はじめに
この章では、本書の目的と読み方をやさしく説明します。
本書の目的
この文書は、AWSのコストを「調べる」「下げる」ために役立つ代表的なキーワードを目的別に整理したガイドです。料金の仕組み、代表サービス別のコスト、可視化・分析ツール、削減ノウハウ、日本語情報の5つのカテゴリに分けて紹介します。例えば「EC2の時間課金」や「S3の保存料金」といった具体例を交えて解説します。
誰に向いているか
- AWSを使い始めたエンジニアや運用担当者
- コストが気になるチームリーダー
- 初めて料金を見直す経営者
簡潔なキーワード集として活用できます。
本書の使い方
各章を必要に応じて参照してください。まずは料金の仕組みを理解し、その後でサービス別やツール、最適化手法を順に読むと効果的です。用語は最小限にし、具体例で補足しています。
注意点
料金は利用状況で変わります。ここで紹介するキーワードは調査と対策の出発点としてご利用ください。
料金の仕組みを知りたいとき
料金の基本
AWSの多くのサービスは従量課金です。使った分だけ請求され、単位は時間やGB、リクエスト数などサービスごとに異なります。まず「何が単位か」を把握することが大切です。
主な課金モデル
- オンデマンド:必要なときに使い、使った分だけ払います。短期間や試験用途に向きます。例:1時間単位での仮想サーバ
- リザーブド(予約):一定期間(1年・3年)を前払いまたは割引で確保します。継続利用が見込める場合に有利です。
- スポット:余剰のリソースを大幅に安く使えます。割り切ったバッチ処理向けで、中断される可能性があります。
料金計算機の簡単な使い方
- AWS Pricing Calculatorにアクセス
- 使用するサービス(例:EC2、S3)を選ぶ
- リソース数・時間・ストレージ容量・転送量を入力
- 見積もりを保存して比較
具体的に数値を入れると、月額の想定コストが見えます。
実用的な注意点
- データ転送は意外に高くなるので、送受信量の見積もりを忘れないでください。
- 無料枠や割引(リザーブド・Savings Plans)を活用すると削減できます。
- タグでリソースを整理し、請求レポートやアラートを設定すると管理しやすくなります。
代表サービス別のコスト
EC2(仮想サーバ)の料金計算方法
EC2はインスタンスタイプ(vCPU・メモリ)、稼働時間、ストレージ(EBS)、データ転送で料金が決まります。課金は秒単位または時間単位が基本で、オンデマンド・スポット・リザーブド・セービングプランで単価が変わります。簡単な計算式:
料金 = インスタンス単価 × 稼働時間 + EBS容量×単価 + データ転送費
例:t3.smallを1か月使う想定で、稼働時間とEBS容量を掛け合わせて合計を出します。
S3(オブジェクトストレージ)とストレージクラスの違い
S3は保存容量、リクエスト数、データ取り出しに費用がかかります。標準は頻繁アクセス向け、Infrequent Accessは保存費が安く取り出しに費用、Glacier系は長期保管向けで取り出し遅延や取り出し費用が発生します。選ぶクラスで月額が大きく変わります。
RDS(マネージドDB)とリザーブドインスタンス
RDSはインスタンス、ストレージ、I/O、バックアップ保持に費用がかかります。ライセンス形態も影響します。リザーブド(予約)を使うと1年・3年の前払いで大幅に割引されます。可用性やスナップショット頻度もコストに直結します。
Lambda(サーバーレス)の料金モデル
Lambdaは実行時間×割り当てメモリ(GB秒)とリクエスト数で課金します。プロビジョンドコンカレンシーやログ保存で別途費用が発生します。計算式:
料金 = GB-秒 × 単価 + リクエスト数 × リクエスト単価
例:128MBで100msの処理を100万回実行した場合、GB-秒を求めて合計を出します。
コスト可視化・分析ツール
AWS 請求ダッシュボード(Billing Dashboard)
請求ダッシュボードは総額を素早く把握するのに有効です。月別の請求額やサービス別割合をグラフで表示します。まず、期間を先月や過去30日間に切り替え、サービスやアカウントで絞り込んでください。例:EC2が高いならインスタンス台数とリージョンで絞ると原因が見えます。
AWS Cost Explorer の使い方
Cost Explorerは詳細な分析に向きます。タグ、サービス、使用量単位(時間・GBなど)で可視化できます。手順例:
1. レポート作成で「サービス別 月次」を選ぶ
2. タグ(例:環境=prod)でフィルタ
3. グラフの粒度(日次・月次)を切り替え
予測機能で今後の見込みも把握できます。リソース単位での傾向把握に便利です。
コストアラートの設定方法(Budgets & SNS)
- Budgetsで予算(金額・使用量)を作成
- 閾値(予算の80%など)を設定
- 通知先にメールやSNSトピックを指定
例:月間EC2費用が$200を超えたら管理者にメールを送る設定ができます。アラートは早期発見に役立ちます。
AWS Trusted Advisor のコスト最適化チェック
Trusted Advisorの「コスト最適化」チェックは無駄なリソースや過剰な性能を指摘します。代表的な指摘例は「未使用のEBSボリューム」「サイズが大きすぎるインスタンス」「Reserved Instanceの未利用」です。指摘を優先度で確認し、まずコストインパクトが大きい項目から対応してください。
ポイントまとめ:タグ付けを徹底し、Cost Explorerで日次把握→予算アラートで即対応→Trusted Advisorで定期的に見直す、を習慣化すると管理が楽になります。
コスト削減・最適化ノウハウ
概要
AWSのコスト最適化は「見る」「測る」「改善する」の順で進めると効果的です。初めに支出の内訳を可視化し、無駄を見つけて段階的に改善します。
AWS コスト最適化ベストプラクティス
- 可視化:タグ付けとコストレポートで部門やサービス別に把握します。具体例:プロジェクトごとにタグを付け、月次レポートで比較します。
- Right-size:インスタンスやDBのサイズを実際の負荷に合わせます。負荷が低ければ小さいインスタンスに変更します。
- オートスケール:負荷に応じて自動で増減させ、無駄な常時稼働を減らします。
- ストレージ最適化:アクセス頻度でクラスを分け、S3のライフサイクルやEBSのスナップショット整理を行います。
- 一時的処理はSpotインスタンスを検討します。
AWS Savings Plansとは
Savings Plansは一定期間の使用量を前もって約束することでコンピュート料金を割引する仕組みです。EC2やFargate、Lambdaなどに適用でき、安定した利用が見込める場合に有効です。契約期間や柔軟性の違いで選びます。
AWS RI(Reserved Instances)のコスト効果
Reserved Instancesは特定のインスタンスタイプやリージョンで割引を受ける方法です。長期で同じ構成を使うサーバーに向きます。利点は割引率、欠点は変更の制約です。可変負荷の部分はオンデマンドや自動スケールで補います。
コスト削減の実例
- バッチ処理をSpotに移行して運用コストを抑えた例
- 常時稼働するWebサーバーをRI/Savings Plansで固定費を削減した例
- S3のライフサイクル設定で古いデータの保管コストを下げた例
実行手順(簡単)
- 可視化とタグ付け
- 利用状況の分類(常時・断続・一時)
- 優先度付けして施策を実施
- 効果測定とガバナンスの仕組み化
注意点
長期契約は割引が大きい反面、将来の変化で不利になることがあります。まずは可視化してから、段階的に導入してください。
日本語情報・最新動向を探したいとき
検索キーワードと使い方
- まずは具体語句で検索します。例:「AWS コスト 最適化 2025 日本語」「AWS コスト セミナー 資料」「AWS コスト 最適化 事例 日本企業」。日付や業種を追加すると絞り込みやすいです。
信頼できる情報源
- 公式ドキュメント(AWS公式ブログ、ホワイトペーパー)
- 大手クラウドベンダーやコンサル会社の技術ブログ
- 企業の導入事例ページや学会発表
日本企業の事例を探すコツ
- 事例検索では業種と規模(従業員数や月間利用量)を確認します。実際の削減率や前提条件が明記されている記事を優先します。
セミナー・資料・動画の探し方
- 「セミナー 資料」「スライド」「YouTube 講演」などで検索します。イベント名や主催者名で絞ると見つかりやすいです。
情報の最新性とチェック方法
- 投稿日と検証日時を確認してください。料金体系やサービス仕様は頻繁に変わります。地域やリージョン差もチェックします。
継続的に追う方法
- RSS、メーリングリスト、技術コミュニティ(Connpass、Qiita、Twitter)を活用し、通知設定を行うと効率的です。












