はじめに
背景
本書は「CMS reimbursement」に関する包括的な入門書です。米国の公的医療保険制度における支払いの仕組みが中心で、医療機関や請求担当者が現場で直面する疑問に答えます。
本書の目的
CMS(Centers for Medicare & Medicaid Services)が支払う仕組み、請求の流れ、返金や調整が発生する場面を分かりやすく説明します。専門用語は最小限にし、具体例を用いて解説します。
想定読者
医療機関の事務職、保険請求担当者、医療経営に関心のある方が主な対象です。医療行政や保険に不慣れな方でも読み進められるよう配慮しています。
本書の構成と読み方
全4章で構成します。第2章で基本概念を説明し、第3章でメディケアの主要な支払い方式を詳述します。第4章では代替的な支払い形態を扱います。章ごとに具体例とチェックポイントを載せ、実務に役立つ形でまとめます。
CMS Reimbursementとは何か?
CMSとReimbursementの基本
CMS(Centers for Medicare & Medicaid Services)は連邦政府の機関で、MedicareやMedicaidの支払いルールを決めます。Reimbursementとは、医師や病院が提供した医療サービスに対してCMSが支払うお金を指します。具体的には「どのサービスを」「どのくらいの金額で」支払うかを定めます。
具体的な支払いルールと例
- Physician Fee Schedule(医師向け支払い): 外来診療や検査に対する個別の料金表です。例として、初診や検査のコードごとに決まった点数が割り当てられます。
- Diagnosis Related Group(DRG): 入院治療に対する包括払いです。ある疾患や手術で一括して支払われます。例:人工膝関節置換の入院費用を包括的に評価します。
- 医薬品・医療機器の償還: 薬剤や機器ごとに償還の可否や価格が決まります。高額薬は個別の評価が行われます。
医療機関にとっての意味
CMSのルールは病院や診療所の収益構造を左右します。支払い方法が決まると、診療行為の記録やコード化の正確さが重要になります。適切に請求しないと本来受け取れる報酬を逃すことがありますし、逆に不適切な請求は返還やペナルティの対象になります。
患者や現場での見え方
Reimbursementは患者の診療内容や利用できるサービスにも影響します。医療機関は支払い基準を踏まえて診療の提供方法や検査の選択を行います。患者は請求や自己負担の仕組みを理解すると安心して受診できます。
メディケアの根幹:Fee-for-ServiceとReimbursementの仕組み
概要
Original MedicareはPart A(入院や施設ケア)とPart B(外来診療や医師サービス)で成り立っています。患者がMedicare認定のプロバイダに診療を受けると、プロバイダが直接Medicareに請求し、CMS(米国連邦医療保険局)が支払額を算定して支払います。Part Bでは通常、Medicareが80%を支払い、残り20%を患者が負担します。
診療から支払いまでの流れ
- 患者が診療を受ける。プロバイダは診療行為に応じたコードを付けます。
- プロバイダがその請求をMedicareに送ります。
- CMSがコードに基づき承認額を決め、支払いを行います。
- 患者は自己負担分(コインシュアランスや控除額)を支払います。
Fee-for-Service(出来高払い)の特徴
サービスごとに料金表で支払い額を定める方式です。診療を多く行うほど請求額は増えます。透明性が高く、個々のサービスに対して対価が支払われます。
医師への支払い:Medicare Physician Fee Schedule(PFS)
医師の支払いはPFSに基づきます。各診療行為コードごとに標準支払額が設定され、毎年改定します。パーティシペーティング・プロバイダはPFSで定められた額を受け入れ、患者は自己負担分のみ支払います。
具体例
外来での診察(仮に支払額が100ドルの行為)では、Medicareが80ドルを支払い、患者が20ドルを負担します。プロバイダはPFSに従って請求し、患者は追加の保険や補助で自己負担が軽減されることがあります。
Medicare Advantage(Part C)とその他のReimbursement
概要
Medicare Advantage(Part C)は民間の保険会社が運営するメディケア代替プランです。CMSは加入者一人あたりの包括的な支払(多くはキャピテーション)を保険会社に行い、保険会社が給付と支払いを管理します。加入者は保険会社のプランに加入し、医療提供者はそのプランに請求を出します。
支払いの流れ(簡単な手順)
- CMS→保険会社: 加入者ごとの包括支払(例:月額)
- 患者→保険会社のプランに加入
- 提供者→保険会社: 診療や検査の請求
- 保険会社→提供者: プラン契約に基づき支払い
もし患者が窓口で立て替えた場合、領収書と請求書を保険会社に提出して償還を受けます。
実務上の注意点
・プランごとにネットワークや事前承認の要否が異なります。受診前に保険情報と承認が必要か確認してください。
・プランの請求ルールや提出期限に従って請求書類を揃えることが重要です。
Part D(処方薬)について
Part Dは主に民間の処方薬プランで提供されます。薬局やPBMは各プランとの契約に従って償還を受けます。処方薬の償還ではレセプトデータや処方箋情報が必要です。窓口で全額支払った場合は、領収書と処方情報を添えて償還請求してください。
具体例
例:AさんがMAプランの医師診察を受け、窓口で自己負担20ドルを支払った場合。医師事務所はプランに請求し、保険会社が残額を精算します。Aさんが自分で支払っているときは、領収書で保険会社に償還請求できます。












