はじめに
目的
本資料は、BtoB企業がオウンドメディアを運営する際に役立つ成功事例を分かりやすくまとめることを目的としています。実際の企業事例を通じて、狙い・体制・成果・鍵となった工夫を具体的に示します。
本書の対象
・オウンドメディア運用の責任者や担当者
・マーケティングや採用に関わる経営層
・これからメディアを始めようと考えている中小企業
シンプルな言葉で説明しますので、専門知識がなくても読み進められます。
本資料の使い方
各事例は「目的」「実施したこと」「得られた成果」「学べるポイント」の順に整理します。目的は採用強化やリード獲得、教育・育成などに分け、実務に活かせる具体的な施策を提示します。数値や成果の見せ方を重視し、すぐに試せるヒントを提供します。
事例の分類
本書では事例を3つに分類します:
1. ブランディング・採用強化型
2. 直接リード型
3. ナーチャリング・教育型
各タイプの特徴と、どのような企業に向くかを章ごとに詳しく解説します。
BtoB企業のオウンドメディア成功事例の全体像
概要
BtoBのオウンドメディアは、戦略的に設計・運用すると事業成長に直結する資産になります。本章では、成功事例を大きく3つのタイプに分け、その特徴と共通点をわかりやすく説明します。
3つのカテゴリ
- ブランディング・採用強化型:企業の価値観や働き方を伝え、認知や採用につなげる事例。社内文化の紹介や社員インタビューが有効です。
- 直接リード型:製品やサービスの問い合わせを直接増やすことを目的に、比較記事や導入事例を中心に配信します。
- ナーチャリング・教育型:見込み客の理解を深める教材的コンテンツを提供し、商談化を促します。ホワイトペーパーやオンラインセミナーが代表例です。
成功の共通要素
- 読者の課題に寄り添う明確なテーマ設定
- 継続的な配信と品質管理
- 社内外の協力体制(営業・技術・採用の連携)
計測と改善
PVや問い合わせ数に加え、滞在時間や資料ダウンロード率を指標にして改善します。小さな仮説検証を繰り返すことが重要です。
運用のポイント
- 最初に目的を一つに絞る
- ペルソナを具体化する
- 成果が出るまで最低6〜12ヶ月を目安に継続する
次章では各カテゴリの具体的な事例を詳しく見ていきます。
ブランディング・採用強化型の事例
概要
BtoBのオウンドメディアでブランド価値や採用力を高めた代表例を紹介します。どちらも短期のリード獲得だけでなく、中長期で企業イメージや学生・候補者との関係構築を重視しました。
OfferBox(i-plug)の取り組みと成果
OfferBoxは学生との“対話”を軸にコンテンツと接点設計を行いました。役員や若手社員のインタビュー、業務のリアルを伝える記事、学生の疑問に答えるFAQやイベントレポートを継続的に配信しました。学生が参加しやすいオンラインイベントやチャット機能で双方向コミュニケーションを強化し、企業側の採用ストーリーを丁寧に伝えました。その結果、前年同期比21.6%増の売上を達成し、採用の質と応募数が向上しました。
三菱重工「Spectra」の取り組みと成果
Spectraは自社技術が解く社会課題を軸に発信しました。複雑な技術も図解や動画で分かりやすく示し、現場の写真やプロジェクトのビフォー・アフターでインパクトを伝えました。外部専門家との対談や共同研究の紹介で信頼性を高め、企業の社会的価値を可視化しました。これにより企業ブランドの評価が向上し、取引先や採用候補者の注目を集めました。
成功の共通点と実務的な示唆
- ターゲットに寄り添うコンテンツ設計:学生・候補者の疑問に答える具体的な情報を増やしています。
- 双方向の接点を作る:記事だけでなくイベントやチャットで交流を促しました。
- 視覚化とストーリーテリング:専門性を噛み砕き、現場の人を通して伝えています。
- マーケと採用を連携:採用担当と編集方針を共通化して一貫したメッセージを発信しました。
これらは予算が大きくなくても実行できます。まずはターゲットの疑問を洗い出し、小さな対話の場を設けることから始めてください。
直接リード型の事例
概要
BtoBのオウンドメディアで最も直接的に成果が出るのがリード獲得型です。ここでは、記事や資料ダウンロードを通じて質の高い見込み客(リード)を獲得し、商談につなげた代表例を紹介します。
事例1:BOXIL(スマートキャンプ)
BOXILはプロダクト比較や導入事例を中心にコンテンツを設計しました。結果として質の高いリードを獲得し、商談化率が3倍以上に向上しました。ポイントは、比較表や導入フローといった購買判断に直結する情報を用意し、問い合わせへの導線を明確にした点です。
事例2:HubSpot Japan
HubSpot Japanはトピッククラスターモデル(ピラーコンテンツ+クラスター記事)を採用し、検索からの流入を大幅に増やしました。特に関連性の高いダウンロード資料を複数設置し、資料DL数が増加。目的別にコンテンツを整理し、見込み客の興味を深める導線を作りました。
事例3:契約ウォッチ(LegalOn Technologies)
契約ウォッチは法律に関する実務的な記事を継続的に発信し、PVを大幅に伸ばしました。単一のビッグワードで上位表示に成功し、そこからの流入で資料請求や問い合わせが増えています。専門性と分かりやすさの両立が功を奏しました。
共通の成功要因
・購買意欲の高いテーマを選ぶこと
・明確なCTA(資料DL・見積依頼)を記事内に置くこと
・コンテンツの体系化(関連づけ)で滞在時間と回遊を増やすこと
実践ポイント
- 読者の“次の行動”を想定してCTAを作る
- 無料で価値ある資料を用意してリードを獲得する
- 検索ニーズと購買ニーズを分けて記事を作る
これらを意識すると、オウンドメディアは直接的なリード獲得チャネルになります。
ナーチャリング・教育型の事例
概要
ナーチャリング・教育型は見込み客に価値ある情報を継続提供し、信頼を育てる手法です。短期間で契約に結びつけるよりも、中長期で関係を深める点が特徴です。
LIGの取り組み
LIGは定期的な記事更新と資料設計を強化しました。結果、資料ダウンロード数が34倍、受注額が9倍になりました。具体的には業界別の活用事例や導入手順を丁寧に解説し、読者が次の行動を起こしやすい導線を設けました。
キャップドゥー・ジャパンの取り組み
記事本数を増やし、テーマを細分化しました。これによりアクセス数が10倍以上になり、お問い合わせは30倍、売上は6倍に伸びました。専門知識を噛み砕いて説明することで、幅広い層の関心を引きました。
BizHintの取り組み
経営者向けに実務に直結する情報を提供し、信頼を獲得しました。メールやセミナーで段階的に深い内容を案内し、購買意欲が高まったタイミングで提案を出す流れを作りました。
成功の共通点と実践ポイント
・読者の課題に即した具体的コンテンツを作る
・更新頻度と質を両立する仕組みを作る
・ダウンロードやセミナーなど次の行動を明示する
これらを中心に設計すると、教育型は高い効果を生みます。
BtoC企業との比較による学び
はじめに
資生堂のSHISEIDO ONLINE STOREや「北欧、暮らしの道具店」は、顧客体験とコンテンツ設計で高い成果を出しています。これらからBtoBが学べる点を整理します。
1. 顧客体験を中心に据える
BtoCは商品購入の流れを丁寧に設計します。BtoBも契約までの体験(導入相談、導入後の支援)を可視化して、情報提供やサポートを一貫させると効果が高まります。
2. コンテンツは専門性と親しみやすさの両立
商品説明だけでなく事例、ハウツー、導入後の効果を具体例で示します。専門用語は最小限にして図やチェックリストを添えると読みやすくなります。
3. ブランド文化とコミュニティ作り
北欧系のように生活価値を伝えると、自然なエンゲージメントが生まれます。BtoBでも業界の価値観や働き方を提示して、共感を呼ぶ場を作ると採用や紹介に繋がります。
4. 体験型施策の応用
オンライン相談、無料トライアル、ハンズオンセミナーなど体験を用意すると、購買意欲は高まります。簡単な導入プロセスを示すのが重要です。
実践チェックリスト(短縮)
- 顧客の導線を可視化する
- 導入事例を充実させる
- 無料で体験できる入口を用意する
- 業界の価値観を発信して共感を得る
これらを取り入れると、BtoCの成功要素をBtoBに応用できます。











