はじめに
本書の目的
本ドキュメントは「Webサイト制作のヒアリングシート」に関する包括的なガイドです。クライアントとの認識ズレを減らし、効率よく質の高い提案と制作を進めるための実践的な知識をまとめています。制作担当者、Webディレクター、フリーランスの方に特に役立ちます。
誰のためのガイドか
- Web制作の初学者や経験の浅い制作者
- クライアントとのやり取りを担当する方
- ヒアリングのテンプレートを整えたい事業者
具体例としては、サイトを初めて作る中小企業やリニューアルを検討中の団体にも使いやすい内容です。
本ガイドで学べること
本書は以下の内容を順に扱います。ヒアリングの重要性、基本的な進め方、必須項目の一覧、具体的な質問例、運用のコツまで網羅します。実務ですぐ使えるテンプレートや注意点も提示します。
使い方のアドバイス
まず全体をざっと読み、必要な章をクライアントやプロジェクトに応じて参照してください。テンプレートはそのまま使っても、業種や規模に合わせてカスタマイズしても構いません。効果的なヒアリングは準備が重要ですので、本書をチェックリストとして活用してください。
Webサイト制作にヒアリングシートが必須な理由
目的・目標を確実に共有できます
Web制作では「何のために作るか」を最初に共有することが重要です。たとえば、問い合わせを増やしたい、ブランド認知を高めたい、ECで売上を伸ばしたいなど、目的が違えば設計や優先順位も変わります。ヒアリングシートに目的を明記すると、制作側と依頼側が同じゴールを見やすくなります。
認識のズレを減らせます
口頭だけだと、ターゲットの年齢や好み、デザインのイメージなどで誤解が生まれやすいです。具体例を選ぶ欄や参考サイトの記入欄を用意すると、色やトーン、機能要件の認識をすり合わせできます。
企画書・ワイヤー・見積もりの基礎資料になります
ヒアリングシートは後の企画書やワイヤーフレーム、見積もり作成のベースになります。要件が明確だと見積もり根拠も説明しやすく、追加要望が出たときの対応もスムーズです。
口頭だけのリスクを減らせます
聞き漏れや記憶違いで追加修正が多くなると、コストや納期のトラブルが起きやすくなります。標準化した質問リストを使えば、抜けを防ぎ、作業の無駄を減らせます。
実務での使い方のポイント
質問は短く分かりやすくし、必須項目と任意項目を分けます。クライアントが答えにくい項目は選択肢を用意し、回答後は制作側が要点をまとめて確認する習慣をつけるとよいです。
Web制作ヒアリングの基本フロー
概要
ヒアリングは順序立てて進めると漏れが少なくなります。ここでは実務で使える5つのステップを丁寧に説明します。
1. ヒアリングシートの作成
案件ごとに「必須項目」と「任意項目」を整理します。例:会社情報・目的は必須、参考サイトや細かい色指定は任意です。用途に合わせて項目を取捨選択してください。
2. 事前送付で効率化
Excel・PDF・Googleフォームなどで事前に送ります。事前入力があると当日の確認が短くなり、深掘りに時間を使えます。
3. 打ち合わせは「現在→過去→未来」で進行
現在の課題、過去の取り組み(成果や失敗)、未来の目標(KPIやスケジュール)の順に質問します。流れが自然で矛盾も見つけやすいです。
4. 社内共有と要件定義への落とし込み
得た情報を社内で共有し、役割ごとにタスク化します。デザイン、機能、コンテンツの優先順位を決めましょう。
5. 企画書・提案書の作成
サイトマップ、機能要件、デザイン方針、見積もりを整理して提案します。ヒアリング内容を根拠に示すと了承が得やすくなります。
現場での小さなコツ
- 短い要約をその場で作り、相手に確認する。問い合わせの手戻りを防げます。
- 不明点は仮置きとしてメモし、後で確定する。これで作業が止まりません。
以上が基本フローです。状況に応じて項目を調整してください。
ヒアリングシートに入れるべき基本項目一覧
はじめに簡単な説明:以下はWeb制作のヒアリングで最低限押さえるべき項目と、その記入例や確認ポイントです。読みやすく箇条書きでまとめます。
- 基本情報・連絡先
-
会社名、担当者名、電話、メール。緊急連絡先や役職もあると安心です。
-
会社・事業概要(商品・サービス内容)
-
提供する商品やサービスの要点。強みや価格帯のメモも役立ちます。
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既存サイトの有無・URL・運用状況
-
現サイトのURL、更新頻度、課題(例:問い合わせが少ない)を記載します。
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Webサイトの目的・ゴール
-
集客、採用、ブランディング、ECなど具体的に。測定指標(問い合わせ数等)も記入します。
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ターゲットユーザー・ペルソナ
-
年齢層、性別、職業、利用シーン。想定する課題や期待も書きます。
-
市場特性・競合サイト
-
競合のURL、良い点・悪い点、自社の差別化ポイントを挙げます。
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コンテンツ構成・掲載したい情報
-
必要なページ(会社概要、サービス紹介、料金など)と優先順位を明確にします。
-
デザインイメージ・カラー・参考サイト
-
好きなイメージ写真や参考サイトのURL。NGデザインや色も指定します。
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機能要件・システム仕様
-
問い合わせフォーム、予約、会員機能、決済など具体的に。連携APIの有無も確認します。
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ドメイン・サーバーの有無
-
現在のドメイン情報、サーバーの種類(レンタル/自社)や管理者を明記します。
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制作スケジュール・希望公開日
-
リードタイムやマイルストーン、公開希望日。優先度が高い機能を示します。
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予算感
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総予算や月額運用費の目安。見積もりの前提条件にします。
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運用体制・更新頻度・SNS連携
-
更新担当者、更新頻度、SNS運用の有無や連携方法を記載します。
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長期的な目標・ビジョン
-
1〜3年後に達成したい状態や成長計画を共有します。
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その他の要望・懸念点
- 法的制約、社内承認フロー、NG事例、特別な希望などを自由記入にします。
以上を一通り確認すれば、制作側と依頼側の認識ズレを減らせます。必要に応じて各項目に補足欄を設けると親切です。
基本情報・連絡先・会社概要で必ず押さえるべきポイント
1. ヒアリング冒頭で必須の基本情報
- 会社名・部署名:正式表記と略称の両方を確認します。
- 代表者名・担当者名:請求や契約の窓口を明確にします。
- 電話番号・メールアドレス:内線や代表アドレス、担当者個別の連絡先を分けて記入します。
- 住所:請求書や納品物の送付先を確認します。
- 既存サイトのURL:ある場合はログイン情報の有無も確認します。
- 希望する連絡手段:電話・メール・チャット(Slack/Teams)など、優先順位を聞きます。
2. 連絡先の確認ポイント(実務的な注意)
- 請求・契約先の違い:請求先とサイト管理責任者が異なることが多いので別々に聞きます。
- 対応時間・稼働曜日:レスポンスの目安を合わせます。
- 担当者の決裁権限:決済や公開の最終承認者を確かめます。
- 緊急連絡先:公開直後のトラブル対応用に必須です。
3. 会社・事業概要で必ず聞く項目
- 事業内容の要約:一文で説明してもらうとサイト文言に使いやすいです。
- 主な商品・サービス:売れ筋や推したいものを具体的に聞きます。
- 設立年・従業員規模・拠点数:信頼性や規模感の表現に役立ちます。
- 強み(USP):他社とどう違うかを3点以内で整理してもらいます。
- 主な顧客層・取引先業種:ターゲット設定や事例掲載の判断材料になります。
4. 質問の仕方と具体例
- 短く答えやすい質問に分けます。例:「主な顧客は個人・中小企業・大企業のどれですか?」
- 比較を促すと具体化します。例:「競合と比べて最も優れている点を一つ教えてください」
- 優先順位を聞くと設計が楽になります。例:「掲載したい情報を上位3つに絞ってください」
5. 情報管理と運用上の注意
- 記載情報は請求・契約に使うため正確さが最優先です。
- 更新頻度や担当者変更の通知方法を決めます。
- 個人情報や機密情報の取り扱いについては同意方法を確認してください。
Webサイトの目的・ゴール設定の質問ポイント
なぜ目的設定が重要か
サイト制作の成功は目的の明確さで決まります。目的があいまいだと設計や施策がぶれ、期待する成果が得られません。最初に優先順位を固めることが大切です。
よくある目的と具体例
- 問い合わせや資料請求の増加(例:月間問い合わせ数を20%増)
- ECでの売上・購入数増加(例:CVRを2%から3%に改善)
- 採用応募の増加(例:応募数を前年比1.5倍)
- 企業信頼性向上(例:取引成立までの時間短縮)
- 既存顧客への情報提供効率化(例:FAQで問い合わせを30%削減)
ヒアリングで聞くべき設問例
- 新しいサイトに何を期待していますか?
- 成功をどう測りますか?(問い合わせ数、CVR、PV、滞在時間など)
- 最優先のターゲットは誰ですか?
- 目標達成の期間はどれくらいですか?
- 現状の課題は何ですか?(定量・定性で)
目標設定のコツ
- 測定可能な数値で設定する
- 優先順位を1〜3位で決める
- 短期(3–6ヶ月)と中長期(1年)で分ける
これらの質問で目的を具体化すれば、設計や運用の指針が定まり、効果検証もしやすくなります。












