はじめに
概要
本調査結果は、SSL(Secure Sockets Layer)接続時に発生するエラーの原因と、その具体的な解決方法を分かりやすく整理したものです。ブラウザや端末の設定、SSL証明書の問題、セキュリティソフトの干渉、TLSプロトコルのバージョン不一致など、原因は多岐にわたります。本章では読み方と目的を簡潔に説明します。
誰に向けた資料か
- 一般ユーザー:接続エラーに遭遇したときに自分で試せる対処法を知りたい方
- サイト管理者:ユーザーからの報告を受けた際に原因を切り分けたい方
- サポート担当者:問い合わせ対応で的確に案内したい方
本資料の目的と範囲
本資料は、エラーの原因を大きく「クライアント側」と「サーバー側」に分け、まずは簡単に試せる対処法を紹介します。専門用語は最小限に留め、具体例や手順を示して実務で使いやすいようにまとめます。
この章の使い方
まず第3章(クライアント側)に沿って簡単な確認と対処を行い、それでも解決しない場合に第4章(サーバー側)を参照してください。ログの取得や証明書の情報が必要な場面では、その取り方を丁寧に案内します。
注意事項
設定変更や証明書の操作は影響が大きいことがあります。管理者の許可がない作業は行わないでください。問題が深刻な場合は、サイト管理者や専門のサポートに相談してください。
SSLエラーの主な原因
1) ブラウザやOSが古い
古いブラウザやOSは最新の暗号方式(TLS)に対応していません。結果として接続を拒否されることがあります。例:数年前のスマホや古いWindowsで発生しやすいです。
2) デバイスの時刻・日付の誤り
端末の時刻が大きくずれていると証明書がまだ有効でない/すでに期限切れと判断されます。対処法は設定で自動時刻に合わせることです。
3) 証明書の有効期限切れや信頼されない発行者
サーバー証明書が期限切れ、または信頼されない認証局(CA)から発行されていると警告が出ます。ウェブサイト側での更新や、利用者側でのCAチェーン確認が必要です。
4) 中間CA証明書の不備
サイトが中間証明書を正しく送っていないと、ブラウザは最上位の信頼ルートまでたどれずエラーになります。管理者側で中間証明書を正しく設定する必要があります。
5) セキュリティソフトやプロキシの干渉
一部のウイルス対策ソフトや企業のプロキシが通信を中継し、独自の証明書を差し替えることがあります。この場合、ブラウザが信頼できない証明書として扱います。
6) サーバーのTLS設定が古い
サーバーが古いTLSバージョンや弱い暗号しか許可していないと、新しいクライアントと接続できません。したがってサーバー側の更新や設定見直しが必要です。
クライアント側での解決方法
1) ブラウザを最新に更新する
古いブラウザは最新の暗号方式や証明書に対応していないことがあります。まずブラウザの設定から更新を実行してください。更新後に再起動して問題が解消することが多いです。
2) 日付・時刻を確認して修正する
端末の時刻がずれていると証明書の有効期限判定が誤ります。自動時刻同期をオンにするか、正しい日時に手動で合わせてください。
3) ブラウザのキャッシュとCookieを削除する
古いキャッシュが原因でエラーが残る場合があります。履歴・キャッシュ・Cookieを削除してから再読み込みしてください。
4) OSの証明書ストアを確認・削除する
WindowsやmacOSに誤って追加した自己署名証明書が問題を起こすことがあります。証明書管理ツールで不要な証明書を削除してください(例:Windowsの「証明書スナップイン」やmacOSの「キーチェーンアクセス」)。
5) 別のブラウザや端末で試す
問題の切り分けに有効です。スマホや別PC、別ブラウザで同じサイトにアクセスして挙動を確認してください。
6) セキュリティソフト・ファイアウォールの設定確認
ウイルス対策ソフトやプロキシがSSL通信を検査するとエラーになる場合があります。一時的に無効化して動作を確認し、設定に「HTTPSのスキャン」項目があればオフにしてみてください。ただし無効化は自己責任で行い、確認後は必ず再度有効にしてください。
トラブルが続く場合
上記で解決しない場合は、接続先の運営者に問い合わせるか、ネットワーク管理者に相談してください。
サーバー側での解決方法
概要
サーバー側ではTLSのバージョン更新と証明書チェーンの正しい配置が重要です。ここでは手順と具体例を丁寧に説明します。
1. TLSバージョンを最新にする
サーバーはTLS1.2以上を有効にしてください。古いTLS1.0/1.1は無効にします。例(nginx):
ssl_protocols TLSv1.2 TLSv1.3;
2. 中間CA(証明書チェーン)の配置
ブラウザはサーバー証明書だけでなく中間CAも必要です。中間証明書をサーバー証明書の後に結合してfullchainファイルを作ります。
cat server.crt intermediate.crt > fullchain.crt
3. 証明書チェーンの確認(openssl)
接続とチェーンを確認するコマンド:
openssl s_client -connect example.com:443 -showcerts
出力で中間証明書が表示されれば正しく配置されています。
4. サーバー設定例
Apache:
SSLCertificateFile /etc/ssl/certs/server.crt
SSLCertificateKeyFile /etc/ssl/private/server.key
SSLCertificateChainFile /etc/ssl/certs/fullchain.crt
Nginx:
ssl_certificate /etc/ssl/certs/fullchain.pem;
ssl_certificate_key /etc/ssl/private/server.key;
5. その他の注意点
- 秘密鍵と証明書が対応しているか確認します(鍵の権限は適切に)。
- 設定変更後はウェブサーバーを再起動し、再度opensslで検証します。
- 証明書の有効期限や自動更新の仕組みを整えてください。












