はじめに
オウンドメディアは自社の情報発信で顧客を育てる強力な手段です。しかし、多くの企業で施策が期待通りの成果を出せず、時間とコストを無駄にするケースが見られます。本書は、そんな失敗を未然に防ぐために作りました。
目的
本章では、オウンドメディア施策が失敗しやすい理由を分かりやすく示し、この先の章で扱う「失敗パターン」「検索キーワード設計の落とし穴」「改善のポイント」への導入を行います。
対象読者
マーケティング担当者、コンテンツ制作に関わる方、経営者まで、オウンドメディアで効率よく成果を出したい方を想定しています。経験の有無を問わず読める内容です。
失敗が起きる典型例(具体例)
・キーワード調査をせずに記事を量産し、アクセスが集まらない。
・社内の専門用語だけで書き、読者に伝わらない。
・運用設計があいまいで継続できず、更新が途切れる。
このような無駄を早い段階で見つけることで、リソースを守り成果につなげられます。次章からは、実際の失敗パターンを詳しく見ていきます。
よくある失敗パターン
目的・KPIが曖昧なまま始める
目的や達成すべき指標を決めずに記事を作ると、成果が測れません。例えば「アクセス増やしたい」とだけ決めると、集めたユーザーが顧客につながるか不明です。最初に目標(問い合わせ数、資料請求、CVRなど)を決めましょう。
競合が強すぎる/需要のないキーワードを狙う
検索ボリュームがほぼゼロの語や、大手しか勝てない人気キーワードを狙うと労力が無駄になります。具体例:新規サイトが「○○の総合情報」などビッグワードで上位を目指すのは非現実的です。ニッチで意図の明確なキーワードを狙って段階的に伸ばしましょう。
記事更新が止まり社内ブログ化する
更新頻度が落ち、古い情報だけが残るとユーザーの信用を失います。社内の限られた人だけが書いて形式化すると外部価値が下がります。編集フローを簡素化し、外部ライターや他部署と協力して継続しやすくしましょう。
アクセスは増えても導線がない
アクセス数が伸びても問い合わせや購入に結びつかなければ意味が薄いです。例:商品レビューだけで購入リンクや比較表がない場合。明確な導線(CTA、ランディングページ、フォーム)を設置してください。
自社視点の宣伝寄りでユーザー課題を解決できていない
自社メリットばかり書くと信頼を失います。ユーザーの悩みを先に理解し、解決策を提示してから自社解決策を紹介する流れが有効です。
SEO依存でアルゴリズム変動に弱い構造になる
検索アルゴリズムにのみ頼ると変動で流入が激減します。直帰率や滞在時間を改善するコンテンツ改善、SNSやメールなど別チャネルの並走でリスク分散しましょう。
検索キーワード設計の落とし穴
ビッグワードばかり狙うリスク
検索ボリュームが大きい言葉(ビッグワード)は魅力的ですが、上位表示に時間と費用がかかります。競合が多いため、短期で成果を出せず早期撤退になりやすいです。例えば「婚活」「転職」などは競争が激しく、まずは地域+属性などの複合語で狙う方が現実的です。
検索意図を整理しないで決める問題
ユーザーの意図(知りたい、比較したい、買いたい)を考えずキーワードを選ぶと、商談につながらないコンテンツが増えます。たとえば「導入事例」を探す人には具体的なケースを示す記事が必要です。意図別にコンテンツの型を決めてからキーワードを選んでください。
自社商品名や業界用語に偏る怖さ
社内で使う商品名や業界用語だけを並べると検索されにくくなります。一般の検索者は馴染みのない略語や専門語を使いません。商品名は補助ワードにして、一般的な表現や課題解決の言葉をメインにしましょう。
小さな工夫で回避できる点
・ロングテール(複合語)を組み合わせて着実に流入を増やす。
・検索意図別にページを分け、CTAを最適化する。
・実際の検索語(サイト内検索やサーチコンソール)を定期的に確認する。
次章では、これらの失敗を避ける具体的なポイントを詳しく説明します。
失敗を避けるためのポイント
目的から設計する手順
施策は目的から組み立てます。まず何を達成したいか(例:資料請求や購入増加)を決め、KPI(定量目標)を設定します。次にターゲット層を明確にし、扱うテーマ領域を定めます。最後にキーワード群を割り当てます。例:目的「購入増加」→KPI「月間CV10件」→ターゲット「30〜40代のランナー」→テーマ「ランニングシューズ選び」→キーワード群。
キーワード選びの実務ポイント
軸は3〜6か月で追える現実的なキーワードにします。短期で効果が出る語を優先しつつ、将来伸びるビッグワードを少しずつ仕込みます。具体的には短期ワード:地域名+商品、ニッチな悩み、長期ワード:一般名詞やブランド名。キーワードは検索意図を想像して分類してください。
記事ごとに解決する悩みとステップを決め、CTAを設置
各記事は「読者が抱える悩み」と「解決までのステップ」を明確に書きます。記事末には行動を促すCTAを置きます。例:詳しい比較表のダウンロード、無料相談の申し込み、商品ページへの誘導。CTAはターゲットと記事の段階(認知・比較・購買)に合わせて変えます。
更新が回らないときの対応
更新が追いつかない場合は外部ライターや運用代行を活用します。ただし品質管理を怠らないでください。テンプレート、掲載基準、簡潔なブリーフを用意し、納品チェックリストで確認します。定期的に編集会議を設けて方針を共有すると安定します。
実践チェックリスト
- 目的→KPI→ターゲット→テーマ→キーワードの順で設計
- 3〜6か月で効果が出るキーワードを軸に、将来ワードも配置
- 各記事に解決すべき悩みと明確なステップを設定
- CTAを記事の段階に合わせて設置
- 更新が回らない場合は外注とQA体制を用意
この順番と運用ルールを守れば、設計段階の失敗を大きく減らせます。
失敗キーワードを避けるコツ
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はじめに
検索ボリュームだけで決めず、自社の強みと見込み客ニーズが重なる領域に絞ることが大切です。具体的な強みを洗い出し、それに合うキーワードを選んでください。 -
強み×ニーズで絞る手順
- 自社の強みを3つに絞る(例:導入支援、低コスト、専門性)。
- 見込み客の課題を3つ書き出す(例:導入の不安、予算、機能選定)。
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両者が交わるキーワードを優先します(例:「導入サポート付き 会計ソフト 中小企業」)。
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検索フェーズを分ける
情報収集フェーズ(〜〜とは、メリット)と比較検討フェーズ(比較、料金、評判)に分け、後者には問い合わせ・資料請求導線を強化します。ランディングページや比較表で導線を明確にしてください。 -
競合が多い場合の差別化
切り口(用途別、業種別)やフォーマット(事例動画、テンプレート配布、チェックリスト)で独自性を出します。表現を細くしてロングテールを狙うと有効です。 -
実践チェックリスト
・キーワードを強みマップと照合する
・情報/比較を分けたコンテンツ設計
・比較フェーズに明確なCTAを設置
・効果測定を週次で見て微調整する
この順で進めると、無駄な競合キーワードを避けつつ狙いたい見込み客に届きやすくなります。











