はじめに
この第1章では、本記事の目的と読み方をやさしくご説明します。
この記事の目的
本記事は、AWSのブロックストレージサービスであるAmazon EBS(Elastic Block Store)の「ボリューム料金」について、わかりやすく整理することを目的としています。種類ごとの料金モデル、具体的な計算例、請求書での見え方、そしてAWS全体の料金体系における位置づけまで、順を追って学べます。特にgp3ボリュームを中心に、料金の構成要素とコスト最適化のポイントを重点的に扱います。
誰に向けた記事か
- EBSの料金がわかりにくいと感じている方
- コスト管理や請求書の読み方を学びたいエンジニア/運用担当の方
- 適切なボリューム選びでコストを下げたい方
本記事の読み方
各章は短く区切り、具体例や図解(言葉での説明)を交えて進めます。第2章で基本概念を整理し、第3章で主要なボリュームタイプの料金を説明します。第4章ではgp3を具体例で計算し、第5章で請求書上の計算方法を示します。第6章でEBSの位置づけと運用上の注意点をまとめます。
進め方としては、まず第2章で基礎を押さしてから、興味のある章を順にお読みください。実際の料金例を用いて丁寧に解説しますので、現場での判断にも役立ちます。
AWSの「ボリューム料金」とは何か?
ボリュームとは
AWSでいう「ボリューム」は、主にAmazon EBSのブロックストレージを指します。EC2に接続してOSやデータを保存するためのディスクです。物理のハードディスクに相当すると考えると分かりやすいです。
料金の基本要素
- プロビジョンド容量(GiB):月単位でGiBあたりの単価が掛かります。つまり「サイズ × 単価」で容量料金が決まります。
- 追加性能(IOPS/スループット):高いIO性能やスループットを選ぶと別途料金が発生します。IOPSは1秒あたりの入出力回数、スループットは1秒あたりの転送量です。
- スナップショット:バックアップとして保存する容量に対して別料金が掛かります。増分方式でも保存量に応じて請求されます。
- 稼働時間:プロビジョニングしている時間で課金されます。実運用で常時割り当てていると1カ月分ほぼ丸ごと請求されます。
要点の補足
ボリュームの種類(gp2/gp3/io1/io2など)によって、どの要素に重点を置くかが変わります。基本は容量課金をベースに、性能やバックアップで増える、と理解すると料金の見通しが立てやすいです。
代表的なEBSボリュームタイプと料金の考え方
EBSには用途ごとに異なるボリュームタイプがあります。ここでは日常的に使うことの多いgp3を中心に、io1/io2、st1/sc1の特徴と料金の見方をやさしく説明します。
gp3(汎用SSD)
- 特徴:容量・IOPS・スループットを独立して設定できます。コストパフォーマンスに優れ、多くの用途で推奨されます。
- 料金の考え方:基本は容量(GiB)単価です。必要に応じてIOPSやスループットを上げると、追加料金が発生します。たとえば容量はそのままでIOPSだけ上げると、容量費にIOPSの追加費が加わります。
io1 / io2(プロビジョンドIOPS SSD)
- 特徴:高い一貫性のあるIOPSが必要なデータベース向けです。IOPSを明示的に確保します。
- 料金の考え方:容量単価に加えて、プロビジョニングしたIOPS分の単価が請求されます。高性能を重視すると費用も上がります。
st1 / sc1(スループット最適化HDD / Cold HDD)
- 特徴:順次アクセスで大容量を安く扱いたいログやアーカイブ向けです。ランダムIO性能は低めです。
- 料金の考え方:容量単価が安く、IOPSやスループットは期待しにくい設計です。
選び方の目安
- 一般的なサーバやウェブ用途はgp3で十分です。
- データベースで高IOPSが必要ならio1/io2を選びます。
- 大量ログやアーカイブはst1/sc1でコストを抑えます。
まずはgp3で運用し、性能不足が出たらIOPSやスループットを調整する方法が分かりやすくコスト効率も良いです。
具体例で見る gp3 ボリュームの料金イメージ
前提条件(gp3最大スペック)
- 容量:64 TiB(= 65,536 GiB)
- IOPS:80,000
- スループット:2,000 MiB/s
料金内訳(東京リージョン、例)
| 項目 | 計算式 | 月額費用(USD) |
|---|---|---|
| ストレージ料金 | 65,536 GiB × 0.096 USD/GiB | 6,291 USD/月 |
| 追加IOPS料金 | (80,000 − 3,000) × 0.006 USD/IOPS | 462 USD/月 |
| 追加スループット料金 | (2,000 − 125) × 0.048 USD/MiB/s | 90 USD/月 |
| 合計 | – | 6,843 USD/月(約100万円/月) |
計算のポイント
- ストレージ(容量)料金が圧倒的に大きく、費用の大部分を占めます。IOPSやスループットは“ベース値”を超えた分だけ課金されます。
- この例では容量が特にコストを押し上げており、性能を最大にしてもIOPSとスループットは全体のわずかな割合です。
ブログで伝えるときの着眼点
- 「大容量を何となく選ぶと金額が大きくなる」点を強調してください。具体的な金額(今回なら約100万円/月)を示すとインパクトがあります。
- 使用実態に基づき容量や性能を見直すことを呼びかけると、読者の行動につながりやすいです。
この例は試算です。実際の請求は利用状況やリージョン、期間により変わりますので、目安としてご利用ください。
EBSボリューム料金が請求書でどう計算されるか
請求の基本ステップ
- ボリュームごとに時間単位でプロビジョンド容量を集計します(例:100 GiBを1か月=100 GiB×月分)。
- ボリュームタイプごとのGiB単価を適用します。タイプ別に単価テーブルが違います。
- 追加性能(追加IOPSやスループット)があれば、その利用分を別途加算します。
- スナップショットは別項目で課金されるため、ボリューム料金+スナップショット料金で合計されます。
- リージョン別単価差を反映して計算します。
請求書の行をどう読むか
- ストレージ容量:”VolumeUsage”や”EBS:Volume”の表記でGiB-時間と単価が見えます。例:100 GiB×720時間。
- 追加IOPS/スループット:”Provisioned IOPS”や”Throughput”の行が別に出ます。値は設定した追加分に基づきます。
- スナップショット:”SnapshotStorage”などの行でGB-月単位の課金が記載されます。
実務的なポイント
- 作成・削除で時間按分されるので、月途中で作ったボリュームは日割り計算になります。
- Cost ExplorerやCost and Usage Reportで行項目ごとにフィルタすると、どの行が何を指すか特定しやすくなります。
請求書のEBS欄は「容量」「追加性能」「スナップショット」の3つを分解して読むと、原因がつかみやすくなります。
AWS全体の料金体系の中でのEBSボリューム位置づけ
概要
AWSは基本的に従量課金です。各サービス(EC2、RDS、S3、EBSなど)がそれぞれ課金項目を持ち、利用状況に応じて合算されます。EBSはストレージ系の一部ですが、料金モデルが比較的シンプルです。
代表的な料金モデルとEBSの位置づけ
- オンデマンド課金:使った分だけ払います。EBSは容量(GB/月)と性能オプションで課金されます。
- リザーブド/Savings Plans:主にEC2やRDS向けで割引を受けられます。EBS自体に専用のリザーブドは少ないため、EC2の長期契約で総費用を下げる運用が現実的です。
- 無料枠:新規アカウントで一部ストレージが無料になりますが、運用規模が大きいと影響は小さいです。
S3との違い(簡潔に)
S3は保存量+リクエスト数+転送量で複雑です。EBSは主にプロビジョンド容量+IO/スループットなど性能で決まるため、設計と監視でコスト管理がしやすいです。
実務上の位置づけと運用ヒント
中小規模のWeb構成では、EC2+EBSが中心で、月1〜2万円程度のケースもあります。コスト削減は、不要ボリュームの削除、gp3の活用、スナップショットのライフサイクル管理、静的データはS3へ移行するなどが有効です。












