はじめに
調査の目的
本調査は、プラチナを使ったアクセサリーの製造と加工について、実務的で分かりやすい情報を提供することを目的とします。職人や趣味で作る方、学ぶ学生など幅広い読者を想定し、手順や注意点を具体例で示します。
調査の範囲
本書は以下の内容を扱います:プラチナアクセサリーの基本的な製作プロセス、製錬・精錬工程、鍛造による硬度向上、溶かして造る指環(鋳造)の方法。日常の道具や小規模な工房での応用を意識しています。
プラチナの特徴(簡単な説明)
プラチナは金や銀と比べて比重が大きく、丈夫で変形しにくい金属です。融点が高めなので、溶かしたり加工したりする際は温度管理と安全対策が重要です。
本書の読み方
各章で手順と理由、注意点を順に説明します。専門用語は最小限にとどめ、図や具体例で補足します。初心者でも段階を追って理解できるよう配慮しています。
プラチナアクセサリーの基本的な製作プロセス
1. 地金加工
まず設計図やスケッチに沿って地金(プラチナの板や線)に下書き線を入れます。糸鋸やプラチナ専用の切断工具で余分な部分を切り出し、ピンセットやヤスリで大まかな形に整えます。例えば指輪の幅を決めるときは、予め幅の印をつけてから切断すると狂いにくいです。
2. 焼きなまし
切削で硬くなった地金をバーナーで加熱し、柔らかくします。これを焼きなましと呼び、曲げや成形を行うために必要です。熱の入れ方は局所的に行い、急冷せずに自然に冷ますと割れにくくなります。
3. ロウ付け(結合)
パーツ同士をつなぐ工程です。プラチナ用のロウや溶接、近年はレーザー溶接も使われます。接合面をきれいにし、ロウを適切に配置してから加熱すると、隙間の少ない強い接合ができます。
4. 成形と下地処理研磨
接合後はリングの丸みや表面の凹凸を整えます。ヤスリ、リューター、研磨紙を順に使い、粗い目から細かい目へと段階的に研磨します。ここで形を決めると最終仕上げが楽になります。
5. 最終仕上げ
最後に布バフや研磨剤で鏡面に仕上げます。つや消し(マット)やヘアライン仕上げなど希望の表面処理を施して完成です。小さな傷は最後に磨くことで目立たなくなります。
安全と注意点
プラチナは高温で扱うため換気と耐熱手袋、保護眼鏡を必ず使ってください。ロウ付け時はロウの種類を間違えると接合不良になるので、素材に合ったものを選びます。経験を積むことで手早く安全に作業できるようになります。
プラチナの製錬と精錬プロセス
概要
プラチナはまず製錬で鉱石やスクラップから不純物を取り除き、続いて精錬で化学的・電気的に高純度化します。この章では工程ごとに分かりやすく説明します。
原料の前処理
鉱石は選別・粉砕し、浮選や磁選で濃縮します。リサイクル品は溶剤や酸で有機物を落としてから金属成分を分離します。前処理でゴミを取り除くことが後工程を効率化します。
製錬(溶融と除去)
濃縮物を高温で溶かし、銅や鉄などの金属をスラグとして分離します。ここで得られるのは粗いプラチナ塊(スポンジやインゴット)で、まだ他の貴金属や不純物が残ります。
精錬(化学的手法)
粗プラチナを塩素や酸で溶かし、塩化プラチナ酸などの化合物に変えます。アンモニウムを加えて沈殿させ、還元して金属プラチナに戻す方法が一般的です。こうして非常に純度の高い粉末や塊を作れます。
精錬(電解法)
塩化プラチナ酸の溶液を電解すると、陰極に純プラチナが析出します。電解は不純物を効率よく除き、99.95%以上の純度を得るのに適しています。
品質管理と後処理
化学分析やX線蛍光(XRF)で純度を確認します。ジュエリー用には粒度や形を整え、必要に応じて合金して色や硬さを調整します。
鍛造加工によるプラチナの硬度向上
鍛造とは
鍛造は加熱したプラチナをハンマーやプレスで叩き、圧力をかけて形を整える技法です。温めることで金属が柔らかくなり、叩くことで粒子が詰まって強くなります。職人がリングやバングルの輪郭を作るときに使います。
具体的な工程(わかりやすく)
- 加熱:炉やバーナーで適温に加熱します。温度は扱う厚さで変わりますが、過度に熱すると柔らかくなりすぎるため注意します。
- 叩く:金床の上でハンマーやプレスで圧力をかけます。均等に力を入れると形が整いやすくなります。
- 焼きなまし:叩いて硬くなった部分を再び加熱して内部の応力を抜きます。これを何度も繰り返します。
硬度と耐久性が上がる理由
叩くことで金属内部の組織が細かくなり、密度が増します。その結果、傷つきにくく曲がりにくい性質になります。重みのあるしっかりした感触や、研磨で増す光沢も得られます。
仕上げと研磨
鍛造後は表面を研磨して滑らかに整えます。細かなキズを落とすことで光沢が増し、長く美しさを保てます。指輪なら内側も丁寧に磨くと着け心地が良くなります。
注意点とおすすめ
- 温度管理が重要です。高すぎると形が崩れ、低すぎると割れが生じます。
- 力をかけすぎると亀裂が入るので段階的に行います。
- 焼きなましを怠ると内部に応力が残り、後で変形することがあります。
鍛造は手間がかかりますが、丁寧に行えば耐久性と風合いが大きく向上します。
溶かして造る指環の製作方法
材料と準備
既存のプラチナアクセサリーをリメイクする際、まず石や装飾を外し、純粋なプラチナだけを用意します。高温バーナーや坩堝(るつぼ)、耐熱手袋、保護眼鏡、換気設備を準備してください。安全第一で作業することが重要です。
溶解と塊作り
プラチナをバーナーで加熱し、完全に溶かします。溶けた金属を坩堝から取り出し、一度塊に凝固させます。これにより均一な素材になります。小さな不純物があれば取り除きます。
叩いて伸ばす工程
塊を金槌と鍛造台で叩いて伸ばします。叩くことで内部の密度が上がり堅くなります。適当な厚さと幅まで伸ばしたら、リング状に丸めていきます。指のサイズに合わせて慎重に調整してください。
切れ目の繋ぎと仕上げ
リングの端に小さな切れ目がある場合は、バーナーで再び溶かして接合します。接合部をヤスリで整え、研磨布やバフで磨いて光沢を出します。必要ならロジウムめっきなどで色調を整えます。
費用と重さの目安
シンプルなデザインの加工代は約33,000円が目安です。重さはメンズで約20g、レディスで約8gが一般的です。素材やデザインで変わるため、事前に見積もりを取りましょう。












