はじめに
概要
本ドキュメントは、AWS(Amazon Web Services)の地理的な枠組みである「リージョン」について、基本的な考え方と選び方を分かりやすくまとめたものです。世界や日本国内のリージョン配置、主要リージョンの特徴、地域ごとの構成も順に解説します。
本書の目的
リージョンのしくみを理解し、サービス利用時に適切なリージョンを選べるようにすることが目的です。遅延(レスポンスの速さ)や法令遵守、コストなど、実務でよく問われる観点を意識して説明します。
想定読者
クラウド導入を検討している技術者や運用担当者、マネージャーを想定します。専門用語は必要最小限に留め、具体例を交えて解説します。
本書の構成と読み方
第2章以降で基礎概念、世界全体の配置、日本国内(東京・大阪)、アジアパシフィック、北米、その他地域の順に解説します。まず第2章で基本を押さし、その後に地域ごとの特徴を比較すると理解が進みます。章ごとに独立して読める構成です。
AWSリージョンの基本概念
はじめに
AWSのリージョンは、AWSが構築した物理的なデータセンターのまとまりを指します。地域ごとに分かれており、利用者は用途や要件に合わせてリージョンを選びます。
リージョンの名称とコード
各リージョンには分かりやすい名前と短いコードがあります。例:米国西部(オレゴン)= us-west-2、欧州(アイルランド)= eu-west-1、アジアパシフィック(東京)= ap-northeast-1。コードは設定やAPIでよく使います。
データの所在地とレイテンシ
リージョンを選ぶと、その中のデータは原則その地域に保存されます。ユーザーに近いリージョンを選ぶと応答時間(レイテンシ)が短くなり、快適に使えます。法令や社内ルールでデータの保管場所が決まっている場合もあります。
アベイラビリティゾーン(AZ)とは
1つのリージョンは複数のAZで構成されます。AZは独立した物理施設で、冗長化に使います。ミッションクリティカルなシステムは複数AZに分散します。
リージョン選びのポイント
- レイテンシとユーザー分布
- 法令や契約上の要件
- 提供されるサービスや価格差
これらを比べて最適なリージョンを選んでください。
世界規模でのAWSリージョン展開
概要
AWSは世界中にリージョンを広げ、ユーザーに近い場所でサービスを提供しています。現時点では36のリージョンと114のアベイラビリティーゾーン(AZ)を保有しています。計画中の拡張として、ニュージーランド、サウジアラビア、台湾、そしてAWS European Sovereign Cloudに合わせて12のAZと4つのリージョンを追加する予定があります。2022年2月時点では26地域、84AZが展開されており、今後さらに8つのリージョンと24のAZが開設予定です。
リージョン分布と拡張の意味
リージョンを増やすことは、遅延(レイテンシー)低減、法令順守、災害対策の面で重要です。たとえばユーザーが多い国に近いリージョンを選ぶと応答が速くなります。国ごとのデータ保管規制がある場合は、データを国内リージョンに留めることができます。
選び方のポイント(簡潔に)
- レイテンシー:お客様やサービスの利用者が近いリージョンを選ぶと速くなります。例:国内ユーザーが多ければ東京や大阪を検討します。
- 法令・コンプライアンス:データ保管や処理の規制に合わせます。
- 可用性:複数リージョンやAZを使えば障害時の復旧が容易です。
- コスト:リージョン間転送やサービス価格は異なるため事前に確認します。
実運用での注意点
リージョンを跨ぐ設計は便利ですが、データ転送の遅延や料金が発生します。レプリケーションやバックアップは定期的にテストしてください。負荷分散やフェイルオーバーを設定すると、利用者への影響を小さくできます。
具体例
グローバルに展開するウェブサービスでは、ユーザーが多い地域ごとにリージョンを配置し、静的コンテンツはCDNで配信、動的データは主要リージョンで集約すると運用が安定します。
日本国内のリージョン:東京と大阪
概要
日本には東京リージョンと大阪リージョンの2つがあります。どちらもアジアパシフィックに属し、用途や配置で使い分けます。東京は都市部に近く、一般的な第一候補です。大阪は西日本向けや災害対策に有効です。
東京リージョンの特徴
- 開設年:2011年
- アベイラビリティーゾーン:4
- 提供サービス:約182
説明:東京は低遅延とサービスの豊富さが強みです。例えば、ウェブサービスや金融システムは東京を第一選択にします。可用性を高めるために複数AZで構成する設計が一般的です。
大阪リージョンの特徴
- 開設年(フルリージョン):2021年
- アベイラビリティーゾーン:3
- 提供サービス:約94
説明:大阪は西日本への配信や災害復旧(DR)用に重宝します。地域のバックアップやオフサイトレプリケーション先として利用しやすいです。
使い分けのポイント
- 低遅延が最優先なら東京を選びます。例:リアルタイム処理や顧客向けサービス。
- 災害対策や地理的分散が必要なら大阪を副次リージョンにします。例:定期バックアップやフェイルオーバー先。
- コストや利用可能なサービスも確認して決定してください。
運用上の注意
リージョン間でデータを移す際は遅延や通信量に注意します。法令で国内保管が求められる場合は、どちらのリージョンを使うか事前に確認してください。
アジアパシフィック地域全体のリージョン構成
概要
アジアパシフィックには約10のリージョンがあり、東京・大阪のほか、ソウル、シンガポール、シドニー、ジャカルタ、香港、ムンバイなどが含まれます。地理的に広範囲に分布しており、利用者の近くでサービスを提供できる利点があります。
主なリージョンと特徴(例)
- 東京・大阪:日本国内向けに低遅延で安定します。大阪は東京の冗長化先として使われることが多いです。
- ソウル・香港・シンガポール:アジア内のトラフィック集中地に近く、地域間連携に向きます。
- シドニー・ジャカルタ・ムンバイ:各国の拠点カバーに適し、現地法規や利用者層に対応します。
選び方のポイント
- レイテンシー:ユーザーに近いリージョンを選ぶと応答が速くなります。
- データの所在地:国の規制で国内保存が求められる場合は、国内リージョンを選んでください。
- 冗長化:重要なサービスは異なるリージョンに分けて配置すると可用性が上がります。
- サービスの提供状況:一部の機能は地域ごとに違うため、事前に確認してください。
運用上の注意点
- リージョン間の通信やデータ移動には費用が発生します。コスト設計を行ってください。
- バックアップと復旧の手順を地域単位で検討すると、障害時の対応が早くなります。
以上を踏まえ、目的や規模に応じて最適なリージョン構成を検討してください。
北米地域のリージョン構成
概要
北米はAWSが最初にサービスを開始した地域で、現在は7つのリージョンがあります。代表的な米国東部(バージニア北部)は歴史が古く、多くの新機能が最初に提供されます。グローバル展開の中心拠点としてよく選ばれます。
主要リージョンと特徴
- us-east-1(米国東部:バージニア北部): 新サービスの提供が早く、グローバルな拠点に向く。
- us-east-2(米国東部:オハイオ): コスト・待ち時間のバランスが良く、東海岸向けの選択肢。
- us-west-1(米国西部:北カリフォルニア): 地域限定の設置でサービス範囲が狭いことがある。
- us-west-2(米国西部:オレゴン): 西海岸で広く使われ、サービス対応が充実。
- ca-central-1(カナダ:モントリオール): カナダ国内のデータ主権や法令対応に有利。
- us-gov-west-1 / us-gov-east-1(GovCloud): 政府機関や高度なコンプライアンス向け。アカウントやアクセス管理が別扱いになります。
リージョン選定のポイント
- 遅延(ユーザーに近いか)
- サービス提供状況(必要な機能が使えるか)
- 法令・データ主権(業種や国の規制)
- 冗長性とバックアップ(別リージョンでのDR)
- コスト(転送や運用費用)
実践的なヒント
- 最新機能を試したければまずus-east-1を確認してください。
- 機密性の高い業務はGovCloudやカナダ地域を検討してください。
- 複数リージョンへ分散して障害時の影響を減らしましょう。
- リージョン間のデータ転送コストを事前に見積もると運用負荷を抑えられます。
その他の地域のリージョン
南米(サンパウロ)
南米向けにはサンパウロのリージョンがあります。ブラジルや周辺国のユーザーに近いため、ウェブサイトやアプリの応答が速くなります。現地データを保管したい場合にも有利です。
欧州(ストックホルム、アイルランド、ロンドン、パリ、フランクフルト、ミラノ)
欧州には複数のリージョンがあります。北部から南部まで分散しているため、各国の利用者に近い拠点を選べます。地域ごとに法規制やデータ保護の要件が異なるので、保管場所を意識して選ぶと安心です。
中東(バーレーン)
中東向けにはバーレーンのリージョンが主に利用されます。地理的に近いことで遅延を抑え、地域のサービス需要に応えやすくなります。
アフリカ(ケープタウン)
アフリカ向けにはケープタウンのリージョンがあります。現地ユーザー向けのパフォーマンス改善や、アジアや欧州以外での冗長性確保に役立ちます。
リージョン選びの実用的なポイント
- ユーザーの所在地に近いリージョンを選ぶと応答が速くなります。
- 法律やデータ保護の要件を確認してください。
- 冗長性のために複数リージョンでバックアップを取ると安全です。












