はじめに
概要
AWS SNS（Amazon Simple Notification Service）は、AWSが提供するフルマネージドの通知・メッセージ配信サービスです。1つのメッセージを複数の宛先に同時に届けられる点が大きな特長です。運用やサーバー管理を気にせず、配信に集中できます。
どんなときに使うか（具体例）
- システム障害の通知：管理者にメールやSMSで同時通知します。
- モバイルアプリのプッシュ通知：多数の端末へ一斉送信します。
- サービス間連携：あるサービスのイベントを別のサービスへ伝えるとき、HTTPやキューへ送ります。
主な特徴（やさしい説明）
- 複数配信先への同時送信：1回の送信でメール・SMS・HTTPなど複数へ配れます。
- フルマネージド：サーバーの準備やメンテナンスが不要です。
- 柔軟な配信先：個人のメールや携帯番号、アプリ端末、他サービスの受け口に送れます。
この章ではSNSの概観を分かりやすく紹介しました。以降で具体的な使い方や注意点を順に解説します。
SNSの基本イメージ
Pub/Subモデルの簡単な説明
SNSはPub/Sub（Publish/Subscribe）という仕組みを使います。発信者が「トピック」にメッセージを送ると、そのトピックを受け取るよう登録した全員（または全てのエンドポイント）に通知が届きます。言い換えると、投稿先と受け取り先を分けて管理できます。
トピックとは
トピックは情報の送信先ラベルです。例えば「新着記事」「システム監視」「注文情報」など用途ごとに作ります。発信者はトピック宛にメッセージを出し、受信者は必要なトピックだけ購読します。
エンドポイント（通知先）の具体例
- メール: ユーザーへの通知に適します。例: 注文確認メール。
- SMS: 重要な短いメッセージ向きです。例: ワンタイムコード。
- モバイルプッシュ: アプリ利用者へ即時通知します。例: アプリの新着情報。
- HTTP/HTTPS: 自社システムの受け口に直接送れます。例: Webサービスのコールバック。
- SQSキュー: メッセージを一時保管し順番に処理できます。例: バックグラウンド処理。
- Lambda関数: メッセージを受けて自動処理を実行します。例: 画像変換や集計処理。
メッセージの流れ（イメージ）
- 発信者がトピックにメッセージを送る
- SNSが購読している全エンドポイントへ通知する
- 各エンドポイントが受け取り処理を行う
具体例として、新しい記事を公開したら「新着記事」トピックへ通知し、メールで読者に知らせ、アプリにプッシュし、バックエンドで統計を記録する、といった使い方が典型です。
主なユースケース
システム監視アラート
CloudWatchなどの監視ツールで閾値を超えたときに、SNSを介して関係者へ即時通知します。例えば、CPU使用率が高い、ディスク容量が少ない、サービスが停止したときにアラートを送ります。通知先はメールやSMS、チャットのWebhook、オンコールツールなどに同時配信でき、重要度に応じて配信方法を変えます（例：重大な障害はSMS、軽微な警告はメール）。これにより早期対応が可能になり、被害の拡大を防げます。
業務イベント通知（アプリケーション）
ユーザー登録完了、注文ステータスの更新、パスワードリセットなどの業務イベントを複数チャネルに同時配信します。たとえば、注文確定時にユーザーへメールとSMSを同時に送り、同時に外部の配送システムへWebhookで通知するといった使い方です。テンプレートを用意して本文を組み立て、通知の一貫性を保つと受け手に分かりやすく届けられます。
その他の活用例
内部の一斉連絡（メンテナンス告知）、マーケティングの一斉配信、IoT機器からの状態通知などにも使えます。複数チャネルへの“同報配信”が得意なので、用途に応じて受け手や配信頻度を設計すると効果的です。配信量やコスト、頻度に注意して運用設計してください。
SNSと関連サービスの違い
概要
SNSは通知やPub/Subの仕組みで、1つのメッセージを複数の宛先にプッシュ配信します。リアルタイム性が高く、イベント発生時に関係者やシステムへ同時通知する用途に向きます。
SNS（通知系）の特徴
- メッセージを同時に複数へ送る（プッシュ）
- サブスクライブ方式で受け手を追加・削除できる
- 即時配信を重視し、迅速な連携に適する
SQS（キュー）との違い
SQSはメッセージをキューに蓄え、ワーカーが順に取得して処理します。非同期処理と負荷平準化に強く、同じメッセージを複数のワーカーが重複処理しない設計です。配信先は1件ずつ処理する場面に向きます。
SES（メール）との違い
SESは大量メールの送受信に特化しています。メールの配信レポートや到達率を意識した機能が充実し、トランザクションメールやマーケティングメールに適しています。SNSやSQSはメールそのものの配信機能を提供しません。
使い分けの例
- イベント通知はSNS、バックグラウンド処理はSQS、ユーザーへのメールはSESを使うと分かりやすいです。
- 同時通知と逐次処理を組み合わせて、効率よくシステムを設計できます。
利用時のポイント
はじめに
通常は標準的なトピックを使い、高スループットで通知を配信する運用が一般的です。ここでは実運用で気をつけたい点を分かりやすくまとめます。
トピックの設計
トピックは数を増やしすぎないことが大切です。多くの場合、1つのトピックにメッセージ属性を付けて使い、購読者側で受け取る条件を絞ると運用が楽になります。例えば「注文通知」トピックを1つ作り、属性で地域や優先度を分けます。
メッセージフィルタリングの活用
メッセージ属性（例: region=JP, priority=high）を付けると、購読者ごとに受信条件を設定できます。これによりトピックは1つでも、購読者ごとに必要な通知だけを届けられます。設定はシンプルに保ち、複雑な条件は避けると管理が楽です。
配信の信頼性と障害対応
再試行や配信失敗時の挙動を確認してください。失敗メッセージを別に保管する仕組み（デッドレターキューなど）を用意すると復旧が容易になります。配信方式ごとの遅延や順序性の違いも把握しておいてください。
セキュリティと権限管理
送信・購読の権限は最小限に絞り、誰がどのトピックに書き込めるかを明確に設定します。メッセージに個人情報を含める場合は暗号化やアクセス制御を必ず行ってください。
モニタリングとコスト管理
配信成功率や遅延、トピックごとのメッセージ数を定期的に確認しましょう。不要なトピックや過剰なリトライはコスト増につながります。ログやメトリクスを活用して異常を早めに検知してください。
テストと運用のコツ
実運用前に購読フィルタや配信設定を小規模で試験してください。運用ルールをドキュメント化し、障害発生時の手順を用意しておくと対応が速くなります。
