簡単で、保守やセキュリティは提供側が担当します。更新やバックアップも自動化されることが多いです。
短所:カスタマイズの自由度が制限されることがあります。月額費用が発生します。
パッケージ型CMS(インストール型/商用)
特徴:ソフトウェアを購入して自社のサーバーにインストールして使います。商用サポートが付く製品が多いです。
例:Movable Type(商用版)、企業向けの専用CMS。
長所:企業要件に合わせた導入や専用サポートが受けられます。オンプレミスで運用すればデータ管理がしやすいです。
短所:初期費用や導入工数が大きくなりがちです。保守は自社またはベンダーとの契約次第です。
ヘッドレス型CMS(独立した形式として扱う場合)
特徴:コンテンツ管理と表示を分離し、APIで配信します。WebだけでなくアプリやIoTにも使えます。
例:Strapi、Contentful、Prismic。
長所:表示技術に依存せず多様なチャネルへ配信できます。開発者にとって柔軟性が高いです。
短所:フロント側の実装が必要で、導入には開発工数がかかります。
オープンソース型CMS
概要
オープンソース型CMSは、ソースコードが公開され、ライセンスの範囲内で無償で利用・改変・再配布できる形式です。多くは自社サーバーやレンタルサーバーにインストールして使う「インストール型」に属します。
形式的な特徴
- コードが公開されコミュニティで改良されます。
- ライセンス(例:GPL)に従えば自由に改造できます。
- テーマやプラグインが豊富で機能を追加しやすいです。
主な例
- WordPress:ブログや中小サイトに強く、操作が簡単です。
- Drupal:柔軟で複雑な要件に対応しやすいです。
- Joomla!:中規模のサイトで使いやすい選択肢です。
メリット
- ライセンス費用がかからないため初期コストを抑えられます。
- 自由にカスタマイズでき、独自機能を作り込めます。
- エコシステムが大きく、テンプレートや拡張が豊富です。
デメリット
- 運用(アップデート、バックアップ、セキュリティ対策)は自社負担です。
- プラグイン同士の相性問題や脆弱性リスクがあります。
- 高度なカスタマイズにはプログラミング知識が必要です。
向いているケース
予算を抑えつつ独自性を出したい企業や、社内にエンジニアがいて継続的に運用できる組織に向きます。小〜中規模のサイトから、大規模で特殊な要件のあるサイトまで幅広く使えます。
運用時の注意
定期的な更新とバックアップ、信頼できるプラグインの選定、ステージング環境での検証を習慣にしてください。
クラウド型CMS(SaaS型)
概要
ベンダーがクラウド上で提供するCMSをインターネット経由で利用する形式です。ユーザーは自前でサーバーを用意せず、ブラウザからログインして編集や公開を行います。代表例として国産のSaaS型サービスや、Movable TypeのSaaS版などがあります。
特徴
- サーバー構築やOS・ミドルウェアの運用をベンダーが実施します。
- 初期設定が簡単で、短期間で運用を開始できます。
- 機能はパッケージ化されており、拡張や追加はベンダーの提供に依存します。
メリット
- 導入が速く、専門の運用要員が不要です。
- 保守やセキュリティ更新をベンダーに任せられるため、運用負担が少ないです。
- 定期的なバックアップや監視がサービスに含まれることが多いです。
デメリット
- カスタマイズの自由度が制限されることがあります。
- ベンダーロックインの懸念があり、将来の移行が手間になることがあります。
- 月額や年額のランニングコストが継続して発生します。
向いているケース
- IT担当者が少ない中小企業や、早く立ち上げたいプロジェクト。
- メンテナンス負担を外部に任せたい場合。
導入時の注意点
- 契約条件でデータのエクスポート方法やバックアップ頻度を確認してください。
- カスタマイズ要件が多い場合は事前に対応可否を確認します。
パッケージ型CMS(インストール型/商用・オンプレミス)
概要
ベンダーが開発・販売する商用のCMSパッケージを、自社のサーバーやレンタルホスティングにインストールして使う形式です。ソースコードは基本的に非公開で、導入時の設定や保守サポートをベンダーが提供します。代表例としてMovable Type、PowerCMS、NOREN、HeartCore、Adobe Experience Managerなどがあります。
形式的な特徴
- インストール型:自社管理下の環境にソフトを入れて運用します。
- 商用ライセンス:利用料や保守契約が発生します。
- クローズド:カスタマイズ範囲が制限される場合があります。
メリット
- 手厚いサポート体制:導入支援やトラブル対応を期待できます。
- 高いセキュリティとガバナンス:内部監査やログ管理など企業要件に合いやすいです。
- 多言語・大規模対応:大企業や官公庁向け機能が充実しています。
デメリット
- 初期費用や保守費が高くなりがちです。
- ソース非公開のため自由な改変が難しい場合があります。
- ベンダーの開発方針やサポート終了に依存するリスクがあります。
向いているケース
- 官公庁、金融機関、大企業など、厳格なセキュリティや運用ルールが必要な組織。
- 複数言語や高度な承認ワークフロー、大規模配信を求めるサイト。
導入時のポイント
- 保守契約の範囲(障害対応、バージョンアップ、セキュリティ対応)を確認してください。
- カスタマイズ範囲と将来の拡張性を見積もることが重要です。
- ベンダーの導入実績やサポート体制、契約期間・費用構造を比較検討してください。
(途中の章のため、まとめは設けていません。)
ヘッドレス型CMSという新しい形式
ヘッドレス型CMSとは
ヘッドレス型CMSは、コンテンツ管理(バックエンド)と表示(フロントエンド)を分ける仕組みです。管理画面で作った記事や画像をAPIで配信し、受け取ったデータをReactやスマホアプリ、IoT機器などで表示します。たとえばCMSがJSONを返し、Webサイト側がそれを受け取って描画します。
仕組みの簡単な例
- 編集者が管理画面で記事を作成します。
- CMSは記事を保存し、API(REST/GraphQL)でデータを提供します。
- フロントエンドがAPIを呼び出して表示します。
メリット
- デザインや技術スタックを自由に選べます(例:Next.jsやネイティブアプリ)。
- 同じコンテンツを複数の画面に配信できます(Web・アプリ・端末)。
- スケールやパフォーマンスを独立して改善できます。
デメリット
- 初期開発に手間がかかります。フロントエンド開発が必要です。
- プレビューやワークフローを別途用意する必要がある場合があります。
向いているケース
- Webとアプリ両方で同じコンテンツを使う場合
- 高度なUIやパフォーマンスを求める場合
具体例
Contentful(SaaS)、Strapi(オープンソース)などがあります。












