はじめに
この文書は「直帰率」というWebサイト分析の指標を、初めて学ぶ方にも分かりやすく説明するために作りました。普段は数字だけ見ている方や、どこから改善を始めればよいか迷っている方に向けた入門書です。
対象読者
- ウェブ担当者や個人サイト運営者
- アクセス解析をこれから学ぶ方
- 指標の意味を実務で活かしたい方
本書の目的
本書を読むと、直帰率の基本的な定義、計算方法、GA4での扱い方、離脱率との違い、指標が示す意味、そして改善に向けた実務的な方法が順を追って理解できます。各章で具体例や実務で使える考え方を紹介しますので、読み終わる頃には自分のサイトで次に何をすべきか見えてくるはずです。
読み方のポイント
- 用語は必要最低限に抑え、具体例で補足します。
- 実務で役立つチェックリストや改善のヒントも掲載します。
- まずは第2章で定義を押さえ、その後に計算やGA4の違いに進むと理解しやすいです。
以降の章で順に解説します。ゆっくり読み進めてください。
直帰率の基本定義
直帰率とは
直帰率は、訪問者が最初に開いた1ページだけを見て、ほかのページへ移動せずにサイトを離れる割合を指します。わかりやすく言うと「サイトに来た人がどれくらい早く帰ってしまうか」を数値で表したものです。
直帰に該当する具体例
- 検索結果やSNSから来て、最初のページだけを見てブラウザを閉じた場合
- 広告のリンク先ページに来て、他のページに進まずに離脱した場合
- ページが1枚構成(ランディングページやシングルページサイト)の場合も、その訪問は直帰として計測されることがあります
なぜ気にするべきか
直帰率はページの魅力や導線の分かりやすさを示します。高い直帰率は、期待とページ内容が合っていないか、導線がわかりづらいことが多いサインです。改善の手がかりになります。
注意点
直帰率が高いからといって必ず悪いとは限りません。問い合わせ完了や電話発信など、訪問者が1ページだけで目的を果たすケースもあります。また、ページでイベント(動画再生やボタンのクリック)を計測すると直帰率が変わる点に留意してください。
指標の使い方
ページごとや流入元ごとに直帰率を比べて、問題のありそうな箇所を特定します。単独の数値で判断せず、滞在時間やコンバージョンと合わせて見ると有効です。
直帰率の計算方法と具体例
直帰率の基本式は非常にシンプルです。
- 直帰率(%)= 直帰セッション数 ÷ 全セッション数 × 100
手順をわかりやすく説明します。
- 直帰セッション数を数える
- 訪問者が最初のページだけ見て離れたセッションの数です。
- 全セッション数を数える
- 同じ期間に発生したすべてのセッションの合計です。
- 式に当てはめて計算する
- 割合を求め、必要なら小数点を丸めます。
具体例
- 例1:サイト全体
- 訪問100セッションのうち40セッションが直帰した場合
-
40 ÷ 100 × 100 = 40%
-
例2:トップページ単位
- トップページの訪問が5セッションで、そのうち2セッションが直帰
-
2 ÷ 5 × 100 = 40%
-
例3:複数ページでの合算
- ページA:200セッション中120直帰、ページB:80セッション中20直帰
- 合計直帰 = 120+20=140、合計セッション = 200+80=280
- 140 ÷ 280 × 100 = 50%
注意点(実務で気をつけること)
- 分母が小さいと割合が大きく変動します。サンプル数が少ない場合は慎重に判断してください。
- ページごとや流入元ごとに分けて見ると原因がわかりやすくなります。
- 表示や計測方法によって直帰の定義が変わる場合があります。分析ツールの定義を確認してください。
この章では計算の仕方と具体例を中心に説明しました。次章でツールごとの定義の違いについて触れます。
GA4における直帰率の定義とエンゲージメントの関係
定義
GA4では「直帰率」は、エンゲージメントが発生しなかったセッションの割合を指します。単に1ページだけ見て離脱したかどうかではなく、エンゲージメントがなかったかどうかで判定します。
エンゲージメントの条件(実例つき)
- 10秒以上の滞在:記事をじっくり読んで10秒を超えればエンゲージメントとみなされます。例:ブログ記事を15秒読んだ。
- 2ページ以上の閲覧:別のページに移動すれば条件を満たします。例:トップページから商品ページへ遷移した。
- 設定したコンバージョン:購入や問い合わせなど、サイトで重要と設定した行動を完了した場合。例:申し込みフォームを送信した。
計算方法と具体例
GA4の直帰率は次の式で求めます。
直帰率 = 100% − エンゲージメント率
例:セッション100件のうち30件がエンゲージメントなら直帰率は70%です。別の例では、60件がエンゲージメントなら直帰率は40%になります。
実務上の注意点
直帰率の定義が従来の測定と異なるため、過去データと単純比較すると誤解が生じます。したがって、レポートや改善施策を作る際はGA4のエンゲージメント条件を確認してください。また、スクロールや動画再生などが自動でエンゲージメントとして記録される場合があるので、重要な指標かどうかを目的に合わせて判断すると良いです。
直帰率と離脱率の違い
定義
- 直帰率(Bounce Rate):訪問者がサイトに入って最初のページだけを見て離脱したセッションの割合です。最初のページで何もアクションがなければ直帰になります。
- 離脱率(Exit Rate):サイト内のある特定のページでセッションが終わった割合です。ページ単位で計る指標です。
わかりやすい具体例
- 例1(直帰):広告からランディングページに来て、そのページだけ見て離脱した場合は直帰です。サイト全体の最初のページで判定されます。
- 例2(離脱):A→B→Cとページ遷移してCで離脱した場合、Cの離脱率が上がりますが直帰ではありません。
計測の違いと使い分け
- 観点:直帰率は“セッションの最初の1ページでの問題”を示します。離脱率は“どのページでユーザーが去るか”を示します。
- 実務:ランディングページ改善は直帰率を優先で、導線やコンテンツ改善は離脱率を見て対処します。
注意点
- 指標は単独で判断せず、滞在時間やコンバージョンと合わせて見ると誤解を避けられます。
直帰率が示唆する意味と注意点
直帰率が示す主な意味
直帰率は「訪問者が最初のページだけ見て離脱した割合」を表します。高い直帰率は必ずしも悪いわけではなく、訪問者が求める情報をすぐ得て離脱した可能性もあります。一方で、期待に沿わず興味を失ったケースも示します。
よくある原因(具体例)
- 必要な情報がトップにあり、すぐ分かった(FAQや連絡先ページ)。
- ページの内容が期待と違った(タイトルと本文が不一致)。
- ページの読み込みが遅い、スマホで見づらい。
- 内部リンクが少なく次の行動がわかりにくい。
- 計測設定が不正確で実際の行動が反映されていない(例:イベント未設定)。
評価するときの注意点
業種やページの目的で適切な直帰率は変わります。ランディングページ、ブログ記事、商品ページで目標は違います。平均値だけに集中せず、ページごとや流入元ごとに分けて見てください。
指標解釈の落とし穴と対処法
- 1つの指標で結論を出さない。滞在時間やコンバージョンも合わせて判断します。
- 短期の変動に振り回されない。十分なデータ期間で判断してください。
観点別のアクション例
- 情報が十分なら次の行動を促すボタンを設置する。
- 興味を持たれない場合は見出しや導入を改善する。
- 計測の疑いがあればイベントやタグを見直す。
実務での直帰率の活用方法と改善策
概要
直帰率は特定ページに到達したセッションのうち、他のページに遷移せず離脱した割合です。ランディングページ改善やコンテンツ評価に使えます。
実務での活用方法
- 優先順位付け:直帰率が高いページを洗い出し、重要度に応じて対応します(売上に直結するページを優先)。
- セグメント分析:流入元(検索・広告・SNS)やデバイス別に見ると原因が分かります。
- コンテンツ評価:直帰率と滞在時間を合わせて、情報の充実度や導線の強さを判断します。
具体的な改善策(例付き)
- 表示速度を改善する
- 画像を圧縮し、不要なスクリプトを削除します。表示が速くなれば離脱が減ります。
- ファーストビューの最適化
- 最初に伝える情報とCTAを明確にします。例:問い合わせボタンを折り返し前に配置。
- 導線と内部リンクを増やす
- 関連記事や商品を適切に案内して次のページへ誘導します。
- コンテンツの質を上げる
- ユーザーの疑問に答える見出し構成や要点を分かりやすくします。
- モバイル最適化
- スマホ表示での操作性を確認し、タップ領域を広げます。
- イベント計測を導入
- スクロールやクリックを計測して「実際の接触」を捉えます。これで直帰の意味をより正確に判断できます。
測定と検証
小さな変更をA/Bテストで検証し、直帰率とコンバージョンを両方確認します。改善効果は数日〜数週間で判断します。
注意点
ランディングページの目的次第では直帰率が高くても問題ない場合があります。問い合わせ完了や資料ダウンロードが唯一の行動なら直帰が必ずしも悪ではありません。












