はじめに
本書の目的
この文書は、Webサイトのアクセス解析でよく使われる「直帰率」について、基本から実務での活用まで分かりやすくまとめたものです。用語の定義や計算方法、業界別の目安、Google Analytics 4(GA4)での確認方法、そして直帰率が高い場合の考え方を扱います。
なぜ直帰率が大切か
直帰率は訪問者が最初のページだけ見て離れる割合を示します。例えば、商品ページを見て何もアクションを起こさず離れたとき、そのページの直帰にカウントされます。ユーザーの関心や導線の問題を把握する手がかりになるため、改善点を見つけやすくなります。
誰に向けた内容か
サイト運営者、マーケター、コンテンツ作成者、または解析を始めたばかりの方に役立つ内容です。専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明します。
この先の構成
第2章から第8章まで順に、基礎知識からGA4での実務的な確認方法、改善の考え方まで詳しく説明します。各章を読み進めることで、直帰率を実際の改善に活かせるようになります。
直帰率とは何か
定義
直帰率(バウンスレート)は、ユーザーが最初に見たページ(ランディングページ)だけを見てサイトを離れる割合です。つまり、他のページへ移動せずにセッションが終わる場合を指します。
わかりやすい例
会社に来たビジネスマンが用件だけ済ませてすぐ家に帰る状態を「直帰」と例えると分かりやすいです。一方で、別の取引先に寄ってから帰るのが「離脱」とは異なる概念です。
具体的なイメージ
例えば100人があるページに来て、そのうち40人が他のページへ行かずに離れると、直帰率は40%です。高ければ必ず悪いわけではなく、ページの目的により評価が変わります。
直帰が起きやすい場面
- 問い合わせや電話番号だけを確認するページ
- 記事を読んで満足して離れるブログ記事
- 間違った流入(期待と違う内容)
- 表示が遅くて離脱する場合
次章では直帰率の具体的な計算方法を説明します。
直帰率の計算方法
計算式
直帰率は非常にシンプルです。次の式で求めます。
直帰率 = 直帰セッション数 ÷ 全セッション数 × 100
ここで「直帰セッション」とは、ユーザーが最初のページだけを見てサイトを離れたセッションを指します。
具体例
- 例1: サイト訪問者が100人で、そのうち40人が最初のページだけ見て離れた場合、直帰率は40%です。
- 例2: ブログのページAに10人訪問し7人が離脱した場合、直帰率は70%です。
注意点(見方のポイント)
- 単に1ページ見ただけで離れた場合が直帰です。ページ内でスクロールやクリックなどのイベントを計測していると、イベントが発生すれば直帰にならない場合があります。
- セッションの定義(例えば30分の無操作でセッションが切れる等)により数値が変わることがあります。
- 集計期間や流入元ごとに分けて計算すると、原因の特定に役立ちます。
実務での使い方
- 同じ期間・同じページ群で比較して問題のあるページを見つけます。2. 流入元(検索・SNS・広告)ごとに直帰率を比較します。3. 高い場合はコンテンツや導線を改善して再測定します。
直帰率と離脱率の違い
定義
- 直帰率(Bounce Rate)は「直帰数 ÷ セッション数」です。訪問者が最初に入ったページだけ見てサイトを離れたときに直帰が発生します。ランディングページごとの指標として使います。
- 離脱率(Exit Rate)は「離脱数 ÷ ページビュー数」です。特定のページがセッションの最後に見られた割合を示します。ページ単位の終端行動を測ります。
具体例で見る違い
- 例(離脱率): ページAのPVが100、別ページへ移ったのが60、サイトを離れたのが40なら、ページAの離脱率は40 ÷ 100 = 40%です。
- 例(直帰率): 同じページAをランディングにしたセッションが50あり、そのうち30が他のページに移らず離脱したら直帰率は30 ÷ 50 = 60%になります。
見方と使い分け
- 直帰率は「最初の印象」やランディングページの適合度を評価します。広告や自然検索から来るページのパフォーマンス確認に向きます。
- 離脱率はページの離脱ポイントを特定します。記事の読了や注文完了など、離脱が必ずしも悪いとは限りません。
改善のヒント
- 直帰率を下げるには、導線を明確にして次の行動(CTA)を示します。読み込み速度やスマホ表示も改善します。
- 離脱率が高いページは内部リンクや関連コンテンツで次の行動を促してください。最後のページなら期待される離脱かどうか確認します。
業界別の直帰率の目安
概要
直帰率の「良し悪し」は業界やページの目的で大きく変わります。ここでは一般的な目安と、その解釈例を分かりやすく説明します。
代表的な目安
- ECサイト:20〜45%(商品一覧や購入導線が明確であれば低めが望ましい)
- コンテンツ(ブログ・ニュース):35〜60%(記事を読んで離脱することが多く、高くても必ずしも悪いわけではない)
- LP・ポータルサイト:60〜90%(一枚構成のLPや検索結果型のポータルは直帰が高くなりやすい)
具体例での解釈
- ECのある商品ページで直帰率が50%なら回遊や購入導線を見直す余地があります。例えば、関連商品リンクやレビュー表示で改善できます。
- ブログ記事で直帰率が70%でも、滞在時間が長ければ読了して離脱した可能性が高く、必ずしも問題ではありません。
注意点と測定のコツ
直帰率だけで判断せず、滞在時間・コンバージョン率・流入経路ごとに分けて見てください。モバイルとPCで差が出ることも多いので、デバイス別の比較も行いましょう。
業界別改善の短いヒント
- EC:ページ速度の改善、明確な購入ボタン
- コンテンツ:関連記事や内部リンクの強化
- LP:訴求の絞り込み、ファーストビューの改善
これらを基準に、自社の過去データと照らし合わせて最適値を探してください。
Google Analytics 4(GA4)での直帰率の定義と確認方法
定義(簡単な説明)
GA4での直帰率は「エンゲージメントのなかったセッションの割合」です。エンゲージメントとは次のいずれかを満たすセッションを指します:
– ページ滞在時間が10秒以上
– コンバージョンイベントが発生
– 2ページ以上のページビュー
これにより、単に1ページだけ見て短時間で離れたセッションを直帰と判断します。
計算式
直帰率(%)= 100% − エンゲージメント率(%)
例:エンゲージメント率が75%なら直帰率は25%です。
GA4での確認手順(基本)
- GA4プロパティにログインします。
- 左メニューから「レポート」→「エンゲージメント」→「概要」を開きます。
- 表示される指標の中に「エンゲージメント率」や「直帰率」があります。見当たらない場合はレポートをカスタマイズします。
レポートに直帰率を追加する方法
- 「探索(Explore)」を使う:新しい探索を作成し、指標で「直帰率」を追加するとページ別や集客別に確認できます。
- 標準レポートを編集する:レポート右上の「カスタマイズ(編集)」で表示する指標に「直帰率」を追加します。
見方のポイント
- 直帰率は単独では判断しづらいので、平均滞在時間やコンバージョン率と合わせて見てください。
- ページごとに目的が異なるため、目安はページの役割で変わります(情報提供ページは滞在時間重視、ランディングページは導線重視)。
必要なら、実際の画面操作をより詳しく図解付きで説明します。どのビュー(全体・ページ別・集客別)を見たいか教えてください。
直帰率が高い場合の考え方
まず目的を確認する
直帰率だけで良し悪しを判断しないでください。ランディングページ(LP)やポータルサイトでは、訪問者が必要な情報を得てすぐ離脱する想定があり、60〜90%でも問題ないことがあります。一方でECや記事サイトなら、購入や他ページ遷移を期待するため高い直帰率は注意信号です。
原因を絞るためのチェックリスト
- 流入元の確認:広告や検索意図が合っているかを見ます。具体例:広告がセールを謳っていて、リンク先が情報ページならミスマッチです。
- ページの読み込み速度:画像やスクリプトが遅いと離脱します。
- モバイル表示:スマホで見にくくないか確かめます。
- コンテンツの期待値:見出しと本文が一致しているか確認します。
改善の具体案
- CTAを目立たせる(例:購入ボタンをスクロールで追従させる)
- 初速で重要情報を提示する(最初の画面でメリットを伝える)
- 内部リンクや関連記事を設置し回遊を促す
- 不要な要素を減らし操作を単純化する(フォームを簡潔に)
テストと検証
A/Bテストやヒートマップを使い、小さな変更を検証します。改善は一度で終わらず、数値とユーザー行動を見ながら段階的に進めてください。
まとめ
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直帰率は「直帰セッション数 ÷ 全セッション数 × 100」で求める基本的な指標です。ページ単位やサイト全体の訪問の“最初の行動で離脱した割合”を示します。
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目安は業界やページ目的で変わります。例えばブログは高め、ECは低めが理想です。自サイトの目的に合わせて目標値を設定してください。
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GA4では従来の直帰率の定義と異なり、エンゲージメント率を基に間接的に算出します。この違いを理解すると誤った改善を避けられます。
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直帰率だけで判断せず、ページ滞在時間、コンバージョン、離脱ページなどと合わせて分析しましょう。改善はコンテンツの明確化、読みやすさ向上、導線改善など実行しやすい施策から始めると効果的です。
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最後に、定期的にデータを見直して仮説検証を繰り返してください。目標と手段を明確にすると改善は着実に進みます。












