はじめに
本書の目的
本ドキュメントは、自治体や企業が実施するサイトリニューアル業務におけるプロポーザル方式の提案書作成と提出に関する事例と実務上の注意点をまとめたものです。提案書の要件や審査の観点、評価基準、作成時の具体的な留意点を分かりやすく解説します。
対象読者
自治体の発注担当者、民間の提案書作成担当者、プロジェクトマネージャーなど、提案・審査に関わる方を想定しています。専門用語はできる限り抑え、実務で使えるポイントを中心に説明します。
本書で扱う主な内容
- 提案書の提出要件(PDF形式、組織や財務情報の提示など)
- 審査プロセスと評価基準の実例(信濃町、港区、松本市)
- 提案書作成時の重要な留意点と実践的な書き方
- 質問対応や情報収集の方法の重要性
読み方の案内
以降の章では、まず背景と理由を説明し、続けて各自治体の具体的要件と審査方法を示します。実務で役立つチェックリストや注意点を盛り込みますので、提案書作成の手引きとしてご活用ください。
自治体のサイトリニューアル業務におけるプロポーザル方式の背景と理由
専門性・経験が求められる理由
自治体のWebサイトは情報提供だけでなく、生活者の利便性や防災、手続きの効率化など多様な役割を担います。単なるデザイン改善だけでなく、アクセシビリティ対策、運用体制、セキュリティ対策、CMSの選定と移行など高度な技術と実務経験が必要です。例えば高齢者向けの読み上げ対応や、災害情報の即時配信設計などは専門的な知見が求められます。
価格競争の問題点
一番安い提案を選ぶと、必要な品質や継続的な運用が確保できない恐れがあります。短期的なコスト削減が優先されると、アクセス障害や更新の滞り、セキュリティ脆弱性の放置といったリスクが生じます。これらは住民サービスの低下につながります。
プロポーザル方式の利点
プロポーザル方式は、技術力、実績、提案内容の具体性、運用計画、チーム体制、改善への意欲などを総合的に評価できます。提案書やヒアリングで実務的なアプローチや過去事例を確認し、相性や継続性も判断できます。例えばアクセシビリティ改善の具体手順や、災害時の情報発信フローを示した提案が高く評価されます。
港区の事例から学ぶこと
港区では、価格だけでなく専門知識や実務経験、意欲的な取り組み姿勢を重視してプロポーザル方式を採用しました。これにより、自治体の目的に合った最適な事業者を選べるようになりました。透明性を保ちながら質を重視する選定手法と言えます。
信濃町の提案書提出要件と審査プロセス
提出書類(参加申込み段階)
- 参加表明書:参加の意思を明確に示す書類
- 会社概要書:組織規模や管理体制の説明
- 業務経歴書:類似事業の実績を記載
- 法人沿革書類:会社の沿革や主要沿革を示す資料
- 決算書:直近の財務状況を確認するための書類
- 登記簿謄本:法人の登記情報の確認用
全てPDF形式での提出が求められます。ファイルは読みやすく、必要箇所がすぐに分かるように整理してください。
提出書類(企画提案書段階)
- 提案書(本業務提案書:任意様式)
- 会社概要書・業務経歴書(再提出可)
- 実施体制・安全管理体制の書類:担当者体制、スケジュール、リスク対策
- 見積書:費用明細を明確に記載
こちらも全てPDFで提出します。提案書は目的・成果物・体制・スケジュール・費用が明瞭になる構成を心がけてください。
審査プロセス
- 書面審査:提出書類を基に適格性と提案内容の妥当性を評価します。実績や体制、コストの妥当性を重視します。
- オンラインのプレゼン・ヒアリング:書面で不明な点や実施方法の詳細を確認します。質疑応答で実現可能性と対応力を問われます。
提出前はPDFの表示・ページ順・必須書類の有無を必ず確認してください。プレゼンでは要点を簡潔に伝える準備をしておくと有利です。
提案書作成時の重要な留意事項
提出費用は参加者負担
提案書作成にかかる全ての費用は応募者が負担します。外部委託の調査や資料作成、印刷費などはあらかじめ見積もり、社内で承認を取ってください。例:印刷300枚、10,000円程度を想定。
期限厳守と再提出不可
提出期限を過ぎると再提出や差し替えは認められません。期限内に最終確認を終えるため、提出日の2〜3日前を内部締切に設定してください。オンライン提出の場合は送信後に受領確認を必ず取ります。
提出書類の取扱い
提出書類は返却されません。原本や編集可能なファイルは手元に保存し、必要時に再提出できるようバックアップを作ってください。ファイル名やバージョン管理を徹底します。
成果物の著作権
成果物の著作権は発注者に帰属します。提案に含むサンプルや図版も同様です。ライセンスや第三者素材の使用許諾を事前に確認してください。
実務チェックリスト(例)
- 内部締切を設定する
- 提出書類の最終版をPDFで保存する
- 添付資料の出典と許諾を明記する
- 提出方法(郵送・オンライン)を確認し練習する
- 受領連絡を得るまで記録を残す
これらは期限管理と品質管理の基本です。計画的に進め、余裕を持って提出してください。
松本市と港区の事例に見る業界標準と実践的ポイント
提案資料の形式と入手方法
松本市や港区では、提案説明書や仕様書をPDFで提供します。まずは原本を隅々まで読み、要件と評価基準をチェックリスト化してください。期限・提出方法の確認も必須です。
求められる記載項目
- 技術仕様:実装方針を平易に示します。具体的な機能例や非機能要件を記載します。
- 実施体制:組織図、担当者の役割・経歴を明示します。
- 安全管理体制:個人情報や災害時対応の手順を示します。
- 過去実績:類似案件の成果と担当した範囲を具体化します。
- 経営基盤:財務や継続可能性の裏付けを添えます。
- 保守・運用計画:移行期間やSLA、更新頻度を提示します。
任意様式の活用ポイント
任意様式の提出が許される場合は、図解や画面イメージ、簡易プロトタイプのリンクを活用して差別化を図ります。読みやすい要約と図表で審査者の理解を助けてください。
審査で評価されやすい実務的工夫
- スケジュールはマイルストーンと成果物で可視化します。
- リスク管理は想定リスクと対応フローを簡潔に示します。
- 品質管理はテスト計画や受け入れ基準を明確にします。
- 地域性や協力体制は地域企業の参加や研修計画で示すと評価されやすいです。
実例からの留意点
松本市・港区のケースでは、書類の丁寧さと実現性、運用後の継続支援が重視されます。過去実績の裏付けや担当者の継続配置、移行期間の明記は説得力を高めます。
質問対応と情報収集の重要性
目的と基本方針
提案書作成では仕様や評価基準の不明点を早めに解消することが肝心です。情報が不足すると見積りやスケジュールがずれ、提案の質が下がります。信濃町の事例では、期限内にメールで問い合わせが可能で、発注者が質問期間を設けています。
信濃町の問い合わせ制度(実務ポイント)
・指定された締切内にメールで質問を送れることを確認してください。
・問い合わせは書面(メール)で行い、回答は公式の形で受け取って保存します。
問い合わせのコツ(具体例)
・箇条書きで短く問い、対象の仕様箇所を明示します。例:「仕様書P.8のログイン要件について、OAuthは必須ですか?」
・複数問は番号を振って送ります。回答を受け取ったら提案書に反映する箇所を明示します。
情報収集と関係者の巻き込み方
・内部で技術・運用・見積担当を早めに集め、疑問点を洗い出します。
・必要なら現地確認や参考資料の要求を検討します。
質問履歴と版管理
・質問と回答は一元管理し、提案書の版に紐づけて残します。将来のトラブル防止になります。
スケジュール管理
・質問期間の終了直前に集中しないよう、余裕を持って確認を始めます。緊急度に応じて優先順位を付け、早めに要点だけでも確認しておくと安心です。












