はじめに
概要
AWS Lambdaはサーバーを自分で管理せずにコードを実行できるクラウドサービスです。特定の出来事(例:ファイルのアップロードやAPIの呼び出し)をきっかけに、自動でプログラムを動かします。実行時間や呼び出し回数に応じて料金が決まるため、使った分だけ支払います。
何ができるか(簡単なイメージ)
- 画像や動画をアップロードしたら自動でサイズ変換やサムネイル作成を行う
- ウェブやモバイルのAPIの裏側で処理を受け持つ
- 定期実行でバッチ処理やログの集計を行う
- ストリームデータをリアルタイムに分析する
どれもサーバーの起動・管理作業をほとんど必要としません。短い処理やイベント単位の処理に向いています。
本章の位置づけ
この記事は全6章でLambdaを丁寧に解説します。次章ではLambdaの仕組みを、続いて特徴や利用例、他サービスとの違い、向き不向きを順に紹介します。初心者の方でもイメージしやすいように具体例を交えて進めます。
AWS Lambdaとは
概要
AWS Lambdaは、イベントに応じて自動でコードを実行するクラウドのコンピューティングサービスです。サーバーを直接管理せずに、短時間の処理を柔軟に動かせます。コードは「関数」として登録し、必要なときだけ起動します。
主な起動トリガー(具体例)
- S3へ画像をアップロードしたときに自動でリサイズする
- API Gateway経由のHTTPリクエストに応じてJSONを返す簡易APIを動かす
- DynamoDBの更新を受けて検索用インデックスを更新する
- 毎朝の定期実行でバッチ処理を行う
課金モデル
実行時間とリクエスト数に応じた従量課金です。処理が動いている間だけ費用が発生し、アイドル時間のコストは発生しません。小さな処理を多く動かす場合に経済的です。
長所と注意点
スケールが自動で、運用負担を減らせます。短い処理には向きますが、状態を持たない設計が基本で、長時間実行には制限があります。
主な特徴
自動スケーリング
AWS Lambdaはリクエスト量に合わせて関数の実行数を自動で増減します。アクセスが急に増えても短時間で処理を増やし、逆にトラフィックが途絶えれば実行を止めてコストを抑えます。例えば、ECサイトでセール時のアクセス増加に自動で対応できます。
マネージドな実行環境
サーバーの管理やOSのパッチ適用、ハードウェア障害対応、可用性の確保はAWS側が担当します。開発者はサーバー構成を気にせず、関数のコードとビジネスロジックに集中できます。運用負荷を減らし、リリースを早めたい場合に便利です。
豊富な統合
LambdaはS3、DynamoDB、API Gateway、SQS、Kinesis、EventBridgeなど多くのサービスとネイティブ連携します。具体例として、S3に画像をアップロードしたら自動でリサイズ、DynamoDBの更新をトリガーに処理を実行、API Gateway経由でHTTP APIを提供、SQSでキュー処理を順次実行などが簡単にできます。200以上のAWSサービスや一部のSaaSとも連携可能で、イベント駆動のアーキテクチャを組み立てやすいです。
利用例
以下では、代表的な利用例を分かりやすく3つご紹介します。各例ごとに処理の流れ、利点、現場で注意すべき点を簡潔にまとめます。
1. S3に画像がアップロードされたら自動でサムネイル生成・保存
- 処理の流れ: ユーザーがS3に画像をアップロード → S3イベントでLambdaを呼び出す → Lambdaが画像をリサイズして別バケットや別プレフィックスに保存します。
- 利点: 自動化で手作業が不要になり、アクセス増加時もスケールします。コストは使用した分だけです。
- 注意点: /tmpの容量は限られるので大きな画像はストリーム処理を検討します。タイムアウトやメモリ設定を適切にし、同じイベントの重複処理に備えて冪等性を持たせます。
2. API Gatewayと組み合わせたサーバーレスなREST APIバックエンド
- 処理の流れ: クライアントがHTTPリクエスト → API Gatewayが受け取りLambdaを呼ぶ → Lambda内で認証処理、DBのCRUD、外部決済API呼び出しなどを行う構成です。
- 利点: サーバーの運用負担を減らし、短期間で機能をデプロイできます。トラフィックに応じて自動でスケールします。
- 注意点: データベース接続はコネクション数に注意するため、RDSならRDS Proxyやコネクションプールの工夫をします。コールドスタート対策やタイムアウト設定も重要です。
3. Kinesisやログストリームからのリアルタイム分析・ETL・機械学習前処理
- 処理の流れ: ログやセンサーデータをKinesisに送信 → Lambdaがバッチまたはストリーム処理で集計・フィルタ・変換 → 結果をS3やデータストア、下流の分析サービスへ送る。
- 利点: 低レイテンシでの処理や柔軟なパイプライン構築が可能です。前処理をLambdaで行い、機械学習の入力を整えられます。
- 注意点: 同時実行数やシャード数に応じてスケール設計を行います。重複データや順序性が問題になる場合はチェックポイントや外部ストアで状態管理します。
これらは代表例です。用途に応じて組み合わせたり、設定を最適化したりすることで、より信頼性の高いサービスを作れます。
AWS Lambdaと他サービスの違い
サーバー管理
AWS Lambdaはサーバーの準備やOSの更新、ミドルウェアの管理が不要です。実行環境はAWSがフルマネージドで用意します。たとえば、コードをアップロードすればすぐ実行でき、サーバーのパッチ適用や再起動を気にしなくて済みます。
課金モデル
Lambdaは実行時間とリクエスト数に応じた従量課金です。短い処理を多数実行するワークロードでは費用を抑えやすいです。一方、常時稼働するサーバーは起動している時間で課金されます。
スケーリング
リクエストに応じて自動でスケールします。アクセスがなければ利用料はほぼゼロです。EC2や常時稼働のコンテナではスケールの設定や最低台数の確保が必要です。
実行時間制限
Lambdaは1回の実行に上限時間があります。短時間で終わる処理に向いており、長時間処理や連続的なジョブには適しません。
EC2やコンテナとの違い(具体例)
- 管理負担:EC2はOSやミドルウェアの管理が必要です。コンテナもランタイムやクラスタ運用が必要です。
- 課金:EC2はインスタンスの稼働時間で課金されます。コンテナもクラスタのノード分が課金対象になります。
- 柔軟性:EC2やコンテナは長時間処理や特殊なOS設定が必要な場合に強みがあります。
用途に応じて、サーバー管理を減らして短時間処理を多くこなしたければLambda、細かな環境制御や長時間処理が必要ならEC2/コンテナを選ぶとよいです。
どんなときに向いているか
概要
イベント駆動で短時間の処理を行いたい場合に向いています。リクエストやファイルの到着をきっかけに素早く処理し、処理が終われば料金が発生しなくなるモデルが合います。
向いているケース(具体例)
- ファイルアップロード後の処理:画像のサムネイル作成や動画のメタ情報抽出。例:ユーザーが写真をアップロードしたときに即座に変換する。
- メッセージ到着での処理:キューに溜まったデータを順次処理するバッチ作業。例:注文データの検証と登録。
- スケジュール実行:定期的なログ集計やバックアップ処理。例:毎日深夜に古いデータを削除する。
- 小さなマイクロサービスやAPI:単純なCRUDや認証のエンドポイントを素早くデプロイする場合。
- アクセス変動が大きいサービス:普段は負荷が低く、ピーク時だけ大量アクセスが来るウェブフック受信など。
向かないケース(注意点)
- 長時間かかる処理:数十分以上かかる連続処理や大規模なデータ解析には向きません。
- 特殊なハードウェアや長期的な接続が必要な場合:GPUや専用ネットワークが必須の処理は別の選択肢を検討してください。
選ぶときのポイント
処理が短く、起動と終了を繰り返せる設計になっているかを確認してください。コストや運用の手間を抑えつつ、スケール性を重視する場面で特に効果を発揮します。












