はじめに
本ドキュメントの目的
本ドキュメントは、AWSとオンプレミス間の閉域接続に関する検索意図を整理し、関連する技術や導入時の課題と解決策を分かりやすくまとめます。読者が安全で効率的な接続方式を選べるように、実務に役立つ情報を提供します。
背景
近年、クラウドサービスを業務に組み込む企業が増えています。社内システム(オンプレミス)とAWSを安全に連携するには、インターネットを経由しない閉域接続が重要です。例えば、顧客情報を扱う基幹系システムでは、ネットワークの分離と通信の安定性が求められます。
対象読者
ネットワーク担当者、クラウド設計者、開発チームのリーダー、導入を検討する管理者の方々を想定しています。専門用語は必要最小限にして、具体例で補足します。
本書で扱う主なトピック
- AWSとオンプレミス間の安全な接続方法
- 閉域網環境でのサーバーレスアーキテクチャの課題と解決策
- AWS VPNとAWS Direct Connectの概要と特徴
- 実装時のポイントと注意点
以降の章で、これらを順に詳しく解説していきます。
閉域網でAWSのサーバーレスアーキテクチャ(SPA)を利用する方法と課題解決
概要
閉域網ではCloudFrontやCognitoがPrivateLinkに対応しないため、直接のアクセスが難しいです。本章では実務で使える回避策を分かりやすく説明します。
静的コンテンツ配信の方法
CloudFrontの代わりにALB(Application Load Balancer)とS3のInterface Endpointを組み合わせます。S3に静的ファイルを置き、ALBをフロントに立ててHTTPSで配信します。例としては、S3のオブジェクトをALB経由で取得する設定を行います。
API認証とCognitoの扱い
Cognitoの公開エンドポイントに閉域網から直接アクセスできない場合、API Gateway(HTTP統合)でCognitoのエンドポイントをプロキシ化します。これにより閉域網内からトークン発行や検証を行えます。短期のトークンを使う運用をおすすめします。
フロントエンドからAWSサービスAPIを使う方法
フロントエンドはCognito Identity PoolでIAMの一時認証情報を取得し、API Gateway経由でAWSサービスにアクセスします。たとえば、S3へのアップロードをAPI Gatewayの署名付きリクエストで仲介すると安全です。
推奨アーキテクチャと複数の回避策
一つの方法に頼らず、ALB+S3 Interface Endpoint、API Gatewayプロキシ、Cognitoプロキシの組合せを用います。これで閉域網内の制約を回避しつつ、HTTPSや認証要件を満たせます。
注意点
運用面では証明書管理、トークンの有効期限、ログ収集を整備してください。テスト環境で十分に検証した上で本番へ反映することをおすすめします。
AWSでの閉域網の導入方法
概要
AWSで閉域網を作るには主に2つの方法があります。1つはインターネットを経由せずに仮想的な専用線を作る「AWS VPN」、もう1つは物理的な専用線を引く「AWS Direct Connect」です。用途やコスト、必要な帯域に応じて選びます。
AWS VPNによる導入
AWS VPNは手軽に始められます。拠点側のルーターとAWSの仮想ゲートウェイをIPsecでつなぎます。例として、支社とAWS上のシステムを安全に接続したい場合、数時間〜数日で構築できます。中小規模で暗号化が必要なケースに向きます。
AWS Direct Connectによる導入
Direct Connectは物理的な回線で、遅延が少なく大容量に強いです。動画配信や大量データ転送、金融系のリアルタイム処理などに適しています。回線を引く準備と工事が必要なため、導入には数週間〜数ヶ月かかります。
設計のポイント
- 冗長化:VPNは複数構成、Direct Connectは補助的にVPNを併用して可用性を高めます。
- ネットワーク分離:VPC、サブネット、ルートテーブルで内部と公開を分けます。
- 認証と暗号化:VPNではIPsecを利用、Direct Connectでも必要に応じて上位で暗号化します。
運用面の注意
回線品質の監視、BGPでのルーティング管理、コストの見積もりを事前に行ってください。用途に合わせて、まずはVPNで試し、負荷や要件に応じてDirect Connectへ移行する方法も有効です。
AWS VPN接続とAWS Direct Connectの概要
概要
AWS VPN接続とAWS Direct Connectは、オンプレミスとAWSをつなぐ代表的な方法です。VPNはインターネット経由で暗号化したトンネルを作り、Direct Connectはインターネットを通さない専用回線で接続します。
AWS VPN接続(イメージ付き説明)
VPNは手軽に始められます。例えば、支店のネットワークからAWSのVPCへ安全にアクセスしたい場合に便利です。設定はソフトウェアやルーターで行い、暗号化で通信を守ります。ただし、回線はインターネットを通るため、遅延や混雑の影響を受けやすい点に注意してください。
AWS Direct Connect(イメージ付き説明)
Direct Connectはデータセンターやクラウド間を専用回線で直結します。大量データの転送や低遅延が求められるシステム、法令や社内規定でインターネットを使えない場合に向きます。費用はVPNより高めですが、安定性と通信品質が優れます。
比較と選び方(簡単な指針)
- 低コストで速く導入したい:VPN
- 大量データ・高品質通信が必要:Direct Connect
- 可用性を高めたい:両方を併用してフェイルオーバー構成にする選択肢があります。
運用上のポイント
接続後も定期的に通信状況やセキュリティ設定を確認してください。冗長化や暗号化強度、アクセス制御の見直しを行うと安心です。
AWS Direct Connectとは
概要
AWS Direct Connectは、お客さまのデータセンターやオフィスからAWSの設備へ物理的な専用回線を引くサービスです。インターネットを経由しないため、通信が安定しやすく、セキュリティ面でも有利です。閉域網とAWSを直接つなげたい場合に適した選択肢です。
主な利点
- 安定した通信: レイテンシーや帯域変動が小さく、動画配信やデータベースのレプリケーションに向きます。
- セキュリティ: 公衆インターネットを通さないため、第三者に見られにくくなります。
- コスト予測: 大量データ転送ではインターネット経由よりコストが抑えられる場合があります。
具体的な利用例
- オンプレミスの業務システムとAWS上のデータベースを低遅延で同期する
- 定期的な大容量バックアップを高速に送る
- クローズドな社内ネットワークからVPCへ安全に接続する
仕組み(かんたん説明)
専用回線を引き、仮想インターフェース(VIF)を作ります。VIFには“プライベート”(VPC接続用)と“パブリック”(AWSのパブリックサービス用)があります。ルーティングはBGPで行い、必要に応じてDirect Connect Gatewayで複数リージョンのVPCに接続します。
導入の流れ(高レベル)
1) 接続場所(ロケーション)を選ぶ
2) 回線タイプ(専用/ホステッド)と帯域を決める
3) 仮想インターフェースを設定してBGPでルーティングする
4) 冗長化(予備回線やLAG)を検討して運用開始
注意点
- 回線手配に時間がかかる場合があります
- 単一回線では可用性が課題になるため冗長構成を推奨します
- ネットワーク運用・BGPの知識が必要です
以上がAWS Direct Connectの概要と導入時のポイントです。導入目的や運用条件に合わせた設計が重要になります。












