はじめに
本書の目的
本調査は、Web制作におけるワイヤーフレームの基本を分かりやすくまとめることを目的としています。ワイヤーフレームを設計図として捉え、情報の配置や導線を可視化する方法を丁寧に解説します。これにより関係者間で共通認識を作り、制作の手戻りを減らすことを目指します。
ワイヤーフレームとは
ワイヤーフレームは、サイトやアプリの骨組みを示す図です。デザインの色や装飾を省き、テキストやボタン、画像の位置と導線に焦点を当てます。例えば、トップページの見出し・ナビゲーション・主要なCTA（行動を促す要素）がどこに来るかを示す設計図です。
誰のための資料か
デザイナー、開発者、プロジェクトマネージャー、クライアントなど、設計段階で合意を取りたい全ての人に役立ちます。初めてワイヤーフレームに触れる方にも読みやすい内容にしています。
本書の構成
以降の章で、定義、目的・役割、設計要素、レイアウトパターン、作成手順を順に解説します。各章は具体例を交えて、実務で使える知識を提供します。
ワイヤーフレームの定義
基本の意味
ワイヤーフレームは、Webサイトやアプリの設計図のようなものです。ページに何を置くか、どこに配置するかを線やボックスで表現して、画面の構造とユーザーの動きを可視化します。色や細かい装飾は含めません。設計の土台を早く共有するために作ります。
何を表すか
ワイヤーフレームは主に次を示します。
– ヘッダーやナビ、ロゴの位置
– 見出し、本文、画像の配置
– ボタンや入力フォームの場所
– サイドバーやフッターなどの領域
これらをシンプルな枠やラベルで表します。
装飾を省く理由
装飾を抜くことで、レイアウトと導線に集中できます。早い段階で関係者に見せて意見を集めやすく、修正も速く行えます。ユーザーにとって何が優先されるかを判断しやすくなります。
具体例
- ブログ記事ページ：上部にナビ、中央に本文、右側に関連記事、下にコメント欄を四角で示します。
- ECの商品ページ：左に商品画像、右に商品名・価格・購入ボタンを配置することを枠で示します。
誰が使うか
デザイナー、開発者、企画担当、クライアントが主に使います。初期の合意形成や簡易プロトタイプとして役立ちます。
ワイヤーフレームの目的と役割
情報の整理と優先順位付け
ワイヤーフレームはページ上の情報を視覚的に並べ替える道具です。見出し、本文、画像、ボタンなどを配置して、何を一番伝えたいかをはっきりさせます。例えば製品ページなら「商品名→価格→購入ボタン」の順を優先して示します。
成果につながる導線設計
ユーザーが目的を達成するまでの動きを設計します。問い合わせや購入といったゴールへ自然に誘導するため、ボタンの配置や流れを意図的に決めます。具体例として、トップ→カテゴリ→詳細→購入の流れをワイヤーで確認します。
関係者間の共通認識形成
ワイヤーフレームは制作側とクライアントが同じページ像を共有するための共通言語です。画面の大まかな構成を見せることで、要望のすり合わせや修正点を早期に見つけられます。
実務での使い方（簡単な手順）
- 目的と主要コンテンツを決める
- 低忠実度のワイヤーで大枠を確認
- ステークホルダーに見せて意見を集める
この順で進めると、手戻りが少なく効率的です。
ワイヤーフレームで設計する要素
ページ構造と目的
ワイヤーフレームでは各ページの目的を明確にします。例えばトップページは認知と導線確保、商品ページは購入までの動線を重視します。サイトマップやページごとの目的を最初に決めておくと設計がぶれません。
コンテンツブロック
見出し、本文、画像、動画、注釈などをブロックで分けて配置します。例：トップページのファーストビューに大見出しと主要CTA、下段に特徴説明の3カラムを置くと伝わりやすいです。
ナビゲーションとユーザーフロー
グローバルメニュー、サイドメニュー、パンくずなどの位置を決めます。ユーザーがどの順でページをたどるかを線で示し、主要な遷移を把握します。
操作要素（UIパーツ）
ボタン、フォーム、検索、フィルター、ドロップダウンなどを明示します。例：商品一覧は上部に絞り込み、各商品に「カートに入れる」ボタンを付けます。フォームは入力欄、ラベル、エラーメッセージの領域を必ず確保します。
情報の優先順位とレイアウト
重要な情報を上位に置き、視線を誘導する配置を考えます。グリッドを使って整列させると見やすくなります。
振る舞いの注釈
クリック時やホバー時の挙動、レスポンシブ時の配置変化を簡単に注釈します。これにより実装側と認識を合わせやすくなります。
ワイヤーフレームのレイアウトパターン
シングルカラムレイアウト
シンプルに縦に情報を並べるパターンです。企業のコーポレートページやサービス紹介など、読みやすさ重視のページに向きます。
– 用途例: 企業情報、ランディングページ
– 注意点: 重要な見出しやCTAを上部に置き、スクロール導線を明確にします。
マルチカラムレイアウト
複数のカラムで情報を並列に見せます。ECサイトの商品一覧や比較表に適します。
– 用途例: 商品一覧、ダッシュボード
– 注意点: カラム幅の均一化と優先度の視覚化を行い、モバイルでは縦並びに切り替える設計を考えます。
グリッドレイアウト
カードや記事を格子状に配置します。ブログのTOPやギャラリーに合います。
– 用途例: ブログ一覧、ポートフォリオ
– 注意点: 余白（ホワイトスペース）を確保して視認性を保ちます。
フルスクリーンレイアウト
画面全体を大胆に使うデザインです。ブランドサイトやビジュアル重視のページに向きます。
– 用途例: ブランドサイト、キャンペーンページ
– 注意点: キー情報を見せる領域（ファーストビュー）を厳選し、読み込みや表示崩れに配慮します。
選び方のチェックリスト
- ページの目的（情報提示か販売か）を明確にする
- 優先する情報を上位に配置する
- レスポンシブでの表示切替を想定する
- ユーザー導線と操作性を優先する
ワイヤーフレームの作成手順
準備：サイトマップを作る
まずサイト全体のページ構成を図にします。トップページ、カテゴリ、詳細ページ、問い合わせなどを階層で示します。紙に手書きでも図形ツールでも構いません。サイトの範囲と優先度を関係者で確認します。
1. 掲載情報を整理する
各ページごとに入れる情報を見出し（H1/H2相当）と本文で分けてリスト化します。画像やフォームの有無、CTA（行動を促すボタン）の位置もメモします。具体例：商品ページ→商品名（見出し）、価格（強調）、購入ボタン（CTA）。
2. レイアウトを決める
画面幅や利用状況を想定し、グリッド（列幅）を決めます。PCとスマホで優先表示が変わる部分を明確にします。共通ヘッダーやナビの配置を先に確定すると効率的です。
3. ワイヤーフレームを描く
線とボックスで要素の大きさと配置を表現します。色や装飾は最小限にして、構造に集中します。手書き→低忠実度→必要に応じて高忠実度の順に進めると無駄が少ないです。
4. 注釈と優先度を付ける
各要素に機能や動作の注釈をつけます（例：検索はオートコンプリート）。重要度や可変領域は番号やラベルで示します。開発者やデザイナーが実装しやすくなります。
5. 検証と修正
関係者とレビューを行い、ユーザーテストで実際の使い勝手を確認します。フィードバックを反映して数回繰り返します。
納品と引き渡し
最終ワイヤーフレームをPDFやプロトタイピングツールでまとめ、注釈とサイトマップを添えて共有します。実装時の参照資料として保管してください。
