はじめに
目的
本資料は「ヘッドレスCMS 作り方」に関する調査結果をまとめたものです。ヘッドレスCMSの基本概念、導入方法の種類、代表的なツールであるStrapiやWordPressのヘッドレス化手順を、具体的な実装例を交えて分かりやすく解説します。
対象読者
・ウェブサイトやアプリのコンテンツ管理を改善したい開発者・運用担当者
・既存のCMSをより柔軟に使いたいデザイナーや編集者
・これからヘッドレスを学びたいエンジニア初心者
本資料で学べること
・ヘッドレスCMSの考え方とメリット・デメリット
・導入方法(フルヘッドレス、ハイブリッドなど)の違いと選び方
・Strapiを使った管理画面の作り方(実例)
・WordPressをヘッドレス化する手順と注意点
前提と進め方
読み進める際は、基本的なウェブの知識(HTMLやAPIの概念)があると理解が早まります。各章で手順や設定例を順を追って説明しますので、実際に手を動かしながら学べます。章ごとに独立した解説を用意していますから、必要なところから読むことも可能です。
次章で、まずヘッドレスCMSとは何かを丁寧に説明します。
ヘッドレスCMSとは
概要
ヘッドレスCMSは、コンテンツの管理と表示を切り離した仕組みです。管理画面で記事や画像を編集し、それをAPI(アプリや表示部分とデータをやりとりする仕組み)で配信します。表示部分は別の仕組みで自由に作れます。
特徴
- 管理に特化:コンテンツ作成や公開スケジュールなど管理機能に注力します。
- API配信:編集したデータをJSONなどで返し、別のシステムが受け取ります。
- 表示の自由度:デザインやフロントエンドの技術を制約しません。
メリット
- 複数の端末で同じデータを使えるため、Webサイト・スマホアプリ・デジタルサイネージなどで再利用しやすいです。
- フロントエンドを好みの技術で作れるので、表示速度や体験を改善できます。
- チーム分業しやすく、開発と編集の独立性が高まります。
活用例
- 企業のコーポレートサイトとモバイルアプリで同じ記事を表示する。
- 店舗のデジタルサイネージにタイムリーな情報を配信する。
- 複数言語や多地域向けにコンテンツを一元管理する。
注意点
- 表示部分を自分で用意する必要があり、初期の開発コストが増えます。
- API設計や認証、キャッシュなど運用面の配慮が必要です。
- 小規模なサイトでは従来型CMSの方が簡単な場合があります。
用途やチームの体制を考え、導入を検討してください。
ヘッドレスCMS導入の主な方法
概要
ヘッドレスCMSの導入は大きく3つに分かれます。セルフサービス型、ベンダーサポート型、オンプレミス型です。それぞれ導入の速さ、運用負荷、費用、セキュリティ要件で向き不向きがあります。
1. セルフサービス型(クラウド SaaS)
- 特長: 提供者が運用するクラウド上で即座に使えます。初期設定が簡単で、スピード重視のプロジェクト向けです。
- メリット: すぐに立ち上がる、保守が不要、スケールが自動。
- デメリット: カスタマイズや細かな権限設定が制限されることがあります。
- 向くケース: 小〜中規模サイト、プロトタイプ、開発リソースが限られる場合。
2. ベンダーサポート型(マネージド/エンタープライズ)
- 特長: 導入支援や運用サポートをベンダーが提供します。大規模案件や要件が複雑な場合に有利です。
- メリット: 導入コンサル、SLA、セキュリティ対応が手厚い。
- デメリット: コストが高め。契約により自由度が制約される場合があります。
- 向くケース: 大企業、複数チームでの運用、ミッションクリティカルなサイト。
3. オンプレミス型(自社環境での運用)
- 特長: 自社サーバーにインストールして運用します。データ管理やセキュリティを厳格に制御できます。
- メリット: カスタマイズ自由度が高い、内部ポリシーに従った運用が可能。
- デメリット: 環境構築と運用に技術力とコストが必要。事前のテストが重要です。
- 向くケース: 規制対応が必要な業界や、データを外部に出せない場合。
導入チェックリスト(簡易)
- 必要な機能(編集権限、ワークフロー、API)を明確にする
- 想定トラフィックとコストを見積もる
- 運用体制(誰が障害対応するか)を決める
- セキュリティ・バックアップ方針を策定する
導入手順(基本の流れ)
- 要件定義
- 評価環境での検証(Poc)
- 本番環境設計とテスト
- 移行とローンチ
- 運用・改善
注意点
セキュリティやバックアップは導入前から計画してください。移行時はコンテンツ構造の違いによる手作業が発生しやすいので、マッピングを事前に用意するとスムーズです。
Strapiを使ったブログ管理画面の実装例
導入手順
まずプロジェクトを作成します。コマンド例:
npx create-strapi@latest my-blog --quickstart
これでローカルに管理画面とAPIが起動します。初回は管理者アカウントを作成します。
コンテンツモデルの設計(例)
- Blog Post(記事): title(文字列)、body(リッチテキスト)、slug(URL用)、publishedAt(日付)
- Tag(タグ): name(文字列)
タグは多対多(Many-to-Many)で紐づけます。こうすることで一つの記事に複数タグを付けられ、タグごとの絞り込みも簡単になります。
管理画面での操作
管理画面からコンテンツタイプを作成し、フィールドを追加します。記事編集画面でタグを選ぶとリレーションが自動で作られます。画像や公開ステータスもGUIで設定できます。
API利用の基本
記事一覧はRESTやGraphQLで取得できます。例(REST):
GET /api/articles?populate=*
フロントエンドはこのエンドポイントを叩いて記事とタグを表示します。認証や公開設定は管理画面のロールで調整できます。
WordPressをヘッドレスCMS化する方法
概要
WordPressのREST APIを使い、Next.jsなどのフロントエンドで記事を表示する手順を説明します。REST APIは記事をJSONで提供するので、見た目(フロント)を自由に置き換えられます。
手順(簡単な流れ)
- Node.jsをインストール(v14以上を推奨)
- Next.jsプロジェクトを作成
- npx create-next-app@latest my-blog
- cd my-blog
- npm run dev で開発サーバー起動
- WordPress REST APIの確認
- 投稿一覧: https://your-site.com/wp-json/wp/v2/posts
- ブラウザでJSONが見えればOK
Next.jsでの取得例
export async function getStaticProps(){
const res = await fetch(process.env.NEXT_PUBLIC_WP_API + '/wp/v2/posts')
const posts = await res.json()
return { props: { posts } }
}
ページ内でpostsをmapして表示します。getStaticPropsを使えば静的生成で高速化できます。
設定・注意点
- APIのベースURLは.env.localにNEXT_PUBLIC_WP_APIとして保存してください。機密はサーバー側で扱います。
- 認証が必要な操作はアプリケーションパスワードやJWTで行います。公開APIは投稿の取得に限定しましょう。
- XML-RPCは不要なら無効化し、WordPress本体とプラグインは最新に保ってください。これは攻撃面を減らします。
デプロイ
ビルド: npm run build、起動: npm start。ホスティング(例: Vercel)にデプロイすれば自動で静的/ISRを活用できます。












