はじめに
Drupalの特徴
Drupalは柔軟なコンテンツ設計、細かな承認フロー、役割ごとの権限管理を得意とするCMSです。記事やイベントといった複数のコンテンツタイプを自由に作り、項目（フィールド）を細かく定義して構造化できます。表示方法や一覧の作り分けも得意で、大規模サイトの管理に向いています。
なぜ本書を書くか
本シリーズでは、Drupalが「コンテンツ管理」で強みを持つ点に焦点を当てます。具体的にはコンテンツタイプ設計、ワークフローと権限、大量コンテンツの整理方法、他CMSとの違い、適した利用シーンを順に解説します。技術的な詳細は必要最小限にして、実務で使える視点を重視します。
読者に期待すること
サイト制作の発注担当者、運用者、編集者、開発者いずれにも役立ちます。各章は実際の運用を想定して分かりやすく説明しますので、目的に合わせて読み進めてください。
Drupalでできる主なコンテンツ管理
概要
Drupalは記事、固定ページ、ブログ、フォーラムトピックなど複数のコンテンツタイプを簡単に作成・管理できます。初期のタイプに加え、用途に合わせて独自のコンテンツタイプを作れます。
フィールドの追加とカスタマイズ
各コンテンツタイプにタイトル・本文・画像・タグ・公開日時などのフィールドを自由に追加・変更できます。たとえば商品ページなら「価格」や「仕様」「在庫数」を追加し、イベントなら「開催日時」「会場」を追加できます。
公開設定とURL管理
各コンテンツでURLエイリアスを設定でき、公開・非公開の切り替えや予約公開も可能です。イベントの公開日時を設定して自動で公開する運用ができます。
管理画面での編集・削除
公開後も管理画面から簡単に編集・削除できます。プレビューや下書き保存、差分を残すリビジョン機能で安全に更新できます。まとめて操作する一括処理も使えます。
具体的な利用例
- ブログ：カテゴリ・タグで整理し、予約投稿で配信計画を立てられます。
- 商品カタログ：商品ごとに画像や仕様を持たせ、検索やフィルタで絞り込みできます。
これらにより、柔軟で分かりやすいコンテンツ管理が行えます。
ワークフローと権限
概要
Drupalではコンテンツに「下書き」「承認待ち」「公開」などの状態を持たせ、編集者から承認者へと渡すワークフローを作れます。状態ごとに閲覧や編集の可否を制御し、公開前の確認を確実にします。
状態の具体例
- 下書き：作成中の状態。公開はされません。複数人で下書きを共有できます。
- 承認待ち：編集者が公開申請した状態。承認者が確認するまで保留されます。
- 公開：一般に見える状態。過去版へ戻せる履歴も残ります。
ロールと権限の設定
ロール（役割）に対して細かく権限を割り当てます。例えば「編集者」は作成・編集を行い公開は申請のみ、「承認者」は承認して公開できる、「管理者」は全権限を持つ、といった具合です。コンテンツタイプごとに権限を分けられます。
実務でのポイント
- 最小権限の原則で必要な権限だけ付与してください。
- 承認時は差分とコメントを確認する運用を決めておくと安全です。
- 自動通知や公開スケジュールを活用すると運用が楽になります。
- 履歴とログを残しておくと問題発生時に復旧できます。
運用と技術設定を両方整えることで、安定した公開フローが実現できます。
大量コンテンツ・構造化に強い点
カスタムコンテンツタイプとフィールド
Drupalでは「記事」「製品」「イベント」など独自のコンテンツタイプを作れます。各タイプに必要なフィールド（テキスト、画像、日付、数値など）を柔軟に追加できるため、製品の仕様やイベントの開催情報を項目ごとに整えて一元管理できます。たとえば製品なら“型番”“価格”“スペック”を個別フィールドで持たせられます。
タクソノミーで分類・再利用
タグやカテゴリをタクソノミーとして設定すれば、複数コンテンツを共通の分類でまとめられます。類似商品や関連ニュースをカテゴリで横断的に抽出しやすく、検索や絞り込みにも向きます。
Viewsによる柔軟な表示
Views機能で「最新一覧」「カテゴリ別一覧」「条件付きリスト」を直感的に作成できます。表示形式は一覧、表、カード、ページ、ブロックなど選べ、必要な条件で絞り込んで再利用できます。関連コンテンツの一覧表示やページ内のパーソナライズ表示も実現しやすいです。
大量データの運用性
コンテンツを構造化することでCSVインポートや一括更新、フィルタリングが容易になります。運用者は特定フィールドだけ編集したり、権限に応じて作業分担したりできます。結果として大量の情報を整理し、必要な形で取り出して提示するのに適した仕組みが整います。
他CMSとの違い（コンテンツ管理面）
概要
Drupalは「コンテンツの型（テンプレート）」を標準で自由に作れます。例えば「ニュース」「製品」「イベント」といった型ごとに項目を細かく設定できます。WordPressのような一般的なCMSは最初は単純な投稿と固定ページが中心で、細かな構造は拡張（プラグイン）に頼ることが多いです。
具体的な違いと実例
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フィールドの柔軟性
Drupalでは文字列、日付、参照など項目を自由に追加できます。例えば「製品」型に「型番」「対応OS」「関連資料」を持たせて管理できます。WordPressでは同等の機能を使うとプラグインが必要です。 -
分類と関連付け
分類（カテゴリやタグ）を階層的に作り、別のコンテンツ同士を関連付けしやすいです。ニュースと製品を紐付けて一覧表示する、といった運用が簡単です。 -
権限とワークフロー
編集者・承認者など細かい役割を標準で設定できます。承認フローや公開スケジュールを組み込む際に追加開発を減らせます。 -
メディアと履歴管理
画像や添付ファイルを一元管理し、コンテンツごとの変更履歴も扱いやすいです。誤って公開しても差分をたどれます。
どんな場面で違いが出るか
構造化された大量の記事や複数チームでの運用、大きな分類や関連を多用するサイトではDrupalが効率的です。一方で単純なブログや小規模サイトでは、シンプルなCMSの方が導入が早く手間が少ないです。
（章の続きは不要）
こんなニーズに向いている
概要
Drupalは構造化したコンテンツを長期的に運用したい場合に向いています。会員向けの情報配信、複数言語での展開、大量の記事やカテゴリを扱うサイトで力を発揮します。具体例を挙げて説明します。
会員サイト・ポータル
会員ごとに表示を変えたり、権限に応じて閲覧・編集を制限したい場合に有効です。たとえば会員向けのダウンロードや専用コンテンツ、イベント申込などを安全に管理できます。
複数言語サイト
翻訳コンテンツを個別に管理し、地域ごとの表示切替が必要なサイトに適しています。言語ごとの編集履歴や公開状態を分けて運用できます。
大量カテゴリ・オウンドメディア
何千件もの記事や細かいカテゴリを整理したい場合にスケールします。タグや階層化した分類で検索性を高め、編集者が効率よく作業できます。
製品データベース・カタログ
製品仕様や属性をフィールドで細かく定義し、検索やフィルタで使いやすくできます。長期にわたるデータ保守やバージョン管理にも適します。
編集者が多い組織・ガバナンス重視
承認フローや細かな権限設計が必要な組織で有利です。公開前のレビューや差し戻し、改版履歴の把握などを組織的に運用できます。
運用を重視するケース
将来的に機能追加や外部システム連携を見越している場合、柔軟に拡張できます。APIで他システムと連携し、データを再利用する設計にも向いています。
