はじめに
本記事の目的
本記事は、Web制作に関わる職種ごとの役割・仕事内容・分業体制を分かりやすく整理して紹介します。未経験の方や転職を考える方、発注側の企業担当者が「誰が何をするのか」を理解できることを目指します。
この記事で学べること
- Web制作に関わる主な職種とその役割
- 実際の業務でどのように分担が行われるか
- 各職種が連携する際の注意点や具体例
読み方のポイント
各章で職種ごとの業務内容、求められるスキル、他職種との関わり方を具体例とともに説明します。まずは全体像を把握し、気になる職種の章を読んで深掘りしてください。
Web制作の特徴
Web制作は一人で完結する仕事が少なく、多くの専門家がチームで進めます。デザイン、設計、実装、運用と工程が分かれ、それぞれの得意分野を生かして効率よく進めます。コミュニケーションと役割の明確化が成功の鍵です。
次章では、制作全体の流れと「役割分担」という考え方を見ていきます。
Web制作の全体像と「役割分担」という考え方
1. 全体像
Web制作は目的(集客・販売・情報提供など)を達成するために複数の専門家が協力する仕事です。企画から公開、運用までの流れを分担して進めます。
2. 主な関係者と役割
- Webプロデューサー:全体の方針と予算を決め、成果を責任持って追います。
- Webディレクター:制作の指揮を取り、スケジュールと品質を管理します。
- Webデザイナー:見た目と情報整理を行い、使いやすさを考えます。
- UI/UXデザイナー:利用者の動きを想定して体験を設計します。
- コーダー/フロントエンドエンジニア:デザインをブラウザで動く形にします。
- バックエンドエンジニア:データ処理やシステム部分を作ります。
- Webライター:文章で伝わる表現を作ります。
- Webマーケター:宣伝や改善のための施策を実行します。
- 営業・オペレーター:顧客対応や運用を担当します。
3. 小規模と大規模での違い
小規模では一人が複数役を兼任して素早く進めます。大規模では専門性を分けて品質と効率を高めます。
4. 役割分担のメリット
分担すると専門性を活かせます。責任が明確になり、作業手順が安定します。連携が重要なので、共通の資料やミーティングで認識を合わせます。
Webプロデューサーの役割:ビジネス視点で全体を統括
役割の全体像
Webプロデューサーは企画段階から納品まで、ビジネスの成果に責任を持つ上流の担当者です。目標設定や戦略立案を中心に、プロジェクト全体を俯瞰して進行管理と意思決定を行います。
主な業務
- クライアントの課題把握:売上向上やブランド強化など、ビジネスの目的を明確にします。例)販促キャンペーンでのリード獲得目標を設定する。
- サイト企画・提案:ターゲットやKPIを定め、最適な施策を提案します。
- 予算・スケジュール・体制設計:コストと工数を見積もり、体制を組みます。
- 品質・収支管理:成果物の品質と費用対効果を監督します。
制作現場との関係
制作の詳細な進行はディレクターが担いますが、プロデューサーは戦略や重要な判断に集中します。例えば方向転換が必要なときは、プロデューサーが最終判断を行います。
求められるスキルと心構え
ビジネス感覚、コミュニケーション力、数字を読む力が重要です。リスクを早めに見つけて対策を打つ姿勢が求められます。
実務での進め方(例)
企画→提案→体制構築→制作監督→検収・効果測定の流れで進めます。立ち戻るべき判断点を明確にして、関係者と共有することが成功の鍵です。
Webディレクターの役割:制作現場の「指揮官」
役割の概要
Webディレクターは制作チームをまとめ、プロジェクトを前に進める現場の指揮官です。要件を整理して優先順位を決め、進行を管理し、品質と納期を守ります。技術の深い知識よりも、コミュニケーションと調整力が重要です。
主な業務
- 要件定義・整理:クライアントの要望を具体化し、関係者に共有します。例:機能の範囲、納期、優先度を表にする。
- 進行管理:スケジュール作成と進捗確認を行います。遅延リスクは早めに洗い出します。
- タスク調整:デザイナーやコーダーに仕事を割り振り、負荷を調整します。
- 品質管理:成果物をチェックして仕様と整合するか確認します。簡易なチェックリストを使うと効果的です。
- クライアント窓口:問い合わせ対応、要望の変更管理、合意形成を行います。
求められるスキル
- 優れたコミュニケーション力
- スケジュール管理能力
- 問題の早期発見と調整力
- 必要最低限の技術理解(用語や工程が分かる程度)
現場での流れ(例)
朝に進捗確認→優先度の高いタスクを割り当て→問題が出たら関係者と調整→完成物をチェック→クライアントに報告、というサイクルを回します。
成功のコツと注意点
小さな合意を積み重ね、決定事項は記録して共有してください。マイクロマネジメントは避け、各メンバーの専門性を尊重すると効率が上がります。
Webデザイナーの役割:見た目と使いやすさのデザイン
役割の概要
Webデザイナーはサイトの「見た目」と「使いやすさ」を作る仕事です。色使いやレイアウト、写真やアイコンの選定で世界観をつくり、利用者が直感的に使えるよう配慮します。UI(操作部分)と情報設計の橋渡しを担います。
主な業務
- ビジュアルデザイン:カラー、タイポグラフィ、写真の扱いを決めます。ブランドイメージを形にします。
- UIデザイン:ボタンや入力欄など操作要素の見た目と配置を作ります。使いやすさを優先します。
- 情報設計:情報の優先順位を整理し、ユーザーが目的を達成しやすい構造にします。
- ワイヤーフレーム・プロトタイプ作成:画面の設計図や動く試作品を作り、早めに検証します。
- アセット制作:アイコンや画像、スタイルガイドを用意します。
必要なスキル
- デザインツール(Figma、Photoshopなど)の操作
- 基本的なHTML/CSSの理解(実装との連携がスムーズになります)
- コミュニケーション力:要望を聞き、意図を伝える能力
実務の流れ(例)
ヒアリング→ラフスケッチ→ワイヤーフレーム→ビジュアル制作→プロトタイプで検証→コーダーへ引き渡し、という流れで進めます。
他職種との協働
ディレクターと要件を詰め、コーダーと実装で調整します。UXデザイナーがいる場合は体験面の詳細をすり合わせます。クライアントの意図を反映しつつ、利用者に優しいデザインを実現します。
具体例(ECサイト)
商品写真を目立たせ、購入ボタンを視認性高く配置します。カテゴリの構造を簡潔にして、目的の商品にたどり着きやすくします。
UI/UXデザイナーの役割:体験設計に特化した専門職
概要
UI/UXデザイナーは、ユーザーがサービスをどう感じ、どう使うかという「体験」を設計します。見た目だけでなく、使いやすさや操作の流れを重視します。特に複雑な操作のあるWebアプリやSaaSで力を発揮します。
主な業務
- ユーザーリサーチ:実際の利用者や見込み客に話を聞き、困っている点や目的を把握します。短いインタビューやアンケートで十分です。
- ペルソナ設計:代表的なユーザー像を作り、誰のために作るかを明確にします。年齢や職業だけでなく目標や不満も書きます。
- カスタマージャーニーマップ:会員登録から利用、解約に至るまでの流れを図にします。どこで迷うかを可視化できます。
- ワイヤーフレーム・プロトタイプ作成と検証:紙や簡易ツールで画面構成を作り、ユーザーに触ってもらいます。問題点を早期に直せます。
- UIコンポーネントの一貫性管理:ボタンや入力欄の見た目・動きを揃え、使い勝手を安定させます。
実務での連携
ディレクターや開発者と早めに共有します。デザインの意図を伝えることで実装時の手戻りを減らせます。UI/UXの成果は離脱率低下や操作ミスの削減という形で確認できます。
コーダー / フロントエンドエンジニアの役割:デザインをブラウザ上に実装
仕事の全体像
コーダー/フロントエンドエンジニアは、WebデザイナーのカンプをHTML/CSS/JavaScriptでブラウザ上に再現します。見た目だけでなく動きや操作感、読みやすさまで含めて実装します。
主な作業内容(具体例)
- セマンティックなマークアップ:
、 、 - レスポンシブ対応:メディアクエリやフレックス・グリッドで、PC・スマホ・タブレットで崩れないレイアウトを作ります。
- インタラクション実装:メニューの開閉やスライダー、フォームの入力補助などをJavaScriptで実装します。
アクセシビリティ配慮
キーボード操作やスクリーンリーダーで使えるようにします。aria属性や適切なフォーカス管理、コントラストの確認を行います。
パフォーマンスと最適化
画像の最適化(srcsetやWebP)、コードの軽量化、遅延読み込みで表示速度を改善します。表示速度はユーザー満足度に直結します。
チームでの連携とワークフロー
デザインとの受け渡しは仕様書やコンポーネントガイドで行います。バージョン管理で履歴を残し、ステージング環境で確認した後に公開します。
品質チェック
ブラウザ互換性、レスポンシブ崩れ、アクセシビリティ検査、視覚差分テストなどで品質を保ちます。コードレビューを通して保守性も高めます。
デザインをそのまま再現するだけでなく、誰にとっても使いやすく信頼できるWebを作ることが最も大切です。












