web制作と委託契約で失敗しないための重要ポイント解説

目次

はじめに

概要

本ドキュメントは「Web制作 委託」に関する調査結果をまとめたものです。Web制作を外部に任せる際の契約形態や特徴、注意点、契約書に盛り込むべき項目などを、わかりやすく解説します。

対象読者

・Web制作の発注を検討している企業や担当者
・外注と内製のどちらが良いか迷っている方
・契約書をより安全に整備したい方

本書の構成と使い方

業務委託契約、請負契約、保守業務委託契約の違いや活用方法、再委託の規定、保守範囲の明確化といった項目を順に解説します。各章で具体例を交え、実務ですぐ使えるポイントを示します。たとえば、ランディングページをフリーランスに頼む場合の契約や、社内で保守を続ける判断基準などです。

本ドキュメントを読むと得られること

・外注時のリスクを減らす契約の見方が身につきます
・契約形態に応じた実務上の注意点を理解できます

注意事項

本書は一般的な説明を目的としています。具体的な契約や紛争については、必要に応じて専門家に相談してください。

Web制作における委託と内製の選択肢

内製のメリットと向くケース

自社で制作を行うと要望を即座に反映できます。例として、マーケティング担当が簡単なランディングページを都度作る場合や、社内のブランドガイドラインに厳密に沿わせたいときに向きます。ナレッジが社内に残る点も大きな利点です。ただし人員やスキル、ツール投資が必要です。

外注(委託)のメリットと向くケース

制作会社やフリーランスへ依頼すると専門知識を活用できます。ECサイトや複雑なシステム、短期で高品質を求める案件に適します。外部の最新技術やデザイン力を取り入れやすく、短期で立ち上げたい場合に有効です。

判断基準(コスト・スピード・管理)

  • コスト:初期費用と長期の維持費を比較してください。
  • スピード:納期優先なら外注が早い場合が多いです。
  • 管理性:運用・更新を誰が行うかで決めます。

ハイブリッドの実例

設計・構築を外注し、日々の更新は内製にする組合せが一般的です。デザインのみ外注して実装は内製にするケースもあります。

選び方のポイント

要件を明確にし、実績や保守対応、コミュニケーション体制を確認してください。小さく試す『段階的委託』もおすすめです。

業務委託契約の定義と種類

定義

業務委託契約とは、自社の業務の一部または全部を外部の事業者に任せる契約です。発注側は業務の目的や範囲を示し、受託側はその業務を遂行します。Web制作では、作業の継続やノウハウを活かす業務に使われることが多いです。

主な種類(業務委託の中で)

  • 準委任型:作業や役務の提供を重視します。例えば、定期的な更新作業や運用代行、設計のアドバイスなどが当てはまります。成果物の完成よりも業務遂行が目的です。
  • 委任型(法律行為が含まれる場合):法的手続きなど専門的代理を委託する場合に使います。Web制作ではあまり一般的ではありません。

請負契約や保守との違い

請負契約は「成果物の完成」を約束する契約で、ホームページの制作一式などはこちらに当たります。保守業務委託は運用・監視・定期更新といった長期的な作業を想定します。

選び方の目安

  • 毎月の更新や運用を任せたい:準委任型の業務委託
  • 明確な完成物(サイト納品)が目的:請負
  • 継続的な保守や監視が必要:保守業務委託

具体例

  • 準委任の例:週次でコンテンツ更新を外注する
  • 請負の例:トップページを含むサイトを納品してもらう
  • 保守の例:サーバー監視と月1回のセキュリティ更新を委託する

契約を結ぶ際は、業務範囲と報酬、期間、再委託可否などを明確にすることが重要です。

業務委託契約の特徴と活用方法

特徴

  • 仕事単位で依頼する契約です。デザイン制作やコーディング、記事作成など個別業務を外部に頼めます。
  • 報酬は業務遂行に対して発生します。時間単価・出来高・成果物ごとの固定報酬など形が豊富です。
  • 委託先は業務の方法や手順をある程度自律して決めます。発注側は成果物や納期、品質基準を明確にします。
  • 著作権や二次利用、秘密保持の扱いを契約で決める必要があります。成果物の権利移転か使用許諾かを明確にします。

活用方法

  • 単発の制作:LPデザインやバナー制作など、明確なアウトプットがある案件で使いやすいです。
  • 部分的な専門領域の補完:SEO対策やライティング、アクセシビリティ対応など社内にないスキルを補います。
  • 継続的な改善支援:月次で改善提案や運用を依頼する形(業務継続の委託)も可能です。

実務上の注意点

  • 範囲を具体化する:成果物、検収基準、納期、修正回数を明記します。
  • 報酬体系を決める:作業量に応じた時間契約か、成果に対する固定報酬かを選びます。
  • 引き継ぎと再委託:将来の引き継ぎや再委託の可否を契約に入れておきます。
  • コミュニケーション頻度を定める:進捗報告の方法と頻度を決めると齟齬が減ります。

具体例:LP制作ならワイヤー、デザイン、コーディング、最終検収の項目を提示し、修正は2回までとするなど運用ルールを作ると安心です。

請負契約の特徴と活用場面

請負契約とは

請負契約は、受託者が「完成した成果物」を納品することを約束し、委託者がそれに対して報酬を支払う契約です。作業そのものではなく、完成結果を重視します。

主な特徴

  • 成果物の完成が契約の要件になります。検収が合格して初めて報酬支払いや引き渡しが確定します。
  • 成果物に対する責任が受託者に重くのしかかります。納品物に不具合があれば修補義務があります。
  • 仕様変更が発生すると、追加費用や納期の見直しが必要になります。見積もりや変更手順を明確にしておくと安心です。

活用場面(具体例)

  • Webサイト一式の制作(コーポレートサイトや採用サイトなど)
  • ECサイトや会員機能を含むWebアプリの開発
  • ランディングページやキャンペーンサイトの制作
    これらは完成形が明確で検収が可能なため請負契約が向きます。

注意点

仕様はできるだけ具体的に文書化してください。検収基準や納期、追加費用の扱いを契約書に明記するとトラブルを防げます。

保守業務委託契約の役割

目的

保守業務委託契約は、完成したWebサイトやシステムの安定運用を外部に任せるための契約です。自社の負担を減らし、専門家の対応で障害やセキュリティ問題を速やかに処理します。

主な業務内容

  • サーバー監視と障害対応(監視時間、応答時間を明記)
  • セキュリティ対策とパッチ適用(定期的なアップデート)
  • バックアップと復旧手順の実行
  • コンテンツ更新や軽微な修正(回数や範囲を契約で指定)
  • 不具合修正と根本原因調査

保守範囲の具体化

監視時間、対応レベル(緊急対応・通常対応)、月あたりの無償修正回数、セキュリティ更新の有無などを具体的に決めます。例:平日9〜18時の一次対応、24時間監視は別料金等。

契約で明確にすべき点

  • SLA(応答時間・復旧目標)
  • 再委託の可否
  • 料金体系(定額、従量制、スポット対応)
  • 報告方法と頻度
  • 契約期間・解約条件

運用上の注意点

責任の所在を明確にし、引き継ぎ用のドキュメントを整備します。緊急時の連絡フローとエスカレーションルールを定めると運用が安定します。

契約書に必要な主要項目

Web制作の委託契約書には、後のトラブルを防ぐために主要項目を具体的に記載します。以下は押さえておきたい項目です。

業務の範囲と成果物

業務内容(デザイン、コーディング、レスポンシブ対応、CMS導入など)と成果物を明確にします。例:PC/スマホのHTML/CSS納品、管理画面の操作マニュアル。検収基準も記載します。

納期とスケジュール

各マイルストーンと納期を設定します。遅延時の連絡方法や遅延損害金の扱いも定めます。

報酬と支払条件

金額・支払期日・分割支払のタイミングを明示します。追加作業の見積り・承認手順も記載します。

検収と修正対応

検収期間(例:14日)と、無償修正の範囲を定めます。範囲外は別途費用とします。

知的財産権と第三者素材

納品物の権利帰属(譲渡か利用許諾か)を明確にします。写真やフォント等のライセンス確認を求めます。

保守・サポート範囲

保守開始日、対応内容・時間、障害対応の優先度を定めます。保守範囲外は別契約とします。

機密保持と再委託

機密情報の取り扱い期間と再委託の可否を規定します。再委託を許可する場合は同等の義務を課します。

損害賠償・契約解除

責任の範囲や賠償上限、解除条件、不可抗力時の取り扱いを記載します。

連絡窓口と準拠法

窓口担当者、連絡手段、準拠法・紛争解決方法を明示します。

第8章: 再委託に関する規定

概要

制作業務を受託者が第三者に再委託する可否や条件を明確にします。再委託は効率化につながりますが、品質低下や情報漏洩のリスクが伴いますので、契約で制御します。

再委託の許可と事前承諾

再委託を許可する場合は、事前に委託者の書面(メールを含む)による承諾を条件にします。承諾の範囲(対象業務・期間・再委託先)を限定しておくと安心です。

再委託先の基準と適格性

再委託先に求める技術水準、守秘義務の遵守、個人情報保護体制、第三者の雇用形態などを明記します。例:同等の経験年数や過去事例の提出を求める。

情報管理と秘密保持

受託者は再委託先にも同等の秘密保持義務を課し、データ取扱い方針やアクセス制限を明示します。情報漏洩時の報告期限や対応手順も定めます。

責任と保証

再委託による瑕疵や納期遅延が生じた場合、受託者が最終的な責任を負う旨を規定します。再委託先への求償権や保証期間も示します。

監査・報告

委託者が必要に応じて再委託先に対する監査や報告を行える権利を保持します。定期的な進捗報告や成果物の品質チェックを義務付けます。

再委託の変更と契約解除

再委託先の変更や不適合があった際の手続き、重大な違反時の契約解除・損害賠償の取扱いを定めます。緊急時の一時的再委託の扱いも明記すると良いです。

サンプル条項例(簡潔)

「受託者は、本業務の全部または一部を第三者に再委託する場合、事前に委託者の書面による承諾を得るものとする。受託者は、再委託先に本契約と同等の義務を課し、再委託により生じた一切の責任を負う。」

保守範囲の明確化

目的

保守範囲は、誰が何を行うかを明確にします。範囲を具体化すると、役割分担や費用負担がはっきりし、トラブルを未然に防げます。

含まれる業務(具体例)

  • 障害対応:復旧手順、初期対応時間、復旧の目安
  • バグ修正:軽微な不具合の修正と費用負担の区分
  • セキュリティ対応:パッチ適用や脆弱性対応の頻度
  • 定期保守:バックアップ、ログ監視、運用チェック
  • バージョンアップ:CMSやライブラリの更新範囲

例:月次バックアップの取得と週次ログ確認は委託側が行います。

除外項目の明示(例)

  • 新機能開発や大規模な仕様変更
  • 外部APIの仕様変更に伴う改修(別途見積)
  • データ移行やマイグレーション作業

対応時間とSLA

対応時間(受付時間、作業時間)と、優先度ごとの初期対応時間や復旧目標を設定します。例:平日9〜18時受付、重大障害は4時間以内に初動対応。

変更管理と追加費用

保守対象外の作業は都度見積もりとし、承認フローを定めます。変更要求の記録方法と承認者を明記してください。

環境・権限・データ保護

対象環境(本番・ステージング)と、委託先に付与する権限範囲、バックアップの保管場所や保管期間を決めます。

報告・ログとエスカレーション

定期報告の形式と頻度、障害時の報告フロー、連絡先とエスカレーション手順を明記します。

契約書に入れる簡単な例文

“保守範囲:本契約は本番環境の監視、月次バックアップ、軽微なバグ修正を含む。新機能は除外とし、別途合意の上で実施する。”

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