はじめに
本報告書は、Akamaiが提供するCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)サービスについて分かりやすくまとめたものです。Akamaiの業界での立ち位置や技術的な特徴、導入による効果を調査し、企業での採用事例も含めて解説します。
目的
- AkamaiのCDNがどのような役割を果たすかを明確にする。
- 導入を検討する企業が得られるメリットを具体的に示す。
対象読者
- インフラ担当者やシステム管理者、導入判断を行う担当者。
- CDNを初めて学ぶ技術者や関係者。
報告書の構成
- 第2章: Akamai CDNの基本概要
- 第3章: CDNの仕組みと動作原理
- 第4章: Akamai CDNのメリット
- 第5章: Akamaiが提供する3つのサービス
読み進めることで、導入の検討に必要な基礎知識と判断材料が得られます。
Akamai CDNの基本概要
CDNとは何か
CDNは、デジタルコンテンツを利用者に速く届けるための仕組みです。元のサーバーから遠い人でも、近くのサーバーから画像や動画、ウェブページを受け取れるようにします。たとえば、東京の人がロサンゼルスのサイトを見ても、国内のサーバー経由で速く表示できます。
Akamaiの歴史と規模
Akamaiは1990年代にCDNの考え方を提唱した企業で、業界の先駆者です。世界中に30万台以上のサーバーを配置し、130カ国・700都市以上で運用しています。全世界のトラフィックの約15〜20%を扱うほど大規模です。
Akamaiが提供する価値(具体例)
- ウェブサイトの表示高速化:ECサイトのページが早く表示され、購入離脱を減らせます。
- 動画配信の安定化:視聴中の途切れを減らし、視聴体験を向上させます。
- トラフィック分散:急なアクセス増にも耐えられるため、イベントサイトやキャンペーンに向きます。
展開の特徴
Akamaiは各地に分散したサーバーで利用者に近い配信を実行します。これにより遅延や通信負荷を下げ、信頼性を高めます。技術的な専門用語は最小限にし、運用面では導入しやすい点も強みです。
CDNの仕組みと動作原理
構成要素
- オリジンサーバー:元のデータを持つサーバーです。サイト運営者のサーバーで、画像や動画、HTMLなどを保存します。
- エッジサーバー:ユーザーの近くに置かれるキャッシュ用のサーバーです。複数の国や地域に分散しています。
- DNSサーバー:ユーザーのリクエストをどのエッジに送るか決めます。地理情報や負荷状況を参考にします。
配信の基本フロー
- ユーザーがページを開くと、まずDNSに問い合わせます。
- DNSは近いまたは最適なエッジを返します。ユーザーはそのエッジに接続します。
- エッジは要求されたファイルをキャッシュに探します。見つかれば即座に返します(キャッシュヒット)。
- 見つからなければエッジがオリジンに取りに行き、受け取ってからユーザーに返し、同時にキャッシュに保存します(キャッシュミス)。
具体例:日本の利用者が米国のサイトで動画を再生すると、近くの日本のエッジから配信されるため再生開始が速くなります。
キャッシュの仕組みと更新
- TTL(有効期間)を使い、一定時間経つと再取得します。
- 管理者は必要に応じて特定ファイルを即時に削除(パージ)できます。
Akamaiが工夫している点
- 世界中に多くのエッジを持ち、ユーザーに物理的に近い場所を選びます。
- ネットワークの混雑を避けるルーティングや負荷分散で高速化します。
- 動画など大きなファイルは分割や最適圧縮で効率よく配信します。
Akamai CDNのメリット
Akamai CDNを導入すると、ウェブサイトやアプリの表示速度や安定性が大きく改善します。ここでは、実務で役立つ具体的なメリットを分かりやすく説明します。
表示速度の向上
- 画像や動画、ページのデータを利用者の近くに置くことで読み込みが速くなります。例えば、海外ユーザーでも近くのサーバーから配信されるため、動画の再生が滑らかになります。
可用性と安定性の確保
- トラフィックを複数のサーバーに分散するため、特定のサーバーに負荷が集中しにくくダウンのリスクが下がります。アクセスが急増する際も応答が安定します。
セキュリティ機能
- DDoS攻撃対策や不正アクセスの防止(WAF)などの機能を備え、攻撃時でもサービス継続性を高めます。SSL(暗号化)も容易に導入できます。
コストと運用の効率化
- オリジンサーバー(元のサーバー)への負荷を減らし、帯域使用量を抑えられます。結果としてインフラコストや運用負担が軽くなります。
導入実績と信頼性
- 多くの企業や自治体、教育機関が採用しており、大規模イベントや高トラフィックでも対応した実績があります。安心して任せられる点が魅力です。
運用支援と分析
- 配信状況のレポートやリアルタイム監視で問題を早期発見できます。データを基に配信設定を改善し、利用者体験を継続的に向上させられます。
Akamaiが提供する3つのサービス
Akamaiはクラウドプラットフォーム「Akamai Connected Cloud」を基盤に、主に以下の3つのサービスを提供します。現場で使いやすい機能を中心に、利用場面を具体例で示します。
1. CDNサービス
コンテンツ配信ネットワーク(CDN)です。画像や動画、ウェブページを世界中の近いサーバーにキャッシュして、読み込み時間を短くします。たとえば、海外の利用者が動画を見るときでも再生開始が速く、バッファリングが減ります。高トラフィック時の負荷分散や配信の信頼性も提供します。
2. セキュリティソリューション
アプリケーションやAPIの保護、DDoS対策、ボット対策、ゼロトラストの実現を含みます。具体例では、不正なログイン試行をブロックしたり、APIへの悪意ある要求を検知して遮断します。これによりサービス停止やデータ漏えいのリスクを下げます。
3. クラウドコンピューティング(エッジ)
エッジコンピューティング機能で、ユーザーに近い場所でデータ処理を行います。パーソナライズ表示やリアルタイム分析、IoTデバイスの応答改善に向きます。中央のクラウドに戻さず処理するため応答性が高く、帯域も節約できます。
これらは連携して動き、配信の速さ・安全性・柔軟な処理を同時に高めます。












