はじめに
このドキュメントの目的
本ドキュメントは、Google Analytics 4(GA4)における「直帰率」について分かりやすくまとめたガイドです。定義や計算方法、従来のユニバーサルアナリティクス(UA)との違い、実際の確認手順、目安や改善策まで、実務で使える情報を丁寧に説明します。
想定読者
Webマーケティング担当者、サイト運営者、分析担当者など、GA4での指標の意味を正しく理解し改善に活かしたい方を想定しています。専門知識が少なくても読み進められるように書いています。
本章で学べること
各章では以下を順に説明します。直帰率の定義/UAとの計算の違い/具体的な確認方法/平均的な目安/直帰率が高い場合の改善策。これにより、指標を正しく解釈して改善アクションを選べるようになります。
読み方のポイント
具体例を交えているので、自分のサイトに置き換えて考えてください。数値だけで判断せず、ページの役割やユーザー行動も一緒に見ることをおすすめします。
GA4の直帰率とは
定義
GA4の直帰率は「エンゲージメントのなかったセッションの割合」です。つまり、ユーザーが訪れても一定の条件を満たさなかったセッションを直帰と見なします。従来のUA(ユニバーサルアナリティクス)の「1ページだけ見て離脱した」定義とは異なります。
エンゲージメントの条件(わかりやすい例)
- 10秒以上セッションが続いたとき(例:記事をじっくり読む)
- ページビューが2回以上あったとき(例:トップページ→商品ページ)
- コンバージョンイベントが発生したとき(例:購入や問い合わせ完了)
これらのいずれかを満たせば「エンゲージメントあり」となり、直帰には含まれません。
なぜ重要か(簡単な例で)
同じウェブサイトでもGA4では直帰率が低く出ることがあります。たとえば、1ページだけ見てすぐ閉じた場合でも10秒以上滞在していれば直帰とは見なされません。分析ではUA時代の直帰率と直接比較せず、エンゲージメント率などを併せて見るとわかりやすくなります。
注意点
直帰率の定義が変わったため、過去データとの比較は注意が必要です。目的に応じて指標を選び、ユーザーの行動を総合的に判断してください。
GA4とUAの直帰率計算方法の比較
UA(ユニバーサルアナリティクス)の定義
UAでは「直帰率」はそのセッションでページを1枚しか見ずに離脱した割合です。言い換えると、1ページ閲覧のみのセッション数 ÷ 全セッション数で計算します。直感的で分かりやすい指標です。
GA4の定義
GA4では直帰率を直接数える代わりに「エンゲージメント率」を算出し、そこから逆算します。エンゲージメント率 = エンゲージメントセッション数 ÷ 全セッション数。直帰率 = 100% − エンゲージメント率。エンゲージメントセッションは、たとえば滞在時間が一定以上(デフォルトで10秒以上)、コンバージョンが発生、または複数ページ/画面が閲覧された場合にカウントされます。
具体例
100セッションのうち10セッションが短時間で離脱し、残り90が何らかの条件でエンゲージメントと判定された場合、エンゲージメント率は90%です。直帰率は100%−90%で10%になります。
実務での注意点
- UAとGA4では同じ“直帰率”でも意味が変わります。値をそのまま比較しないでください。
- GA4は滞在時間やイベントを重視するため、短時間滞在でもイベントを発火させれば直帰とみなされません。計測方法の違いを理解してから改善施策に移ると効果的です。
計算方法の主な違い
1) 計算式の違い
- UA(ユニバーサルアナリティクス)は直帰率 = 単一ページ閲覧セッション数 ÷ セッション数。
- GA4は直帰率 = 1 − エンゲージメント率。エンゲージメント率 = エンゲージメントのあったセッション ÷ セッション数。
2) エンゲージメントの定義(GA4)
GA4は「エンゲージメント」を明確に定義します。具体的には:
– 10秒以上の滞在、または
– コンバージョンイベントの発生、または
– 2ページ以上の画面遷移
これらのいずれかでそのセッションを“エンゲージメントあり”と見なします。
3) 対象プラットフォームの違い
- UAは主にWebサイト中心の集計です。
- GA4はWeb・アプリ・動画などマルチプラットフォームを前提にしたイベントベースの計測です。
4) なぜGA4の直帰率が低く出るのか(具体例)
例:訪問者がページを10秒間見て離脱する場合、UAでは直帰扱いになりますが、GA4ではエンゲージメントとしてカウントされ直帰にはなりません。したがって同じトラフィックでもGA4の直帰率は低く出る傾向があります。
5) 分析時の注意点
- 直接比較を避け、GA4用の基準や目標を設定してください。
- 重要なユーザー行動をイベントとして計測すると、より正確に評価できます。
- セッション定義やタイムアウト設定の差も考慮してください。
GA4で直帰率を確認する方法
概要
GA4では「レポート」と「データ探索」の二つの方法で直帰率を確認できます。まずレポートで全体の状況を把握し、必要に応じてデータ探索で詳細に絞り込む流れがわかりやすいです。
レポートで確認する手順(簡単)
- GA4にログインして左側メニューの「レポート」を開きます。
- 「ライフサイクル」→「エンゲージメント」→「ページとスクリーン」を選びます。
- 表の列に「直帰率」が表示されます。表示されない場合は列のカスタマイズで追加してください。
- 日付範囲やセグメント(例:モバイル、参照元)を設定して絞り込みます。
データ探索で詳しく見る方法
- 左メニューの「探索(データ探索)」を開き、「空白のレポート」か「フリーフォーム」を選びます。
- 指標に「直帰率」「セッション数」「エンゲージメント時間」などを追加します。
- 次に「ページパス」や「ページタイトル」「端末カテゴリ」「チャネル」などのディメンションをドラッグします。
- フィルタで最小セッション数を設定すると、母数の少ないページの誤差を減らせます。
- 表、棒グラフ、サマリなど表示方法を切り替えて見やすくします。
チェックするときのポイント
- 直帰率だけで判断せず、セッション数や平均エンゲージメント時間とセットで確認してください。
- 日付比較やセグメント別(例:モバイル/デスクトップ、オーガニック/広告)で見ると原因がつかめます。
- サンプル数が少ない場合は変動が大きくなるので注意してください。
例(実務イメージ)
モバイルの直帰率が高ければ「ページの読み込みが遅い」「ファーストビューに誘導がない」などを疑い、該当ページをデータ探索で絞って改善点を検討します。
これらの手順を使えば、GA4で効率よく直帰率を確認し、次の改善アクションにつなげやすくなります。
直帰率の平均目安
直帰率の目安(業種別)
- ECサイト:およそ20〜45%。商品一覧や購入導線が明確な場合、低めになります。
- コンテンツサイト(ブログ・メディア):およそ35〜60%。記事の目的が単独閲覧になると高めになります。
- ランディングページ(LP)やポータル:およそ60〜90%。目的が一点集中のため直帰が多くなります。
考慮すべきポイント
直帰率はサイト目的やページ役割で変わります。たとえば問い合わせを促すLPでは直帰が高くても問題ない場合があります。デバイス(スマホorPC)、流入元(検索、広告)で差が出ます。
目標設定のコツ
自サイトの過去データを基準に小さな改善目標を立てます。業界平均と比べる際は類似サイト・ページ単位で比べてください。新規流入と再訪者で分けて見ると原因特定が早まります。
短い実例
広告からの流入で直帰が極めて高い場合:広告文とランディングの内容が一致しているか確認してください。
直帰率が高い場合の改善策
1) 高い直帰率のページを特定し、トラフィックを確認する
- GA4で直帰率が高いページを絞り込み、ページごとのセッション数や流入元を確認します。
- 例:セッション数が少ないページは統計が不安定なので優先度を下げます。
2) ページ目的を明確にする
- 商品購入、資料請求、情報提供など目的を定めます。
- 目的に合った導線(CTA)を上部に置くと離脱が減ります。例:お問い合わせボタンを常に表示。
3) ユーザー体験(UX)を改善する
- 表示速度を計測し、3秒以内を目標に最適化します(画像圧縮や遅延読み込み)。
- スマホでの表示確認を行い、ボタンやテキストのサイズを調整します。
4) コンテンツの関連性を高める
- 検索キーワードとページ内容が合っているか確認します。検索意図とずれている場合は見出しや導入文を見直します。
- ファーストビューで何が得られるかを明確に示します。
5) 誘導と次の行動を用意する
- 関連記事やおすすめ商品への内部リンクを設置します。
- 簡単なフォームやチャットを導入して、次のアクションを取りやすくします。
6) テストと分析を繰り返す
- A/Bテストでボタンの文言や配置を比較します。
- 改善後はGA4でイベントやエンゲージメントを見て効果を検証します。
チェックリスト(簡単)
- 直帰率の高いページを抽出したか
- ページの目的を明確にしたか
- 表示速度とモバイル表示を改善したか
- CTAや内部リンクを追加したか
- A/Bテストで効果を測定したか
これらを順に実行すると、直帰率の改善に結びつきやすくなります。小さな改善を積み重ねて効果を確認してください。
まとめ
GA4では直帰率の考え方が変わり、UAの「1ページだけ見て離脱」という単純な判定から進化しました。GA4はエンゲージメントを軸に計測するため、スクロール・滞在時間・イベントなどのユーザー行動を含めて評価します。これにより、実際の利用状況に近い指標が得られます。
実務で大切な点をまとめます。まず、UAの数値と単純に比べないことです。指標の定義が違うため誤解を招きます。次に、GA4のデータ探索やカスタム指標を活用して、自分のサイトで何が「エンゲージメント」にあたるかを明確にしてください。業界の平均値は参考になりますが、目標は自社のコンテンツやユーザー特性に合わせるべきです。
改善は段階的に行います。目標を定めて現状を把握し、優先順位を付けて施策を実行します。改善後はGA4で効果を確認し、必要に応じて調整してください。GA4の指標は豊富なので、正しく理解して活用すればより実務に役立ちます。












