第1章: はじめに
本調査の目的
本調査は、ランディングページ(LP)の表示速度を正しく計測し、改善につなげるための実践的なガイドです。表示速度がユーザー体験やコンバージョンに与える影響を明確にし、測定方法と改善手順を順を追って説明します。
なぜ表示速度が重要か
表示が遅いと、訪問者は離脱しやすくなります。ページが速ければ滞在時間や成約率が向上します。本書では具体例を用いて、表示速度がビジネス成果に与える関係を分かりやすく示します。
対象読者
Web担当者、マーケター、制作会社の方を想定しています。技術的な知識が少ない方でも理解できるように、専門用語は最小限にして具体例を交えます。
本書の構成と読み方
第2章〜第7章で、計測の背景、主要ツール、Core Web Vitals、その他指標、改善の実践ステップ、そして計測結果の活用方法を順に解説します。まずは第2章から読み進めてください。
計測の重要性と背景
なぜ計測が必要なのか
ランディングページ(LP)の表示速度は、訪問者の「続けて見る」か「離脱する」かを左右します。ページが遅いと直帰率が上がり、広告やSEOで集めたトラフィックが成果につながりにくくなります。具体例として、表示に時間がかかるとユーザーは待たずに他サイトへ移る傾向があります。
ビジネス成果への影響
表示速度は売上や問い合わせ数と直結します。たとえば同じ広告費でも、表示が速ければコンバージョン率が上がり、費用対効果が改善します。速度改善は短期的なクリック増だけでなく、長期的なユーザー信頼の向上にも寄与します。
SEOとの関係
GoogleはCore Web Vitalsという指標(LCP、FID、CLS)を検索順位の判断材料に取り入れています。これらはページの見た目や操作感に関する評価で、改善すると検索結果での可視性が上がる可能性があります。表示が3秒以内であることが推奨されています。
計測の前提とポイント
計測には「実際のユーザー環境で計る」フィールド計測と「開発環境で再現する」ラボ計測があります。両方を使うと原因特定が早まります。測定時は端末や回線の違い、広告や外部スクリプトの影響を意識してください。
主要な計測ツール
Google PageSpeed Insights
URLを入力するだけでPC・モバイル別にスコアと改善案を提示します。ラボデータ(Lighthouseによる検査)とフィールドデータ(実際のユーザー計測)を分けて表示します。具体例:モバイルでの読み込み時間やLCP(最大コンテンツの表示速度)改善案が見られます。
GTmetrix
ページの読み込み過程を可視化し、読み込み順やリクエストごとのサイズを確認できます。動画での再生やタイムライン表示が便利で、どのリソースがボトルネックかが分かります。アカウント作成で詳細な設定や地域選択も可能です。
WebPageTest
細かいネットワーク条件(回線速度や地域)を指定して計測します。プライベートブラウザで何度も試し、完全な請求とキャッシュの影響を比べると効果的です。映画のような水平方向タイムラインで段階を確認できます。
Googleアナリティクス(Site Speed)
実際のユーザーからの計測を集め、ページ表示時間や速度分布を把握します。母数が多いほど信頼できます。改善の優先順位付けに役立ちます。
Chromeデベロッパーツール
開発者ツールのNetworkやPerformanceタブで実際にファイルサイズやレンダリング時間を確認できます。実機で操作しながら問題箇所を切り分けると早く原因が特定できます。
補足の使い方
- ラボとフィールドの両方で計測してください。ページによって結果が変わります。
- 複数回計測して平均を取ると安定した傾向が掴めます。
- まずはPageSpeed Insightsで全体像を掴み、GTmetrixやWebPageTestで詳細を深掘り、DevToolsで原因を検証する流れが実務では使いやすいです。
Core Web Vitals:3つの重要指標
Core Web Vitalsは、ユーザー体験の核となる3つの指標で構成されます。目安はLCP≤2.5秒、INP≤200ms、CLS≤0.1です。ここではそれぞれの意味と現場でできる改善を具体的に説明します。
LCP(最大コンテンツ表示速度)
何を測るか:ページで最も大きく見える要素(ヒーロー画像やメインテキスト)が表示されるまでの時間を測ります。目安は2.5秒以下です。
改善方法:画像は適切なサイズで遅延読み込みを使い、サーバー応答(TTFB)を短くし、重要なCSSをインライン化します。例:メイン画像はWebPにし、必要な幅だけ配信します。
INP(ユーザー操作反応性、旧FID)
何を測るか:クリックや入力などの操作に対して画面が反応するまでの時間を評価します。目安は200ms以下です。
改善方法:長いJavaScript処理を分割(Long Tasksを短く)し、Web Workerで重い処理をオフロードします。ボタンの処理は軽くして即時フィードバックを返します。
CLS(レイアウトシフト)
何を測るか:表示中に予期せぬレイアウトの移動がどれだけ発生したかを合計します。目安は0.1以下です。
改善方法:画像や広告には幅と高さ、またはaspect-ratioを指定して枠を確保します。フォントや動的な挿入要素は事前にスペースを用意します。
計測のコツ:実ユーザー(フィールド)データで傾向を確認し、ラボ環境(LighthouseやDevTools)で改善点を再現して修正します。現場では小さな変更の積み重ねが効果を出します。
その他の重要な速度指標
以下ではCore Web Vitals以外でよく使われる速度指標をやさしく説明します。実務での改善判断に役立ててください。
First Contentful Paint(FCP)
FCPはブラウザが最初のテキストや画像などの「何か」を表示するまでの時間です。例えばページを開いて最初の見出しが見えた瞬間がFCPになります。計測が早ければユーザーは「読み込みが始まった」と感じやすくなります。改善方法は、レンダリングを妨げるCSSやJavaScriptを遅延読み込みにする、重要なスタイルをインラインにするなどです。
Speed Index
Speed Indexはページの視覚的な完成度が時間経過でどれだけ速く進むかを表します。同じFCPでも見た目が素早く整うページのほうがSpeed Indexは良くなります。大まかな改善策は、上部に表示される要素を優先して読み込むこと、画像の遅延読み込み(lazy load)を適切に設定することです。
TTFB、DOMContentLoaded、Onload、TBT
- TTFB(Time To First Byte)はサーバー応答の速さを示します。サーバーやCDNの設定を見直すと改善します。
- DOMContentLoadedはDOMが構築された時点、Onloadは全てのリソース読み込みが完了した時点です。重いスクリプトを遅延させることで短縮できます。
- TBT(Total Blocking Time)はメインスレッドが長くブロックされた合計時間で、インタラクションの応答性評価に役立ちます。小さなスクリプトに分割するなどで改善できます。
計測のポイント
ツールごとに指標の取り方が異なります。複数の計測方法(ラボ環境とフィールドデータ)を組み合わせ、実際のユーザー体験に近いデータを重視してください。
計測から改善までの実践ステップ
改善は計測の後に具体的な手順で進めることが大切です。ここでは実務で使えるわかりやすい3つのステップを説明します。
Step 1:現状把握(PageSpeed Insightsでベースライン)
PageSpeed Insights(PSI)で対象ページを測定し、主要なスコアとLabデータを記録します。計測時はデバイス種別(スマホ/PC)とネットワーク条件をメモしてください。スクリーンショットやLighthouseのレポートも保存すると比較が楽になります。
Step 2:画像の最適化(軽量化・次世代フォーマット・遅延読み込み)
画像は効果が大きい改善対象です。具体策は、サイズを適切にリサイズ、画質を調整して圧縮、WebPやAVIFなど次世代フォーマットに変換、遅延読み込み(loading=”lazy”)を導入することです。レスポンシブ画像(srcset/sizes)を使うと端末に合った画像を配信できます。ツールはSquooshやバッチ変換プラグインが便利です。
Step 3:記録と評価(改善の効果検証)
改善を1つずつ適用し、その都度PSIや実機で再計測してスコアと表示速度の変化を記録します。変更ごとにスクリーンショット、回復可能なバックアップ、作業時間を残してください。優先度は「効果が大きく手間が少ない」項目から着手します。繰り返し計測して効果が安定するまで調整を続けましょう。
実務では小さな改善を積み重ねることで大きな効果が出ます。まずは測って、直して、また測ることを習慣にしてください。
計測結果の活用ポイント
目的を明確にする
計測結果は目的に合わせて解釈します。例えば購入率向上が目的なら、ページ表示の速さ(LCP)やクリック応答の速さを優先します。問い合わせの増加が目的なら、フォーム周りの安定性を重視します。
継続的な計測と比較
計測は一度で終わらせず、定期的に実施します。過去データと比較して変化をグラフで示すと効果が分かりやすくなります。週次や月次のベースラインを作ると良いです。
優先順位の付け方
影響度(ビジネスへの効果)と工数(実装の手間)で優先順位を付けます。小さな工数で大きな改善が見込める項目から取り組みます。
実務への落とし込み
改善策はチケット化してスプリントに組み込みます。A/Bテストや段階的ロールアウトで効果を確かめながら進めます。変更ごとに計測を回して比較してください。
共有と報告
関係者には分かりやすい指標とグラフで報告します。改善前後の差を具体的な数値(例:読み込み時間-1.2秒、CVR+3%)で示すと説得力が増します。
自動化とアラート
閾値を決めて自動で監視・通知を設定します。問題発生時にすぐ対応できる体制を整えてください。












