はじめに
コアウェブバイタルとは
コアウェブバイタルは、Googleが提案する「Webページの使いやすさ」を測る指標の総称です。専門的な言葉は最小限にし、具体例で説明します。例えば、写真が遅れて表示されたり、ページのボタンが押しても反応が遅かったり、読みかけの文字が急に動いたりする不快さを数値で捉えます。
なぜ気にするべきか
訪問者は快適に使えるページを好みます。表示が遅かったり、操作が不安定だと離脱が増えます。ユーザーの満足度を上げることで、結果的に多くの訪問や成果につながります。検索エンジンにとってもユーザー体験は重要な要素です。
本書の読み方
第2章で主要な3指標をやさしく解説し、第3章でSEOとの関係を説明します。第4章では計測と改善の基本を、最終章で一般的なWeb Vitalsとの違いを扱います。技術的な背景は最小限にして、具体的な改善イメージが持てるようにします。
想定読者
サイト運営者、広報担当、制作に関わる方すべてに向けています。技術に詳しくなくても理解できる内容にします。
コアウェブバイタルの3指標
- はじめに
コアウェブバイタルは訪問者の体験を測る3つの指標で構成されます。ここでは分かりやすい例と改善のヒントを丁寧に説明します。
LCP（Largest Contentful Paint）
メインのコンテンツ（大きな画像や見出し）が表示されるまでの時間を測ります。例：記事ページで最初に見える大きな画像や本文のブロック。目安は2.5秒以下が良好、2.5〜4秒は改善、4秒以上は遅いと判断します。改善策：メイン画像を圧縮・遅延読み込みは画面外のみ、重要リソースをプリロード、サーバー応答を速くする（CDNやキャッシュ）。
INP（Interaction to Next Paint）
クリックやタップなどの操作に対する画面の応答速度を評価します。例：ボタンを押して反応が遅く、しばらく何も表示されない場合。目安は200ms未満が良好、200〜500msは改善、500ms以上は問題です。改善策：長時間実行する処理を分割して短くする、Web Workerで重い作業を実行、イベントハンドラを軽く保つ。
CLS（Cumulative Layout Shift）
読み込み中や操作中に要素が不意に動く度合いを示します。例：画像にサイズ指定がなく後から読み込まれて文字が跳ねる。スコア0.1以下が良好、0.1〜0.25は改善、0.25超は問題です。改善策：画像や埋め込みに幅と高さ（またはaspect-ratio）を指定、広告枠や動的コンテンツのスペースを確保、新しい要素は既存の上に挿入しない。
各指標は具体的な例で確認すると改善点が見つかりやすくなります。
SEOとの関係
概要
Googleはコアウェブバイタルをページエクスペリエンスの一部として検索順位の評価に組み込んでいます。単独で大きく順位を決める要素ではなく、コンテンツの関連性や質が最も重視される点は変わりません。ただし、同じくらいの内容のページが並ぶ場合には、コアウェブバイタルの良し悪しが順位の差につながることがあります。
検索順位への具体的な影響
たとえば、同じキーワードで似た情報を提供する2つのページがあるとします。両方とも情報量や信頼性がほぼ同等なら、読み込みが速く画面が安定するページ（コアウェブバイタルが良好な方）が上位に出やすくなります。逆に内容が明らかに優れている場合は、遅くても順位は高くなり得ます。
実務での優先順位
まずは良質なコンテンツ作りを最優先にしてください。次にページエクスペリエンスを整えます。具体的には、画像を圧縮する、レイアウトの崩れを避けるために画像や広告の表示サイズを予約する、不要なJavaScriptを減らすなどです。これらはユーザーの離脱を減らし、結果としてSEOにも好影響を与えます。
測定と改善のヒント
Search ConsoleのページエクスペリエンスレポートやLighthouseで現状を確認します。スコアに囚われすぎず、ユーザーが実際に受ける体験を基準に優先度を決めてください。ページ表示の遅さや大きなレイアウト変動を見つけたら、まずは影響の大きい点から改善すると効果が出やすいです。
計測と改善の基本
計測ツールとデータの種類
- Google Search Consoleの「ウェブに関する主な指標」でサイト全体やURL別のLCP・INP・CLSの状況を確認できます。PageSpeed Insightsは実測（フィールド）と模擬計測（ラボ）両方を表示します。
- 実測は実際の訪問者の体験、ラボは再現しやすいテスト結果です。両方を使って原因と再現手順を把握します。
URLごとの確認手順（簡単）
- Search Consoleで問題のあるページ一覧を取得する。
- PageSpeed Insightsで該当URLをテストし、どのリソースが影響しているかを見る。
- Chromeのデベロッパーツールでネットワークとレンダリングを確認して詳細を特定する。
改善の優先順位の付け方
- 影響の大きいページ（PVが多い、収益に直結するページ）を優先します。次に改善コストと効果を比較して着手順を決めます。
代表的な改善策（具体例）
- サーバ／CDN：応答時間が遅ければサーバのスペックを見直す、CDNを導入して配信を分散します。例：キャッシュ設定の追加。
- 画像・フォント：画像を圧縮・次世代形式にする、適切な表示サイズと遅延読み込みを設定する。フォントは事前読み込み（preload）やfont-displayで描画ブロックを減らします。
- JavaScript/CSS：不要なスクリプトを削除し、遅延読み込み（defer/async）やコード分割を行います。使用していないCSSは削減します。
- レイアウトシフトの防止：imgタグや要素に幅・高さを指定し、広告枠はあらかじめ確保します。アニメーションはtransformを使うと安定します。
継続的な監視と再計測
- 改善後はSearch ConsoleやPageSpeedで再測定し、変化を確認します。定期的にレポートを取得し、主要指標に悪化がないか監視します。
コアウェブバイタルと一般的な「Web Vitals」
Web Vitalsとは
Web Vitalsは、ウェブ体験の良し悪しを直感的に測るための指標群です。ページの読み込み速度や操作の応答性、表示の安定性など、ユーザーが実際に感じる要素を数値化します。たとえば、ページを開いて最初に大きな画像が表示されるまでの時間や、ボタンを押したときに反応する速さが含まれます。
Core Web Vitalsとの関係
Core Web VitalsはWeb Vitalsの中でも特に重要な3つを指します。ユーザー体験に直結する指標だけを抜き出しており、実務で優先的に改善すべきポイントです。つまり、Web Vitalsは全体像、Core Web Vitalsは優先順位の高い部分と考えると分かりやすいです。
その他の一般的な指標
Core以外にも、Time to First Byte（TTFB）やFirst Contentful Paint（FCP）などがよく使われます。これらは状況に応じて追加で見ると、問題の原因特定が早まります。具体例：読み込みは速いが要素がずれる場合は表示の安定性（CLS）を調べます。
指標の更新と実務への影響
Core Web Vitalsの内容や閾値は、ユーザー行動や技術の変化に合わせて見直されます。運用では定期的に計測し、影響範囲を見極めてから改善策を実施してください。
計測上の注意点
ラボ環境と実ユーザー計測（フィールド）で値が異なります。開発段階ではラボ、公開後は実ユーザーのデータを重視すると効果的です。
