はじめに
このドキュメントの目的
このドキュメントは「web ページ サーバー」をテーマに、Webページを配信するサーバー(Webサーバー)の基本をわかりやすく説明します。専門用語は必要最小限にとどめ、実際の例を交えて初心者から中級者の方まで理解できるようにまとめました。
誰に向けて書いたか
- Web技術の仕組みに興味がある初心者
- Webサイトを自分で運用したい初心者〜中級者
- 開発や運用の全体像を知りたいエンジニア
本章で得られること
この「はじめに」では、本書の狙いと読み進め方を示します。次章以降で具体的な通信の流れやサーバーの内部動作、種類や構成を順に解説します。
読み方の提案
- 全体像をつかみたい方は、まず目次をざっと確認してください。章ごとに順番に読むと理解が深まります。
- 用語に不安があれば、該当章で出てきた具体例や図を参照してください。実際にブラウザでWebページを開きながら読むと理解が速まります。
本書の構成(全5章)
- 第1章: はじめに(本章)
- 第2章: Webページとサーバーの基本関係
- 第3章: Webサーバーとは何か
- 第4章: Webページが表示されるまでの流れ
- 第5章: Webサーバー内部の動き(プログラマ視点)
それでは、次章から順に学んでいきましょう。
第1章 Webページとサーバーの基本関係
1-1. Webページはどこに置かれているのか
Webページは文章や画像、見た目を整えるCSS、動きをつけるJavaScriptなど、複数のファイルで成り立っています。これらのファイルは自分のパソコンに置くこともできますが、一般には「Webサーバー」という常時接続されたコンピューターに保存します。図書館に本を置いて誰でも借りられるようにするイメージです。サーバーに置くことで世界中の人が同じページを見られます。
1-2. サーバーとクライアントの関係
Webの世界では、ページを見る側を「クライアント」と呼びます。ブラウザを動かすスマホやPCがそれに当たります。一方で、ファイルや情報を提供する側が「サーバー」です。クライアントはURLを使ってサーバーに要求(リクエスト)を送り、サーバーは必要なファイルを返します。このやり取りは短いメッセージのやり取りで行われ、ブラウザは受け取ったファイルを組み合わせて画面に表示します。たとえば、家から図書館に電話して本を取り置きしてもらい、それを受け取るような流れです。
両者は別の役割を持ち、互いに通信することで初めてWebページが表示されます。
第2章 Webサーバーとは何か
この章ではWebサーバーが何か、日常の例を交えてわかりやすく説明します。
2-1. Webサーバーの定義
Webサーバーとは、ブラウザなどのクライアントからのHTTPリクエストに応じて、HTMLページや画像などのWebコンテンツを返すソフトウェアや、それを動かすコンピューターのことです。例えば、ブラウザでURLを入力すると「このページをください」とサーバーに頼み、サーバーは該当するファイルを送って表示します。一般にユーザーがイメージする「サイトの置き場」はほぼこのWebサーバーを指します。
2-2. Webサーバーの主な役割
- ファイルの保存と管理:HTML・CSS・画像・JavaScriptなどのファイルを格納します。例としてindex.htmlやstyle.cssを配置します。
- HTTPリクエストの受信と処理:ブラウザから来た要求を解析し、どのファイルを返すか、あるいはどの処理を呼ぶか判断します。
- HTTPレスポンスの生成と送信:ファイルや生成したデータをステータス(200や404など)と一緒にクライアントに返します。
- セキュリティの確保:アクセス制御やSSL/TLSによる暗号化で通信を守ります。httpsの鍵マークがその例です。
- 性能向上の機能:キャッシュやリバースプロキシ、負荷分散で表示速度と安定性を向上させます。画像をキャッシュして再利用すると速く表示できます。
また、静的コンテンツ(そのまま返すファイル)と動的コンテンツ(プログラムで生成する表示)を扱う点も重要です。多くのサイトは両方を組み合わせて運用します。
第4章 Webサーバー内部の動き(プログラマ視点)
4-1. 受け取ったリクエストを解析する
ブラウザから届いたHTTPリクエストをサーバーは受け取り、行ごとに分けて解析します。パスやメソッド(GET/POST)、ヘッダ、クッキーを取り出して使います。例:GET /users?id=5
4-2. ルーティングとハンドラ
サーバーはパスに応じて処理を決めます。ルート設定で”/users”はユーザー一覧を返す関数に割り当てます。ルーティングは地図のような役割です。
4-3. ミドルウェアと前処理
共通処理はミドルウェアで行います。認証、ログ記録、入力の型チェックなどをここで済ませます。これにより各ハンドラは本来の仕事に集中できます。
4-4. 静的ファイルと動的処理の振り分け
画像やCSSは静的ファイルとして高速に返します。動的ページはアプリケーションロジックでデータを組み合わせてHTMLやJSONを作成します。
4-5. アプリケーション層とデータベース
ハンドラは必要なデータをデータベースに問い合わせます。接続はプールで管理し、同時接続を減らします。問い合わせはパラメータを使って安全に行います。
4-6. レスポンス生成とヘッダ
処理結果をもとにステータスコードやContent-Typeを設定し、ボディを作ります。例:200 OK と Content-Type: text/html
4-7. 並列処理と性能対策
サーバーは複数のリクエストを同時に扱います。プロセス/スレッドやノンブロッキング方式があります。キャッシュや接続プールで応答を速くします。
4-8. ログ・エラー処理・セキュリティ
例外はログに残し、適切なエラーメッセージを返します。入力の検証や出力のエスケープで攻撃を防ぎます。ログは障害対応や解析に役立ちます。
第4章 Webサーバー内部の動き(プログラマ視点)
4-1 ソケット通信で接続を受け付ける
WebサーバーはまずOSのソケット機能を使って通信口を開きます。手順は大きく分けて、ソケットの作成(socket)、アドレスの割当て(bind)、接続待ち(listen)、接続受け付け(accept)、リクエストの読み取り・処理、レスポンス送信、ソケットのクローズです。例えると電話交換機で受話器を待ち構え、かかってきた電話を取って会話し終えたら受話器を置く流れです。acceptやreadは通常ブロッキングするため、そのままでは他の接続を待てません。
4-2 複数クライアントへの同時対応
多くの利用者に応えるため、並列処理の方式を選びます。代表的な方法は次の通りです。
– プロセス/スレッド方式: 接続ごとに新しいプロセスやスレッドを作る方法です。実装が分かりやすく、独立性が高いですが、数が増えるとメモリやコンテキスト切替で負荷が増えます。
– スレッドプール/ワーカープール: 予め固定数のワーカーを用意し、接続を仕事として割り当てます。リソースを安定させやすく、実運用向きです。
– イベント駆動(ノンブロッキング): 1つのループで多くの接続を管理します。select/epollなどで準備ができたソケットだけ処理します。軽量で高い同時接続性を扱えますが、実装はやや複雑です。
実際のサーバーはこれらを組み合わせます。たとえばフロントにイベント駆動のプロセスを置き、重い処理をワーカープールに渡す構成が一般的です。タイムアウト管理やKeep-Aliveの扱いも重要で、短時間で大量の接続を捌くには細かな調整が必要です。












