はじめに
目的
本ドキュメントは、企業のWebサイトを守るための「Webセキュリティ製品」について分かりやすく整理したガイドです。製品の概要や導入メリット、代表的な製品の紹介、選定時のポイント、関連ソリューションまで順を追って解説します。
対象読者
- 企業の情報システム担当者や経営者
- セキュリティ製品を初めて検討するご担当者
- 既存対策の見直しを検討している方
専門知識がなくても読み進められるよう、用語は必要最小限に留め、具体例で補足します。
本書の範囲と構成
第2章でWebセキュリティ製品の役割と導入メリットを説明します。第3章で主要な製品を15件紹介し、それぞれの特徴を簡潔に示します。第4章では製品選定時の重要ポイントを3つに絞って解説します。第5章ではWeb以外の関連セキュリティソリューションについて触れます。
読み方のヒント
まず第2章で全体像を把握すると、その後の製品比較がわかりやすくなります。導入を検討する際は、自社の業務や予算、運用体制を基準に優先順位を付けてください。必要があれば技術担当と一緒に読み進めてください。
Webセキュリティ製品の概要と導入メリット
はじめに
Webセキュリティ製品は、企業のWebサイトやWebアプリケーションを守るためのツールです。攻撃者は入力欄や通信経路を狙うため、適切な対策を備えることが重要です。簡単な例を交えてわかりやすく説明します。
Webセキュリティ製品とは
Webアプリを狙う脅威を検知・防御するソフトやサービスです。代表例は以下です。
– WAF(Webアプリケーションファイアウォール): 不正なリクエストをブロックします。たとえば、ログイン画面に不正なSQL文が送られる攻撃を遮断します。
– WAFに近い技術として、アプリ内部で動くRASP(実行時保護)があります。実行中に不審な動作を止めます。
– DDoS対策: 大量のアクセスでサイトを止められないように流量を制御します。
– ボット管理・レート制限: 自動ツールによる悪用を減らします。
– 脆弱性スキャン: コードや設定の弱点を見つけます。
具体的に防げる脅威(例)
- SQLインジェクション: データベースを不正に操作される攻撃
- OSコマンドインジェクション: サーバー上で任意の命令が実行される攻撃
- 改ざん・クロスサイトスクリプティング(XSS): 表示内容を不正に書き換えられる攻撃
- DDoS: サービスを使えなくする攻撃
導入メリット
- 資産保護: 顧客情報や売上データを守れます。被害を減らすことで事業継続につながります。
- 信頼性向上: セキュリティ対策があることで顧客や取引先の信頼を得やすくなります。
- 法令・規約対応の助け: 個人情報保護や業界基準の要求に応える一助になります。
- 運用効率化: 不正トラフィックを自動で遮断し、対応工数を減らします。ログから原因追跡もしやすくなります。
- コスト回避: 侵害発生時の復旧や罰則、信用失墜による損失を抑えられます。
導入の際に意識したいこと
導入前に守るべき範囲と運用体制を明確にしてください。対象を限定して試験的に導入し、ログやアラートの運用ルールを整えると、効果を出しやすくなります。
主要なWebセキュリティ製品15選
以下は市場でよく使われる主要なWebセキュリティ製品15選です。用途や予算に合わせて選べるよう、特徴と簡単な利用例を添えています。
- Cloudbric WAF+ — クラウド型WAF。ボット対策や不正アクセス防止を手軽に導入できます。小規模サイトに向きます。
- Imperva WAF — エンタープライズ向け。高精度ルールと詳細なログを提供し、カスタム見積で導入します。
- AWS WAF — AWSサービスと連携するWAF。ルールを柔軟に設定でき、従量課金で使いやすいです(例:ALBやCloudFrontに適用)。
- PrimeWAF — 日本市場向けの製品で、サポート体制が整っています。オンプレやクラウドで選べます。
- BLUE Sphere — オールインワン型。WAFに加えてボット管理やDDoS防御を一括で管理できます。
- Scutum — WAFとCDNを組み合わせたサービス。応答速度改善と攻撃防御を同時に実現します。
- SmartConnect Network & Security — ネットワーク統合型の製品で、社内ネットワークと連携して保護します。
- AIONCLOUD WAAP — WAFに加えAPI保護まで対応。APIを公開するサービスに適します。
- マネージドWAFサービス — 運用を委託するタイプ。ルール調整や監視を専門業者に任せたい場合に有効です。
- SiteGuard Cloud Edition — 国産のクラウドWAF。導入が簡単で国内サポートが充実しています。
- イージスWAFサーバセキュリティ — サーバ側からの保護を重視し、ログ分析で侵入兆候を検出します。
- FortiWeb — Fortinet製のWAF。既存のネットワーク製品と統合しやすく、ハイブリッド運用に向きます。
- Barracuda Web Application Firewall — 中堅企業向けで管理画面が分かりやすく、コストも比較的抑えられます。
- F5 Advanced WAF — 高度な攻撃検知と細かなトラフィック制御が可能で、大規模サイトに適しています。
- Cloudflare WAF — CDNと一体のWAF。ルール反映が速く、無料プランでも基本的な防御を提供します。
Webセキュリティ製品の選定における3つのポイント
1) 必要なセキュリティ機能の確認
まず守りたい資産(Webサイト、API、管理画面など)を明確にします。よく使われる機能はWAF(不正なリクエストの遮断)、DDoS対策(大量アクセスの緩和)、改ざん検知(ファイルやページの変更通知)、ボット対策、TLS終端、API保護です。例えばECサイトなら決済周りの改ざん検知と不正注文対策を優先します。
2) 導入・運用のしやすさ
クラウド型は導入が早く自動更新が多い一方、オンプレは細かな制御ができます。管理画面の見やすさ、ログの取り出しやすさ、アラートの設定、運用手順書の有無を確認してください。サポート体制(日本語対応、平日夜間の対応可否、SLA)も重要です。運用担当者が少ない場合はマネージドサービスを検討すると負担が軽くなります。
3) 価格と予算の適合性
初期費用と月額費用のバランスを見ます。通信量やリクエスト数で課金される製品は、季節変動のあるサービスではコストが増えやすいです。スケールに応じた料金体系か、必要に応じて一時的に上限を設定できるか確認してください。無料トライアルやPOCで実運用に近い試験を行うと、隠れたコストを発見できます。
■ 購入前の簡単チェックリスト
– 守る対象と優先度は定義してあるか
– 管理負荷は現状で対応可能か
– 長期的なコストを見積もっているか
これらの観点で比較すると、自社に合った製品を選びやすくなります。
関連するセキュリティソリューション
概要
Webセキュリティに加えて、端末側の防御も重要です。エンドポイントセキュリティ製品(例:ESET PROTECT Entry、Trend Micro Apex One、Symantec Endpoint Security、Microsoft Defender for Endpoint)やEDR(Endpoint Detection and Response)は、マルウェアやランサムウェアの阻止、異常検知に役立ちます。
代表的な役割と機能
- マルウェア検出とブロック:ウイルスや不正プログラムを端末で止めます(例:ファイルスキャン、動作監視)。
- 振る舞い検知(EDR):通常と異なる動きを自動で見つけ、管理者に通知します。
- 隔離と復旧:感染した端末をネットワークから切り離し、感染前の状態へ戻す支援をします。
Webセキュリティとの連携
アラートを相互に連携させると早く対応できます。例えば、Webゲートウェイが疑わしいダウンロードを検出したら、EDRが即座に該当端末を調べて隔離します。こうした連携で被害を最小限にできます。
導入と運用のポイント
- 中央管理とログの一元化:監視を楽にし、相関分析をしやすくします。
- 自動対応ルール:初動を自動化すると対応時間を短縮できます(ただし誤検知対策は必須)。
- 定期的な検証:攻撃想定のテストで運用手順を確認してください。
選定の目安
検出速度、誤検知の少なさ、既存環境との互換性、運用負荷の軽さを重視してください。小規模なら管理が簡単な製品、中〜大規模なら連携機能や運用自動化を重視すると良いです。












