はじめに
本書の目的
本書は、IBM WebSphere Application Server(以下WAS)とWebサーバー(特にIBM HTTP Server:IHS)を連携する際に必要な「Webサーバープラグイン構成ツール」について、分かりやすく解説します。plugin-cfg.xmlの生成・マージ手順や、GUIツールであるWebSphere Customization Toolboxの使い方も扱います。
対象読者
システム管理者や運用担当者、開発者で、WASとWebサーバーの連携作業を行う方を想定しています。初心者にも配慮し、専門用語は最小限にし具体例を交えて説明します。
読み方のポイント
各章は手順と概念を分けて記載します。まず全体像を把握し、次に具体的な操作やツールの使い方に進むと理解しやすいです。例:IHSとWASを結ぶ際はplugin-cfg.xmlを生成→配置→必要に応じてマージ、という流れを意識してください。
注意事項
本書は基本的な設定手順を中心に記載します。環境固有の調整やセキュリティ方針は別途確認してください。
第1章 Webサーバープラグイン構成ツールとは何か
概要
Webサーバープラグイン構成ツールは、Webサーバーとアプリケーションサーバー(主にWebSphere)をつなぐ設定をGUIで行うためのツールです。たとえばIBMの「Webサーバー・プラグイン構成ツール」は、接続先やルーティング情報をplugin-cfg.xmlとして生成・配布します。
主な機能
- 接続先(WASノード/サーバー)の選択と登録
- URIやコンテキストのルーティング設定(どのリクエストをWASへ送るか)
- plugin-cfg.xmlの生成・更新とWebサーバーへの配置
- 設定の検証と簡易テスト
操作の流れ(簡単)
- Webサーバーの種類を選ぶ(例:IHS)
- WASの接続情報を登録
- ルーティングルールを作成
- plugin-cfg.xmlを生成して配布
- Webサーバーでプラグインを再読み込み
利点と注意点
GUIで誤編集を減らせますし、複数サーバーへ一括配布も楽になります。しかし、生成される設定はWAS側の構成に依存するため、WAS側の変更に合わせて更新を忘れないようにしてください。ファイルの権限や自動配布の手順も事前に確認すると安全です。
第2章 Webサーバープラグインの役割と plugin-cfg.xml
概要
Webサーバープラグインは、Webサーバーが受けたHTTPリクエストをどのアプリケーションサーバーに渡すか判断する接続ブリッジです。モジュールとして組み込まれ、外部のLibertyやWASへリクエストを中継します。
主な役割
- ルーティング:URLパターンやコンテキストで送信先を決めます(例:/app1/* → app-server-1)。
- ロードバランシング:複数ノードへ負荷分散します。ラウンドロビンや重み付けが可能です。
- フェイルオーバー:障害時に別ノードへ自動で切り替えます。
plugin-cfg.xml の構成要素
- URIマップ:URLパターンとバックエンドの紐付け。
- Server/Cluster 定義:アプリケーションサーバーのホスト名とポート。
- LoadBalance/Failover 設定:重みやリトライの方針。
例:/app1/* を hostA:9080 と hostB:9080 に分散するエントリが書かれます。
動作の流れ
- Webサーバーがリクエスト受信
- プラグインがplugin-cfg.xmlのルールと照合
- 指定先に転送(必要ならリトライや別ノードへ切替)
運用上の注意点
- plugin-cfg.xml は plugin から参照されるため、更新後はプラグインの再ロードやWebサーバーの再起動が必要になる場合があります。
- 設定ミスで特定のURLが転送されなくなるため、変更は検証環境で確認してから本番へ反映してください。
以上がプラグインとplugin-cfg.xmlの基本的な役割と構成です。操作例は次章で詳しく説明します。
第4章 WebSphere Customization Toolbox と Web サーバー・プラグイン構成ツールの使い方
概要
WebSphere Customization Toolbox(以下、Toolbox)は、WebサーバーとWAS/Libertyをつなぐ設定作業をGUIで支援するツールです。コマンドだけで行う手間を減らし、接続定義やplugin-cfg.xmlの作成・マージを簡単に行えます。
インストールと準備
- Toolboxをダウンロードし、WindowsまたはLinuxにインストールします。通常は管理者権限で実行します。
- Webサーバープラグインが対象サーバーに導入済みであることを確認します(例:IHSやApache)。
基本的な使い方(手順)
- Toolboxを起動し「Webサーバー・プラグイン構成ツール」を選びます。
- 新規接続を作成します。画面でWebサーバー種別(例:IHS)とプラグインのインストールパスを指定します。
- WAS/Libertyの管理ノード情報を入力し、接続テストを実行します。接続が成功するとサーバー一覧が表示されます。
- ルール(仮想ホスト、URIマッピング)を画面で設定し、plugin-cfg.xmlを生成します。出力先はプラグインの設定フォルダです。
- 複数のplugin-cfg.xmlがある場合は、Toolboxのマージ機能で一つの設定にまとめます。
具体例
- 例:IHSを使用する場合、プラグインパスに”/opt/IBM/HTTPServer/conf”を指定して生成ボタンを押すだけでplugin-cfg.xmlが作成されます。
注意点とトラブルシュート
- パスや権限不足で書き込みに失敗することがあります。その場合は管理者権限で実行してください。
- 接続テストが通らない場合は、WAS/Liberty側の管理ポートやファイアウォール設定を確認してください。
ToolboxはGUIで直感的に操作できます。初めての方でも画面の案内に従えば、plugin-cfg.xmlの作成からマージ、デプロイまで進められます。
第4章 WebSphere Customization Toolbox と Web サーバー・プラグイン構成ツールの使い方
概要
WebSphere Customization Toolbox(WCT)には、WebサーバーとWebSphereをつなぐ「Webサーバー・プラグイン構成ツール」が含まれます。WCTを使うと、手作業で行いがちな設定をウィザードでまとめて作成できます。ここではWindows環境での基本手順と注意点をわかりやすく説明します。
起動手順(例:WAS 8.5.5、Windows)
- コマンドプロンプトを管理者として開きます。
- C:\IBM\WebSphere\Toolbox\WCT に移動します。
- wct コマンドを実行してWCTを起動します。
- 「提供されるツールのリスト」から「Webサーバー・プラグイン構成ツール」を選びます。
新規構成の作成手順
- ツール画面で「作成(C)…」をクリックして新規構成を開始します。
- 「追加(D)…」でプラグインのインストールディレクトリを指定します(例:C:\IBM\WebSphere\Plugins\)。
- ウィザードに従い、使用するWebサーバーの種類(IIS、Apache、IHSなど)とインストールパスを入力します。
- WASのプロファイル名、セル名、ノード名などの情報を入力すると、WAS側で必要な紐付け情報を含む定義登録スクリプトを生成します。
出力されるファイルと適用方法
- 生成物:plugin-cfg.xml、Webサーバー側の設定ファイル群、WAS側の定義登録スクリプト。
- 適用手順:プラグインをWebサーバーのプラグインディレクトリにコピーし、Webサーバーを再起動します。WAS側スクリプトは管理者権限で実行してください。
注意点とチェックポイント
- WCTは管理者権限で動かすと確実です。ファイル書込権限がないと失敗します。
- プラグインのバージョンがWebサーバーのバージョンと合っているか確認します。
- 作成後はWebサーバーのエラーログやpluginトレースで接続確認を行ってください。
第5章 Liberty と Web サーバー連携:plugin-cfg.xml の追加とマージ
概要
Libertyから出力されるplugin-cfg.xmlをWebサーバー側に置き、必要なら複数のファイルを一つにまとめます。こうすることで複数のLibertyインスタンスを背後に持つ環境でロードバランスや高可用性を実現します。
plugin-cfg.xml の取得場所
Libertyは通常、${server.config.dir}/logs/state/サブディレクトリにplugin-cfg.xmlを出力します。サーバーごとに同様の場所にあるため、取得は容易です。
Webサーバーへの配置手順
- Liberty側からplugin-cfg.xmlをコピーします。例: /var/opt/ibm/wlp/usr/servers/myServer/logs/state/plugin-cfg.xml
- Web Server Plug-insのインストールルート配下(例: /opt/IBM/HTTPServer/Plugins/config/)に配置します。
- Webサーバーを再起動して新しいプラグイン設定を反映します。
複数ファイルのマージ方法
複数のLibertyサーバー用ファイルを単一にまとめる際は、同一のVirtual HostやURIルールが重複しないよう注意します。一般的には提供ツール(プラグイン構成ツール)か、手動でWorker・Server定義を統合します。マージ後は重複や競合を確認し、Webサーバーを再起動してください。
実例(簡易)
3台のLibertyでそれぞれ生成されたplugin-cfg.xmlを取得し、プラグイン構成ツールでマージ。結果を/opt/…/config/plugin-cfg.xmlに配置してHTTPサーバーを再起動します。
注意点
- マージ時に重複するURIやワーカー名があると意図しない振る舞いを招きます。
- 変更後は必ずWebサーバーの動作確認を行ってください。












