ハンドメイド作家のための帳簿とモノの管理完全ガイド

目次

はじめに

概要

このドキュメントは、ハンドメイド作品を販売する個人作家が日々の帳簿をどう付けるかをやさしく解説します。売上や仕入、材料費、送料、販売手数料の記録方法から、在庫管理や棚卸、確定申告に向けたポイントまで実務的にカバーします。

対象読者

  • ネットやイベントで作品を販売している個人作家
  • 帳簿を自分で付けたいフリーランスの方
  • 確定申告の準備を始めた初心者

本書の目的

具体的で実践的な手順を示し、作家が日常的に続けられる帳簿の付け方を身につけてもらうことを目指します。専門用語は最小限にし、具体例で補足します。

本書の構成と使い方

各章は実務に沿って並べています。まずは「モノの管理(在庫)」の重要性を理解し、その後に仕入・売上の記録、年末の棚卸、在庫金額の仕訳へと進みます。章ごとに実例やチェックリストを載せていますので、必要な章だけ参照して実行できます。

お読みいただく際の心構え

帳簿は難しく見えますが、日々の小さな習慣で負担は軽くなります。まずは本書の手順を一つずつ試してみてください。継続が一番の近道です。

ハンドメイド作家の帳簿で一番大事なのは「モノの管理」

はじめに

ハンドメイドやせどりでは、お金の出入りだけでなくモノの動きを正確に把握することが最優先です。在庫や材料、制作中の品、売れた商品をしっかり管理しないと、正しい利益が出せません。

何を管理するか(具体例)

  • 材料(例:布、ビーズ、紐)
  • 仕掛品(制作途中の作品)
  • 完成品(販売可能な状態)
  • 販売済の記録と返品・廃棄

管理のポイント(簡単な方法)

  • 分類とラベル付け:材料ごとに名前・単位(m、個)を付ける
  • 在庫台帳(紙でもExcelでもOK):日付、品名、数量、単価、保管場所、備考の列を作る
  • 写真を残す:完成品や特殊な材料は写真を保存すると分かりやすい
  • 定期チェック:週1回か月1回の棚卸で実際数と台帳を照合する

小さな工房での実例

例)ビーズ100gを購入し、30gを使って3点作った。台帳に購入(+100g)、使用(-30g、どの作品に使ったか明記)、残量(70g)を記録します。1点あたりの材料費を正確に出せます。

コツと注意点

  • 小分けして保管し、ラベルに日付を書く
  • 廃棄は必ず記録する。ロスを放置すると利益が狂います
  • 最初はシンプルに始め、慣れたら項目を増やすと続けやすいです

モノの管理を習慣にすると、帳簿がぐっと正確になります。

材料や商品を購入したときの帳簿(仕入の記録)

まず記録するタイミング

材料や商品を購入したら、受け取った時点で仕入として帳簿に書きます。購入日・金額・品名・支払方法を必ず記録してください。受注前にまとめ買いした場合でも、事業で使う予定なら仕入に計上します。

記録する主な項目(具体例)

  • 日付:購入日を記入します。
  • 品目:布、糸、金具、パーツなど具体的に書きます。
  • 金額:税抜き・税込みのどちらかで統一します(帳簿で統一すると分かりやすいです)。
  • 支払方法:現金、事業用クレジットカード、振込などを記載します。

支払方法別の扱い(例)

  • 現金で購入:材料費(仕入)××円 / 現金××円
  • 事業用クレジット:材料費(仕入)××円 / 未払金(カード)××円
    →カードの請求が引き落とされたら、未払金××円 / 普通預金××円

私用と事業用のお金は分ける

プライベートの買い物と混ぜないでください。混ざった場合は領収書に用途を書き、事業分だけを帳簿に反映します。

領収書・レシートの保存

領収書やレシートは必ず保管します。写真を撮ってクラウドに保存すると探しやすくなります。購入時のメモ(用途や作品名)をつけると年末の棚卸が楽になります。

備考(消耗品と資産の区別)

小さなパーツや布は消耗品として材料費に含めます。長く使うミシンなど高額な道具は備品(資産)として別扱いにします。金額の目安は自身の運用に合わせて決めてください。

商品を販売したときの帳簿(売上の記録)

売上は総額で記録します

制作した作品が売れたら、まずは”売上(総額)”として帳簿に記録します。ネット販売でも、入金された金額(手数料や送料を差し引いた額)と混同しないように総額で記帳してください。

代金の受け取り方法を明記する

現金、銀行振込、クレジット決済、プラットフォーム経由など受け取り方法を記録します。入金のタイミングが口座反映日と異なる場合があるので、受注日・入金日を分けて書くと照合しやすくなります。

ネット販売の注意点:手数料・送料は分けて記帳

販売手数料や決済手数料、送料は売上と別に記録します。したがって、帳簿上は「売上」「販売手数料(費用)」「決済手数料(費用)」「送料(収入または費用)」と分けると正確です。

具体例(記録のしかた)

例:作品価格3,000円、送料500円、プラットフォーム手数料300円、決済手数料150円、実際の入金2,050円。帳簿では次のように記録します。
– 売上(作品) 3,000円
– 送料 500円(お客様から受け取った場合は収入)
– 販売手数料 300円(費用)
– 決済手数料 150円(費用)
– 銀行口座入金 2,050円(現金・預金の増加)

日々の習慣

受注ごとに売上と手数料を分けて記録し、月次で入金額と比較して差異がないか確認してください。照合を習慣にすると、在庫や利益の管理が楽になります。

期末(12/31)に必要な在庫確認と棚卸のやり方

目的と重要ポイント

期末在庫は年間の利益に直接影響します。12月31日時点で手元にある材料や完成品を正確に把握し、金額に置き換えることが大切です。

事前準備

  1. カウント表(Excel可)と計算のための仕入単価一覧を用意します。
  2. 倉庫や保管場所を整理し、品目ごとにまとめます。
  3. カウントはできれば2人以上で行い、記録者と確認者を決めます。

棚卸の手順

  1. 12/31の終わり時点で実際に残っている個数を数えます(開封済み材料や半製品も数えます)。
  2. 数えた個数に対応する仕入単価を当てはめ、個数×単価で品目ごとの在庫金額を計算します。
  3. 破損や使用目的で保管しているが事実上在庫でないものは注記し、必要なら数量を調整します。
  4. 帳簿の残と差があれば原因を調べ、記録に差異を残します。

在庫金額の計算例

例:布Aが残50枚、仕入単価300円の場合
在庫金額=50枚×300円=15,000円

棚卸表の作り方と保存

品目名、数量、単価、金額、備考を記載した棚卸表を作成します。写真を添えると確認が楽になります。税法上は7年間保存が必要なので、電子でも紙でも保管してください。

在庫金額を帳簿に反映する仕訳

目的

年末に数えた在庫金額を帳簿の資産(棚卸資産)にし、売れた分だけを当期の費用にすることが目的です。こうすることで費用と収益の対応が取れます。

決算整理の流れ(わかりやすい例)

例:期首在庫10,000円、仕入50,000円、期末在庫8,000円
売上原価=期首在庫+仕入−期末在庫=10,000+50,000−8,000=52,000円

実務では次の順で仕訳します。
1) 期首在庫を売上原価に振り替える
借方:売上原価 10,000 / 貸方:棚卸資産(期首) 10,000
2) 仕入を売上原価に振り替える(年間の購入を集計)
借方:売上原価 50,000 / 貸方:仕入 50,000
3) 期末在庫を資産に計上し、売上原価を減らす
借方:棚卸資産(期末) 8,000 / 貸方:売上原価 8,000

この結果、売上原価は10,000+50,000−8,000=52,000円になり、期末の在庫8,000円が資産として残ります。

実務上のポイント

  • 小規模なハンドメイド作家は期末に在庫を数えて金額を出すことが最も重要です。具体例として、未完成の材料や完成品を分けて数えます。
  • 帳簿の勘定科目名は使いやすい名称で構いませんが、期末に上記の振替ができるようにしておきます。
  • 日々の仕入はそのまま「仕入」で記録し、決算時にまとめて売上原価に振り替えます。

注意点

  • 在庫金額の算出方法(個数×単価など)は明確にしておくと仕訳が楽になります。追跡しやすいように、材料と完成品は別表で管理してください。

モノの管理を怠ると何が困るのか

なぜ重要か

在庫管理をしないまま帳簿をつけると、売上と仕入のタイミングがずれて本当の利益が分からなくなります。税金の計算に直接影響するため、ハンドメイド作家にとって在庫管理は必須の作業です。

起きる具体的な問題

  • 利益が正しく出ない:材料を買った時点で全部を経費にしてしまうと、まだ売れていない分まで費用になり利益が小さく見えます。逆に在庫を無視すると利益が大きく出ることもあります。
  • 税務調査で説明できない:仕入れや在庫の根拠がなければ説明に困ります。領収書や在庫リストがないと指摘を受けやすいです。
  • キャッシュフローが悪化する:使わない材料がたくさんあると現金が手元に残りにくくなります。
  • ロスや品質低下:放置した材料が傷む、紛失する、使い忘れることがあります。
  • 顧客対応に支障:在庫が把握できていないと販売停止や納期遅れを招きます。

簡単な実例

12月に材料を5,000円分買い、1月にそれで商品を売ったとします。年末に在庫を計上しなければ、12月の利益は小さくなり、翌年の利益が膨らむ、といったズレが生じます。税金計算が正しくなりません。

今すぐできる対策

  • 月に一度、簡単に在庫数と場所を確認する
  • エクセルやノートで「材料」「仕掛品」「商品」を分けて記録する
  • 購入時の領収書や売上の証拠を保存する
  • 年末(12/31)は必ず棚卸を行い在庫金額を確定する
  • 半製品や使いかけの材料も記録する

これらを習慣にすると、税金や経営の不安がぐっと減ります。

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