はじめに
本レポートの目的
本レポートは、AWSの仮想サーバーサービス「EC2」に関する無料利用枠の状況を分かりやすく整理することを目的としています。従来の12か月無料枠の仕組みと条件、2025年7月15日以降に導入された新しい無料プランの特徴や違い、主要な関連サービスの無料枠まで解説します。
対象と範囲
対象はAWSをこれから試す方や、既に利用中で無料枠の変更を把握したい方です。実際の操作手順ではなく、条件や適用の考え方、比較に重点を置いています。
本レポートの構成
第2章で従来の無料枠（〜2025/7/15）を説明し、第3章で新しい無料プランの内容を詳述します。第4章で両者を比較し、第5章で他の主要サービスの無料枠を紹介します。
読み方の注意
料金や条件はAWS側の最新発表で変わる可能性があります。本稿では基本的な違いと考え方を中心に説明します。
従来の無料利用枠（2025年7月15日以前）
対象期間と対象サービス
AWSアカウント作成日から12ヶ月間、特定のサービスを無料で試せる「12ヶ月無料枠」がありました。対象となるサービスは複数ありますが、ここでは特にEC2に絞って説明します。
EC2の具体例
EC2ではt2.microまたはt3.microのインスタンスを月間合計750時間まで無料で利用できました。750時間は1台をほぼ24時間稼働させた場合の1ヶ月分に相当します。たとえば、1台を常時稼働させれば無料枠内に収まりますが、2台同時に常時稼働させると超過します。
課金の注意点
無料枠を超えた分は即座に課金されます。時間単位やリージョンによる価格差があるため、使用状況をこまめに確認してください。リージョン選択で利用可能なインスタンスタイプや料金が異なる点にも注意が必要です。
利用に向く場面
この無料枠は開発やテスト、学習用途に適しています。本番環境の長期運用には容量や可用性の面で限界があるため注意してください。
2025年7月の新しい無料プラン（大幅アップデート）
概要
2025年7月15日から、新規ユーザー向けに最大200ドルのAWSクレジットが付与される新しい無料プランが始まりました。クレジットはアカウント作成後6か月間有効で、複数のサービスに使えます。東京リージョンではt3.microとt4g.microのインスタンスが利用可能で、ハンズオン学習や試験的な構築に向いています。
利用イメージ
- EC2で軽量なサーバを立てて、Webアプリの動作確認を行う
- S3に静的ファイルを置いて配信を試す
- 小規模なデータベースやLambdaで機能検証をする
これらを組み合わせて学習や評価ができます。
利用上の注意
- クレジットは新規アカウント専用で、期限（6か月）を過ぎると消失します。
- ほとんどのサービスで使用できますが、対象外の項目があるため利用規約を確認してください。
コスト管理のポイント
予期せぬ課金を避けるため、請求ダッシュボードで使用状況を定期確認し、予算アラートを設定してください。不要なリソースは使い終わったら停止または削除すると安心です。
従来の無料利用枠と新しい無料プランの比較
比較の概要
従来の無料利用枠は新規ユーザー全員が12か月間利用でき、EC2は月750時間（1台を1か月使える量）などの特典がありました。新しい無料プランは2025年7月15日以降の新規ユーザーが対象で、最大6か月、最大200ドルのクレジット制で提供されます。
利用期間と対象
- 従来：登録から12か月間。継続的に軽めの利用を想定
- 新しいプラン：登録日から最大6か月。短期の試用や評価に向く
料金と使い方（簡単な例）
- 従来：毎月の「無料枠」が自動で適用され、超過分は課金
例：EC2を1台ずっと動かす用途に向く - 新プラン：$200分のクレジットを消費して使う方式
例：短期プロジェクトで高性能リソースを集中して試せる
インスタンスと性能
- 従来：t2.micro / t3.micro が利用可能で、軽い負荷に適す
- 新プラン：t3.micro / t4g.micro を利用可能。t4gはArmベースでコスト効率が良い場合がある
選び方のポイント
- 長期間じっくり学ぶなら従来枠が使いやすい
- 短期間でいろいろ試したい、まとまったリソースを使いたい場合は新プランが便利
注意点
クレジットは上限があるため、使い切ると課金に移る可能性があります。どちらを使う場合も、インスタンスの停止や課金アラートの設定で無駄な費用を防いでください。
他の主要AWSサービスの無料枠
概要
12ヶ月無料枠の対象には、Amazon RDS（MySQL / PostgreSQL）やAmazon S3（5GB）などが含まれます。これらは学習や小規模な検証に向き、短期間のコスト節約に役立ちます。OracleやSQL Serverを選ぶ場合は別途ライセンス費用が発生しやすい点に注意が必要です。
ライセンスと選択のポイント
商用データベースを使うときは、ライセンス条件を事前に確認してください。ライセンス費用が運用コストを大きく押し上げることがあります。コストを抑えたい場合は、MySQLやPostgreSQLなどオープンソースのDBを検討すると良いです。
期間制限のない無料枠について
一部のサービスには期間制限のない無料枠があります。軽い負荷のアプリケーションや検証環境では、これらの常時無料枠をうまく組み合わせると長期的にコストを抑えられます。使える範囲や条件はサービスごとに異なりますので、公式の利用条件を確認してください。
運用上の実務ポイント
・利用状況を定期的にモニタリングし、無料枠を超えないようアラートを設定してください。
・バックアップやスナップショットの保存先で追加料金が発生することがあります。ストレージの使い方を見直しましょう。
・試験的に複数のサービスを組み合わせる前に、料金シミュレーターで概算を出すと安心です。
これらを押さえておくと、無料枠を安全に活用できます。
