はじめに
このドキュメントは、Webサイトの「クロール(クローリング)」について、基礎から実践までやさしく解説します。専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明しますので、技術に詳しくない方でも読み進められます。
目的
- サイトの更新を検索エンジンに早く反映したい方
- クロールに関する疑問を整理したい運営者や制作者
- クロール最適化(SEOの一部)を学びたい方
本書で学べること
- クロールの基本的な仕組みと注意点
- クロールバジェットの考え方と対策
- クロールとスクレイピングの違い
- Googleへのクロール依頼方法と実務的な改善策
- 対応ファイルタイプについての注意点
読み方のコツ
順に読むと理解が深まります。まずは第2章で基本を押さえ、そのあと実践的な章を参照してください。具体的な例や手順は後半にまとまっています。
クロール(クローリング)とは何か
概要
クロール(クローリング)は、検索エンジンのプログラム(クローラー)がWebサイトを順に訪れてページの情報を読み取る仕組みです。ページの本文やリンク、画像のURLなどを自動で集め、後で検索結果に反映するための材料にします。
どんな情報を集めるか
一般的にはHTMLの本文、見出し、リンク先、画像や動画のURL、ページの更新日時などを取得します。例えばブログ記事ならタイトル・本文・カテゴリー・関連記事へのリンクを収集します。こうした情報を基に検索エンジンはページの内容を判断します。
具体例
実例として、あなたのブログに新しい記事を公開すると、クローラーがサイトを巡回してその記事のURLを見つけます。クローラーは記事を読み、内部リンクをたどって別の記事にも移動します。これにより検索結果でその記事が見つかる可能性が生まれます。
サイト運営者が知っておくべきこと
サイト側はrobots.txtやmetaタグでクロールの可否を指定できます。また、サイト構造を分かりやすくするとクローラーが効率よく巡回できます。ページが見つからない・反映が遅いと感じたら、これらの設定や内部リンクを確認してください。
よくある誤解
クロール=検索順位ではありません。クローラーがページを見つけても、検索順位は別の評価で決まります。まずは見つけてもらうこと、次に内容を分かりやすく伝えることが大切です。
クロールの仕組み
クローリングは大きく分けて「URLの取得(発見)」「HTMLデータの解析」「リンク構造の把握」の3つのステップで進みます。以下で順にわかりやすく説明します。
1. URLの取得(発見)
クローラーはまず既知のURL(種)やサイトマップ、外部リンクから新しいページを見つけます。例えばサイトマップ(sitemap.xml)を登録すると、新しい記事を効率よく見つけられます。SNSや他サイトのリンク経由で訪れることもあります。
2. HTMLデータの解析
クローラーはページのHTMLを取得して中身を読み取ります。タイトルや見出し、画像のalt属性、本文のテキストなどを抽出して内容を判断します。注意点として、JavaScriptで後から読み込む内容はそのままでは見えないことがあり、必要に応じてレンダリングして取得します。
3. リンク構造の把握
ページ内のリンク(aタグやパンくず、ページネーション)をたどり、サイト内の関係や階層を把握します。例えばカテゴリページから商品ページへと深くたどれるかを確認し、重要なページほど優先順位を高めます。
実際の流れ(簡単な例)
- 種URLを取得
- ページを取得(HTTPリクエスト)
- HTMLを解析して新しいURLを発見
- 発見したURLをクローリング候補に追加
- robots.txtや制限を確認しつつ順次取得します
注意点
robots.txtやmeta robotsで制御される点、リダイレクトや重複コンテンツへの対処、サーバー負荷を避けるための間隔調整などに気を付けます。これらを設計に組み込むと効率よく正確にクロールできます。
クロールバジェットの重要性
クロールバジェットとは
クロールバジェットは、検索エンジンが一定期間にそのサイトを巡回(クロール)できる上限量です。簡単に言えば「検索エンジンが使える時間と回数の予算」のようなものです。たとえば大きな通販サイトでは、すべてのページをすぐに見てもらえないことがあります。
どのように決まるか(仕組み)
クロールバジェットは主に二つの要素で決まります。1) クロール能力:検索エンジンがそのサイトをどれだけ速く安全に読み込めるか。2) クロールの必要性:サイトに更新や新しいページがどれだけあるかです。サーバーの応答が遅いとクロール能力が下がり、更新が多ければ必要性が高まります。
なぜ重要か
クロールバジェットが不足すると、新しいページや更新がインデックスに登録されるまで時間がかかります。大規模サイトでは、重要な商品ページや記事が検索結果に反映されにくくなり、機会損失につながります。小規模サイトでも無駄なURLを大量にクロールさせると、重要なページの巡回頻度が下がります。
最適化の基本
- 不要なページ(重複・テストページなど)をrobots.txtやnoindexで除外します。例:古いパラメータ付きURLをブロックする。
- サイトマップを整備して重要ページを明示します。
- サーバーの応答速度を改善し、安定性を高めます。
注意点
クロールバジェットは自動で調整されます。一度に大きな変更を加えると挙動が変わるため、段階的に最適化を進めて状況を確認してください。
クロールとスクレイピングの違い
概要
クロールはWeb上を巡回してページを収集する行為です。検索エンジンがリンクをたどり、多くのページを保存するイメージです。一方、スクレイピングは特定のページや要素から必要な情報だけを取り出す技術です。例として、価格比較サイトが商品ページから価格だけを抜き出すのがスクレイピングです。
目的の違い
クロールはサイト全体の把握やインデックス化が目的です。検索結果やサイトマップ作成に向きます。スクレイピングはデータ取得が目的で、統計や自動入力、価格監視などに使います。
手法の違い
クロールはリンクを順にたどり、ページを保存します。スクレイピングは特定のURLやHTMLの要素を指定してデータを抽出します。クロールは広く浅く、スクレイピングは狭く深く進めます。
法律・倫理とマナー
どちらもサイト運営者のルールに従う必要があります。robots.txtや利用規約を確認し、アクセス頻度を抑えてサーバーに負荷をかけない工夫をしてください。場合によっては明示的な許可やAPIの利用が安全です。
実例での使い分け
検索エンジンはクロール主体でサイト全体を集めます。価格監視ツールやスクレイピングツールは特定情報だけを定期的に集めます。目的に合わせて手法を選ぶと効率的です。
Googleへのクロールリクエスト方法
概要
サイト全体を認識させたい時はXMLサイトマップを送信します。個別ページだけ早くクロールしてほしい時はGoogle Search ConsoleのURL検査を使います。
サイトマップの送信(大量ページ向け)
- XMLサイトマップを用意します(例: https://example.com/sitemap.xml)。
- サイト所有権をSearch Consoleで確認します。
- Search Consoleの「サイトマップ」画面でURLを追加して送信します。
- robots.txtに「Sitemap: https://example.com/sitemap.xml」を記載すると検索エンジンが見つけやすくなります。
ワンポイント: 新しいページや構成変更後はサイトマップを更新してください。
URL検査(個別ページ向け)
- Search Consoleで該当ページのURLを入力します。
- 「URL検査」結果で問題がなければ「インデックス登録をリクエスト」を押します。
短時間で再クロールを促せますが、頻度に制限があります。
注意点と確認項目
- ページが公開されていること(認証やnoindexがない)。
- robots.txtでブロックされていないこと。
- 正しいcanonicalを設定していること。
- 送信後はCoverageやステータスを確認してください。
クロールを効果的に促す方法
内部リンクの最適化
サイト内のリンクを整理するとクローラーが巡回しやすくなります。トップページやカテゴリページから重要ページへ3クリック以内で到達できるようにします。分かりやすいアンカーテキストを使うと、ページ内容を正しく把握してもらえます。
コンテンツを充実させる
高品質で更新頻度の高いコンテンツはクロールの頻度を上げます。見出しや段落を整え、画像には代替テキストを付けます。FAQや定期的な記事更新が有効です。
robots.txtでの制御
robots.txtで不要なディレクトリや管理画面をブロックして、クローラーを重要ページに誘導します。誤って重要ページをブロックしないよう、変更後はテストしてください。
URLフィルタリングと重複削除
パラメータ付きURLや印刷用ページなど、価値の低いURLをnoindexやcanonicalで整理します。重複が減るとクロール効率が上がります。
サイトマップとモニタリング
XMLサイトマップを用意して重要URLを通知します。Search Consoleなどでクロール状況を定期的に確認し、問題を早めに対処します。
クロール対応ファイルタイプの注意点
概要
クローラーはすべてのファイルを同じように扱いません。生成方法や配布形式によっては内容を取得できなかったり、リンクをたどれなかったりします。ここでは代表的なファイルタイプ別に注意点と対策をわかりやすく説明します。
ファイル別の注意点
- PHPなどのサーバー生成ページ
- 多くの場合、クローラーは最終的に返るHTMLを読みます。ですが、POSTやセッション依存、動的に生成されるパラメータが必要なページは到達できないことがあります。
- FlashやJavaScriptで生成されたリンク
- クローラーは静的なHTMLリンクを優先します。JavaScript実行が必要なリンクは見落とされることが多いです。
- PDF、Word、PowerPoint
- 検索エンジンは中身を読むことができますが、タイトルや見出しの取得が不完全になる場合があります。また、モバイルでの閲覧性も低くなります。
実用的な対策
- 重要な情報はHTMLページにも必ず載せる。ファイルに頼りすぎない。したがってアクセス性が上がります。
- JavaScript生成コンテンツはサーバーサイドレンダリングや静的な代替リンクを用意する。たとえばメニュー項目を通常のリンクでも設置します。
- PDF等は本文のHTML要約を作成し、ファイルへの明確なリンクを貼る。必要ならHTML版も用意します。
- ファイルを公開する際はnoindexヘッダを付けないよう確認してください。
チェックリスト(簡単)
- 主要コンテンツがHTMLで読めるか
- 動的リンクに代替手段があるか
- 文書ファイルに要約やHTML版があるか
上記を確認すると、クローラーがコンテンツを正しく見つけやすくなります。
まとめ
要点の振り返り
Webサイトのクロールは検索エンジンがページを見つけ、内容を理解するための基本です。クローラーがページに到達できなければ、検索結果に表示されません。シンプルな対策で発見されやすくなります。
すぐにできる対策(実例付き)
- robots.txt と sitemap.xml を整える:Googleが訪ねる道しるべになります。例:重要ページはサイトマップに入れる。
- 内部リンクを整理する:トップページや関連ページからリンクを張ると見つかりやすくなります。
- ページ表示速度を改善する:画像を圧縮し、不要なスクリプトを減らすとクロールの効率が上がります。
- 重複やnoindex設定を見直す:誤って検索除外していないか確認します。
簡単チェックリスト
- sitemap.xml は最新か
- robots.txt で重要ページをブロックしていないか
- 重要ページへ内部リンクがあるか
- 主要ページの読み込みが速いか
結論として、クロール対策は特別な技術がなくても日々の整理で効果が出ます。まずは上のチェックから始めてください。












