第1章 はじめに
本書の目的
このドキュメントは、Google Search Console（以下 Search Console）における「制限付き」権限について、分かりやすくまとめることを目的としています。権限の特徴や利用できる機能、他の権限との違い、付与対象や手順、実務での使い方まで丁寧に解説します。
誰に向けた内容か
ウェブ担当者、サイト運営者、外部委託先、そして権限管理を見直したい管理者の方に向けています。専門的な前提知識は不要です。実例を交えて説明しますので、初めて設定する方も安心して読めます。
この章での案内
第1章では本書の構成と読み方を示します。以降の章で具体的な機能説明、比較、付与手順、実務での活用例を順に扱います。まずは全体像を把握してから、必要な箇所を詳しくお読みください。
制限付き権限の基本定義
概要
制限付き権限は、Google Search Consoleで「閲覧のみ」が許される最小限の権限です。データの参照やレポートの確認はできますが、サイトの設定やユーザー管理は一切できません。
定義
具体的には、検索パフォーマンスやインデックス状況、エラー情報などを見られます。URL検査の結果や検索クエリごとのクリック数・表示回数などが確認可能です。一方で、プロパティの追加や削除、サイトマップの送信、ユーザー権限の変更はできません。
利用シーン（具体例）
- 外部のSEO業者にデータを見せたいとき
- 社内の別チームに進捗を共有するとき
- 契約中のフリーランスにアクセスを渡すとき
メリットと注意点
メリットは安全にデータ共有できる点です。注意点は、閲覧だけなので作業を任せる場合は別途操作権限の手配が必要になることです。
制限付き権限で閲覧可能なデータ
検索パフォーマンス
制限付き権限でも、サイトが検索結果でどのように見えているかを確認できます。具体的にはクリック数、表示回数、CTR（表示に対するクリック率）、平均掲載順位が見られます。たとえば「あるキーワードで月間クリック数が増えている」「平均掲載順位が下がっている」などの傾向を把握できます。
サイトの技術的な状態
インデックス状況やカバレッジレポート（インデックス登録済み・エラーのURL数）、クロールエラー、モバイル使用性の問題を閲覧できます。これにより「どのページがインデックスされていないか」「モバイルで表示崩れが起きているページはどれか」を確認できます。
ページ別の詳細データ
個別ページごとのパフォーマンスや検索クエリごとの順位分布も見られます。特定ページの改善優先度を決める際に役立ちます。例：あるページのCTRが低い場合、タイトルや説明文の改善を検討できます。
レポートとエクスポート
データは期間指定で抽出でき、CSVなどで書き出せます。外部のSEO業者が分析する際に必要なデータを持ち出して作業できます。
メモ
閲覧はできますが、設定変更や削除などの操作は行えません。閲覧中心の権限でも、日々の分析や問題発見には十分な情報が提供されます。
制限付き権限でできないこと
概要
制限付き権限では、設定の変更や重要操作を行えません。管理者が意図しない設定変更や誤操作を防ぎ、サイト運営の安全性を高めます。
具体的にできない操作（主な例）
- ユーザー管理：新規作成や権限変更、削除はできません。誰がアクセスできるかを勝手に変えられません。
- サイト構成の変更：テーマやレイアウトの切替、ページテンプレートの編集はできません。
- サイトマップやインデックス設定の変更：検索エンジン向け設定を変更できません。
- プラグイン／拡張機能の有効化・無効化：機能追加や削除ができません。
- 公開設定・公開取り消し：ページや記事の公開・非公開の切替は制限されます。
- サーバー設定やDNS、バックアップ操作：インフラに関わる重要操作は行えません。
- 請求情報の閲覧・変更：支払い関連の操作はできません。
なぜここまで制限するのか
重要な設定を限定することで、誤操作や悪意ある変更による被害を防ぎます。権限を限定すると、誰が何をしたか追跡しやすくなり、問題発生時の対応が速くなります。
注意点と運用のコツ
- 制限が厳しいと業務に支障が出る場合は、必要な権限だけ一時付与します。テスト環境で試してから本番に反映してください。
- ログや変更履歴を定期的に確認して、不審な操作がないか監視します。
- 最小権限の原則を守り、役割に応じて細かく権限を割り当てます。
権限レベルの比較
概要
Search Consoleの権限は大きく3種類に分かれます。オーナー（所有者）、フル（ユーザー）、制限付き（ユーザー）です。各権限の範囲を理解すると、安全に運用できます。
権限ごとの違い
- オーナー（所有者）
- プロパティを完全に管理できます。データ閲覧・設定変更・ユーザー管理・所有権の移転など全機能を利用できます。
-
例：サイトの設定変更やユーザー追加を行う管理者。
-
フル（ユーザー）
- データ閲覧と多くの操作ができますが、ユーザー管理はできません。レポート確認や一般的な設定操作に適しています。
-
例：SEO担当者や開発チームのメンバー。
-
制限付き（ユーザー）
- データ閲覧に限定されます。設定変更やユーザー操作はできません。
- 例：上司やクライアントなど、レポート確認だけ必要な人。
使い分けのポイント
- 最小権限の原則で、必要な範囲だけ付与してください。
- 役割に応じてオーナーは最小限に、日常業務はフルや制限付きで対応すると安全です。
注意点
- オーナー権限は強力です。付与先は慎重に選んでください。
- 定期的に権限を見直し、不必要な権限は削除してください。
制限付き権限の付与対象
対象者の一覧
- SEO業者（外部）: 検索クエリや流入データを分析する必要がある場合に最適です。設定変更ができないためリスクを抑えられます。
- データ分析担当（社内）: 日常的にトラフィックやコンバージョンを確認するメンバーに限定して付与します。
- 外部コンサルタントや一時的な契約者: 短期間で解析を依頼する際に便利です。
理由と具体例
SEO業者には検索ワードや流入元の傾向を見せて改善提案を受けます。例として、外部業者がクリック率改善の提案をする場合、ページ別の検索パフォーマンスを確認する必要がありますが、サイト設定を変えられると安全性が下がります。
付与時の留意点
- 最小限の期間で限定付与する
- アクセスログを記録し定期的に確認する
- 権限付与の目的を明確に文書化する
簡単なチェックリスト
- 目的は明確か
- 必要なデータだけ見せているか
- 期限を設定しているか
- 解除手順が決まっているか
このように、閲覧に特化した権限は外部と内部の両方で有効に働きます。適切に管理すればリスクを抑えつつ必要な分析だけを共有できます。
セキュリティと権限付与の最適化
概要
サイトの安全性を保つには、必要最小限の権限を与えることが基本です。多くの情報を渡すとリスクが高まります。ユーザーの役割に合わせて権限を選び、外部業者や一時的なメンバーには制限付き権限を活用してください。
実践のポイント（具体例あり）
- 最小権限の原則：閲覧のみ、編集不可のアカウントを作る。例：外部の分析業者にはレポートの閲覧権限だけ与える。
- 時間制限付きアクセス：期限付きトークンやアカウントを発行し、作業後に自動で無効にする。
- 役割テンプレート：よく使う権限セットをテンプレ化して付与ミスを減らす。
監査と見直し
- 定期的なアクセスレビューを行う。3か月や半年ごとに不要な権限を削除します。
- ログとアラートで不審な操作を検知し、速やかに調査します。
運用と自動化
- 自動失効、承認ワークフロー、多要素認証を組み合わせると効果的です。
- テスト環境で権限変更を試してから本番へ反映してください。
権限付与の手順
前提条件
- 共有先はGoogleアカウントのメールアドレスを用意してください。
- あなたが該当プロパティの所有者または権限付与できる管理者であることを確認します。
手順（画面操作の流れ）
- Search Consoleにログインして対象のプロパティを選択します。
- 左メニューの「設定」を開き、「ユーザーと権限」または「ユーザーを追加」をクリックします。
- 「ユーザーを追加」画面で共有先のGoogleアカウントのメールアドレスを入力します。
- 権限レベルの選択で「制限付き」を選びます。これで閲覧のみの権限に限定できます。
- 「追加」または「招待」をクリックして完了です。招待メールが届きます。
付与後の確認と管理
- 追加後はユーザー一覧で権限が「制限付き」になっているか確認してください。
- 不要になったら同じ画面からユーザーを削除できます。
注意点・実務上のコツ
- メールアドレスはGoogleアカウントであることを必ず確認してください。
- プロパティ単位の設定です。複数サイトある場合はそれぞれ設定が必要です。
- 最小権限の原則に従い、必要な範囲だけ付与してください。
実務的な活用シーン
概要
制限付き権限は、必要なデータだけを安全に共有する手段です。外部業者や社内メンバー、クライアントと効率よく情報をやり取りできます。
外部SEO業者への提供
例：外部のSEO業者にサイト分析を依頼する際、制限付き権限で検索パフォーマンスのみ閲覧可能にします。業者はデータ分析や改善提案ができ、内部設定や機密情報には触れません。
社内メンバーでの利用
例：マーケティング担当者が日々の検索順位やクリック数を確認する場合、閲覧権限だけで十分です。編集や重要設定は別の管理者が保持します。
クライアント向けの共有
例：レポート作成のためにクライアントに期間限定でデータを見せる際に有効です。アクセスの有効期限を設定すると安全です。
付与時のチェックリスト
- 必要最小限の範囲で付与する
- 有効期限を設定する
- ログや通知を有効にする
運用上のポイント
定期的に権限を見直し、不必要なアクセスは速やかに解除します。文書で手順を明確にし、誰が何を見られるかを共有しておくと混乱が減ります。制限付き権限は、セキュリティを保ちながら効率的にデータ共有するための実務的な選択肢です。
