はじめに
この記事の目的
本記事はCDN（Content Delivery Network）とDNSレコード、特にCNAMEレコードの関係をやさしく解説します。CDN導入時に必要な設定や仕組みを具体例で示し、技術的理解を深めることを目的とします。
何を学べるか
- CDNがなぜ必要かの簡単な理由
- DNS（名前解決）とCDNの接続の仕組み
- CNAMEレコードの役割と設定時の注意点
- CDN運用で押さえるべき基本的な動作フロー
対象読者
ウェブ担当者、初心者のエンジニア、運用担当者向けに書いています。専門用語は最小限にし、分かりやすい例で補足します。
読み方のポイント
章ごとに順を追って説明します。まず本章で全体像をつかみ、第2章以降で具体的な仕組みや設定方法を学んでください。用語は必要に応じて注釈します。
前提知識
基本的なウェブサイトの仕組み（ブラウザとサーバーのやり取り）と、DNSの簡単な理解があると読みやすいです。専門的な前提は不要です。
CDNの基本定義と役割
CDNとは
Content Delivery Network（CDN）は、世界各地に置かれたサーバーのネットワークです。ユーザーに近いサーバーからウェブの画像や動画、HTMLなどを届けるしくみです。単一の遠いサーバーから配信するより高速になります。
主な役割
- レイテンシー（遅延）の低減：アクセス元に近いサーバーが応答するため表示が速くなります。
- 負荷分散：利用者が集中しても複数のサーバーで処理を分散します。
- 可用性の向上：一部のサーバーが落ちても別の拠点が応答します。
動作のイメージ（具体例）
- 写真付きニュースサイト：ユーザーの近くのCDNに写真を置くため、読み込みが早くなります。
- 動画配信：地域ごとのサーバーから配るとバッファリングが減ります。
- ソフトウェア配布：更新ファイルを世界中の拠点から配ればダウンロードが安定します。
誰に役立つか
ウェブサイト運営者は、訪問者の体験を改善しページの応答を速くできます。特に海外からのアクセスが多いサービスやトラフィックの急増が予想される場面で有効です。
CDNの構成要素
オリジンサーバー
オリジンサーバーは元のコンテンツを保存する中央リポジトリです。ウェブアプリや動画ストレージなど、編集や更新を行う場所で、変更があるとここから配信を始めます。例：CMSやS3バケット。
エッジサーバー（キャッシュ）
エッジサーバーは世界中のPoPに置かれ、頻繁に求められる静的ファイル（画像・CSS・動画の一部）を一時保存します。ユーザーに近いため応答が速くなります。キャッシュの有効期限や条件を設定して運用します。
Points of Presence（PoP）
PoPはエッジが置かれる物理的なデータセンターの場所です。CDN事業者は主要都市やトラフィックの多い地域に戦略的に配置します。地理的に分散することで遅延を下げます。
ロードバランサーとオリジンシールド
リクエストを複数のエッジやオリジンに振り分ける役割です。オリジンシールドはオリジンへの負荷を減らすため、さらに一層のキャッシュ層として働きます。
証明書とセキュリティ
TLS/SSL証明書やWAF（ウェブアプリケーションファイアウォール）で通信と攻撃対策を行います。CDNは暗号化やDDoS緩和を提供します。
管理・監視機能
キャッシュの無効化（パージ）、ログ収集、メトリクス監視、ヘルスチェックなどを通して運用とトラブル対応を行います。
DNSレコードとCDNの接続メカニズム
はじめに
CDNを使う際、DNS設定が重要な役割を担います。ここでは具体的なDNSレコードと、どのようにユーザーリクエストがエッジサーバーに届くかを分かりやすく説明します。
DNSが果たす役割
ユーザーがURLを入力すると、まずDNSでドメイン名がIPアドレスに変換されます。CDNを導入すると、DNSはオリジンではなくCDNのエッジサーバーのIPを返すことで、トラフィックをCDNに向けます。
主なDNSレコードと使い方
- A/AAAA: 直接IPを指定するレコードです。静的にIPを指定する場合に用います。
- CNAME: サブドメインをCDNプロバイダのドメイン名に紐づけます。例: www.example.com → example.cdnprovider.net
- ALIAS/ANAME: ルートドメインでCNAME相当の挙動をさせたい場合に使います（プロバイダ依存）。
- TTL: レコードの有効時間です。短くすると切替が早く反映されますが、DNSの負荷が増えます。
位置に基づくルーティング
CDNはGeoDNSやAnycastなどで、ユーザーに近いエッジを返します。DNS応答はユーザーのDNSリゾルバの位置やネットワーク情報を元に最良のIPを返すよう構成されます。
運用上の注意点
- 独自ドメインのHTTPSでは、証明書設定（SNI）が必要です。プロバイダにより自動発行される場合があります。
- ルートドメインの設定方法はプロバイダで異なります。指示に従ってレコードを作成してください。
- DNS変更は伝播に時間がかかる場合があります。切替作業は慎重に行ってください。
例
www.example.comをCDN経由にするには、CNAMEでCDNのドメインを指定します。ブラウザのリクエストはDNSで解決され、最寄りのエッジサーバーへ届きます。
CDNの動作フロー
ユーザーのリクエスト受信
ユーザーがウェブページや画像を開くと、まずリクエストがCDNに届きます。例えば、日本の利用者が画像を要求すると、DNSやCDNの仕組みで近くのエッジサーバーに接続されます。これにより遅延が小さくなります。
エッジサーバーの選定
CDNはユーザーの位置やサーバーの負荷を見て、最適なエッジサーバーを選びます。選定は自動で行われ、ユーザーは意識せず最短経路で接続できます。
キャッシュヒット（既にキャッシュされている場合）
エッジサーバーに目的のコンテンツがあれば、すぐに配信します。これをキャッシュヒットと呼びます。配信が速く、オリジンサーバーへの負担も減ります。
キャッシュミス（キャッシュがない場合）
目的のコンテンツがエッジにないときは、エッジがオリジンサーバーに問い合わせます。オリジンから受け取った後、エッジにキャッシュしてからユーザーに返します。これにより次回は速く配信できます。
キャッシュの更新と制御
コンテンツには寿命（TTL）があり、期限が切れると再取得します。管理者はTTLやキャッシュのルールを設定して、新しい情報を優先するか高速配信を優先するか調整できます。
障害時の動作
エッジがオリジンに接続できない場合、古いキャッシュを返すか、別のオリジンにフォールバックします。これで可用性を保ちます。
