はじめに
本書の目的
本ドキュメントは、オウンドメディアをゼロから立ち上げ、継続的に成果を上げるための実務的な手順を分かりやすくまとめています。目的設定からターゲット分析、技術的準備、サイト構築、コンテンツ制作、分析・改善までを網羅します。
想定読者
・これから自社のメディアを作りたい企業担当者
・運用を改善したい編集者やマーケター
・小規模なチームで効果を出したい方
専門知識がなくても実行できるよう、具体例を交えて説明します。用語は必要最小限に抑えます。
本書で得られること
・狙うべき読者像の作り方
・初期に準備すべき技術項目と優先順位
・記事企画から公開、改善までの実践フロー
各章を順に読むことで、計画から運用まで自分で進められるようになります。
読み方のポイント
まず第2章で準備を固め、第3章・第4章で技術と構築を進めます。第5章では継続的な改善の方法を扱います。章ごとに実行リストを用意しているので、手を動かしながら読み進めてください。
注意点
短期間で成果を求めすぎず、読者視点で価値を積み重ねることが大切です。小さな改善を続けることで、確実に成果につながります。
第1章：オウンドメディア構築前の準備段階
目的と方向性の明確化
まず「何のためにメディアを作るのか」を決めます。ブランディング、リード獲得、顧客教育など目的を一つに絞ると軸がぶれません。例えばDIY工具なら「使い方提案で製品理解を深め購入につなげる」と定めます。
ターゲット（ペルソナ）の詳細設定
年齢・職業だけでなく、悩み、目標、情報接触の場所を具体化します。例：30代男性、週末に自宅で修理する、動画で学ぶことを好む。こうした具体像がコンテンツの語り口と配信先を決めます。
カスタマージャーニー設計
認知→比較→決定の段階ごとに必要な情報を洗い出します。認知段階は入門記事や動画、比較段階は比較表やレビュー、決定段階は導入事例や価格情報とCTAを用意します。接点（SNS、検索、メルマガ）も明確にします。
コンテンツ戦略の策定
主要テーマ（コンテンツピラー）、形式（記事・動画・メール）、頻度を決めます。例：月8本（入門4、比較2、事例2）。SEOは基本だけ押さえ、タイトルと導入で意図を伝えます。
運用体制の構築
担当役割（編集、執筆、デザイン、分析）とワークフローを決めます。週次の編集会議、コンテンツブリーフ、公開後の効果測定ルールを設けると継続しやすくなります。
第2章：オウンドメディア構築の技術的準備
概要
ここでは、サイトに必要な機能を明確にし、CMSや開発方法、ドメイン・サーバーの選び方、運用体制を決めます。目的に合った基盤を用意すると、その後の制作と運用が楽になります。
必要な機能を洗い出す
- 基本機能：記事投稿、編集履歴、カテゴリ・タグ管理
- 表示性能：モバイル対応、ページ読み込み速度
- 集客機能：SEO設定、SNS連携、メタ情報編集
- 運用機能：ユーザー権限、コメント管理、バックアップ
- 拡張性：プラグイン／API連携、解析ツール接続
具体例：動画やPDFを頻繁に載せるなら大容量保存と高速配信（CDN）が必要です。
CMS／プラットフォームの比較
- スクラッチ開発：自由度高く独自機能実装が可能。開発コストと保守負担が大きいです。
- 無料CMS（例：WordPress等）：導入が早く費用が抑えられます。拡張性とコミュニティが強みです。
- 有料CMS／SaaS：運用負担を減らせます。サポートとセキュリティが手厚い代わりにコストがかかります。
選び方のコツ：機能優先ならスクラッチ、予算重視なら無料CMS、短期で安定運用したければ有料を検討します。しかし、将来の拡張性も考慮してください。
ドメインとサーバー選び
- ドメイン：短く覚えやすい名前を選び、主要な拡張子を確保します。ブランド名優先が基本です。
- サーバー：トラフィック予測に合わせて共有、VPS、マネージド、クラウドを選びます。SSLは必須です。
制作方法と運用体制の決定
- 内製か外注かを決め、役割（編集、開発、デザイン、保守）を明確にします。
- 更新フロー、承認ルール、バックアップ頻度、障害対応手順を作成します。
- 小規模なら週次の更新担当と月次の技術チェックを設定すると安定します。
第3章：サイト構築プロセス
ワイヤーフレーム作成
まずワイヤーフレームで情報構造を決めます。主要ページ（トップ、カテゴリ、記事、問い合わせ）を紙やツールで配置します。ヘッダーやナビ、CTA（行動を促すボタン）の位置を明確にします。例：ログインは右上、検索はヘッダー中央、重要な導線はファーストビューに配置します。
デザイン制作
ワイヤーをもとにビジュアルを作ります。カラー、タイポグラフィ、画像のトーンを統一します。ユーザーが迷わない配色と十分な余白を意識します。モバイル優先でデザインし、スマホでの見え方を必ず確認します。例：記事の読みやすさを優先し、文字サイズと行間を広めにとります。
コーディング
デザインをHTML/CSS/JavaScriptで組みます。コンポーネント単位で作ると管理が楽です。レスポンシブ対応と読み込み速度を意識します。画像は必要なサイズに圧縮し、遅延読み込みを活用します。CMSを使う場合はテンプレートとフィールド設計もここで行います。
テストと動作確認
機能（フォーム、検索、ログイン）を箇条書きでチェックします。ブラウザや端末で表示崩れがないか確認します。リンク切れ、画像表示、SEOの基本（タイトル、meta、サイトマップ）も点検します。アクセス解析タグの設置も忘れずに行います。
公開準備と公開
ステージング環境で最終確認を行い、バックアップを取ってから本番に移行します。公開後はレポートを用意し、初期のユーザー反応や不具合を早めに修正します。公開直後の監視を習慣にすると安心です。
第4章：コンテンツ制作プロセス
1. キーワード選定
まず読者の疑問やニーズを洗い出します。実例：『冷え性 改善 方法』のように具体的なフレーズを想定し、検索意図（原因の説明、対策、商品レビュー）を分けます。ツールは補助と考え、読者の言葉を優先してください。
2. キーワードのグルーピングとトピッククラスター
関連する語句をまとめ、親トピックと子トピックを決めます。例：親は『冷え性対策』、子は『温活グッズ』『食事法』『運動法』など。クラスターで内部リンクを計画します。
3. 記事制作の流れ
構成：見出しを読者の疑問に合わせて並べます。執筆：具体例や手順を入れて分かりやすく書きます。導入で要点を示し、結論で行動を促します。内部リンクは関連記事へ自然につなげます。
4. 校正・校閲
誤字脱字、事実確認、表現の簡潔さをチェックします。第三者の目で読むと見落としが減ります。
5. アイキャッチ画像・図解作成
簡潔な図解や読みやすいアイキャッチを用意します。図は工程や比較を一目で示すと効果的です。
6. 投稿と公開チェック
メタ情報（タイトル、説明文）、表示確認、モバイル対応を確認して公開します。公開後は反応を見ながら改善します。
第5章：分析・改善と運用
目的とKPI設定
オウンドメディアは継続的に改善して成長させます。まず目的を明確にし、KPIを定めます。例：月間UU、コンバージョン率、滞在時間、記事ごとの目標など。KPIは少数に絞り、担当者が追いやすくします。
データ収集と使うツール
アクセス解析（例：Googleアナリティクス）、検索パフォーマンス（例：Search Console）、ヒートマップやCVツールを組み合わせます。ツールは必要最小限に抑え、同じ指標を重複して追わないようにします。
定期的な分析の流れ
週次は短期の異常チェック、月次は傾向分析と施策検討を行います。記事別に指標を比較し、伸びている原因と低迷している原因を分けて考えます。例：見出し改善で直帰率が下がった、というように因果を意識します。
改善アクションの立案と優先順位
データから仮説を立て、小さな施策を優先します。影響度×工数で優先度を決め、リスト化して実行と記録を繰り返します。
A/Bテストと仮説検証
見出し、導入文、CTAなどはA/Bテストで効果を測ります。仮説は具体的にし、期間と成功基準を決めて検証します。
運用体制とドキュメント
役割（編集・執筆・分析・開発）を明確にし、ルールとチェックリストを残します。ナレッジは共有ドキュメントにまとめ、次回に活かします。
継続的な改善サイクル
分析→仮説→施策→検証を定着させます。小さな成功を積み重ねることで、安定した成長が見込めます。
