はじめに
なぜCMSのセキュリティが重要か
CMS(例:WordPressやDrupal)はサイト運営を簡単にしますが、その分狙われやすい面もあります。攻撃で改ざんや個人情報漏えいが起きると、信頼や業務に大きな損害が出ます。被害を小さくするには、日常的な対策が欠かせません。
基本の考え方
CMSの安全対策は一つだけで完結しません。大きく分けると「ソフトウェアの更新」「認証の強化」「通信とサーバーの守り」「バックアップと運用ルール」の四つが柱です。これらを同時に整備し、多層で防御することが重要です。
本書の読み方
以降の章で、まず技術的にできることを具体的に説明します。その後、運用や監視の工夫、最後にCMSを選ぶ際のチェックポイントを紹介します。普段から実践できる簡単な手順から、管理者が検討すべき設定まで順を追って解説します。
基本の技術的対策
更新管理
CMS本体・テーマ・プラグインは常に最新に保ちます。更新前にサイト全体のバックアップを取り、ステージング環境で動作確認すると安全です。使っていないテーマやプラグインは削除してください。不要なソフトは攻撃の入口になります。
認証とアクセス制御
強力なパスワードポリシーを適用し、パスワードは定期的に見直します。二要素認証(例:認証アプリやセキュリティキー)を必ず有効化してください。管理画面はログイン試行回数制限やIP制限でアクセスを絞ると効果的です。管理URLを変更するのも簡単な防御策です。
通信の保護
サイト全体を常時HTTPSにして証明書を自動更新します。HSTSを設定すると安全な接続が強制されます。外部サービスを使う際はTLS対応を確認してください。
ホスティングとネットワーク防御
信頼できるホスティングを選び、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)やDDoS対策サービスを組み合わせます。ファイアウォールで不要なポートを閉じ、管理画面は管理者用ネットワークのみからアクセスできるようにします。
ファイル権限とセキュリティヘッダ
公開ディレクトリの書き込み権限は最小限に抑え、phpファイルの直接実行を制限します。Content-Security-PolicyやX-Frame-Optionsなどのセキュリティヘッダを設定してください。
定期検査とログ
自動スキャンで脆弱性を検出し、更新後は機能確認を行います。アクセスログとエラーログを保存して異常を早期発見できるようにし、重要なイベントは通知する仕組みを作りましょう。
運用・監視面の対策
はじめに
運用と監視を整えることで、障害や攻撃を早期に発見し、被害を最小限にできます。ここでは実務で役立つ具体的な対策をわかりやすく説明します。
定期バックアップと復旧手順
- バックアップはファイルとデータベースの両方を分けて取ります。例:毎日業務データ、週次で全体コピー。
- 復旧手順は誰が何をするかを明記し、定期的にトライアル復旧を行います。テストで復元時間や漏れを検証してください。
アカウントと権限管理
- 管理者権限は必要最小限に留めます。編集だけの担当者に管理者権限を渡さないでください。
- 退職者や外部委託のアカウントは速やかに無効化・削除します。リストを作り定期的に見直してください。
ログと脆弱性監視
- ログイン履歴、エラーログを週次でチェックし、異常なアクセスはすぐ調査します。
- セキュリティプラグインやスキャナを導入し、自動で脆弱性を検出して通知を受け取ります。
インシデント対応訓練と報告体制
- インシデント発生時の連絡先と役割を明確にします。想定ケースで机上訓練や実地訓練を行ってください。
- 発生後は原因と再発防止策を文書化し、関係者へ共有します。ログやバックアップの記録を保存しておくと復旧が容易です。
CMS選定時に見るポイント
アップデート体制
CMSは定期的なセキュリティパッチ提供と長めのサポート期間が重要です。自動更新に対応しているか、緊急パッチの配布実績があるかを確認してください。
– 確認項目:更新頻度、サポート期限、自動更新の可否、過去の脆弱性対応履歴
権限管理
運用チームの人数や役割に合わせて細かく権限を分けられるかを見ます。ロール単位だけでなく、記事の公開や設定変更など操作ごとに制御できると安全です。
– 確認項目:ロールベース権限、操作単位の許可設定、監査ログとの連携
セキュリティ機能
2段階認証、WAFやIP制限、接続の暗号化、ログ監査など基本機能があるかをチェックします。外部サービスと連携できれば侵入対策が強化できます。
– 確認項目:2FA対応、WAF連携、IP制限、アクセスログと改ざん防止
運用サポート
導入時や障害時に頼れるかが重要です。ドキュメントの充実度やサポート窓口の対応時間、SLAの有無を確認してください。ベンダーの導入支援や教育サービスも評価基準になります。
– 確認項目:ドキュメント量、サポートチャネルと応答時間、導入支援の有無












