はじめに
背景
本レポートは、Googleアナリティクスの旧バージョンであるUA（Universal Analytics）と新しいGA4における直帰率の違いを分かりやすく解説します。UAの直帰率は「1ページだけ見て離脱した割合」として直感的でしたが、GA4では行動の深さを捉えるために指標が変わりました。例えば、商品ページを短時間見て閉じた場合と、動画を再生して離脱した場合が同じ扱いになりにくくなっています。
本レポートの目的
指標の定義や計算方法の違いを整理し、実務でどのようにデータを解釈すべきかを示します。具体例を交えて、日常の分析や改善施策に役立つ視点を提供します。
読者対象
マーケター、サイト運営者、データを扱う担当者など、Web解析で直帰率を理解したい方を想定しています。分析経験が浅い方でも読みやすいように説明します。
本書の構成
第2章でUAの直帰率の定義と計算方法を説明し、第3章でGA4の定義の変化を解説します。第4章では両者の違いを比較し、第5章でGA4の直帰率が低く出る理由と実務的な意義をまとめます。
UAにおける直帰率の定義と計算方法
定義
UA（Universal Analytics）では、直帰率は「セッション中に最初に訪れたページだけを見て他のページに移動せずに終了したセッションの割合」です。滞在時間やスクロールなどの行動自体は自動では直帰判定に反映されません。たとえば、ブログ記事を1ページ見て離脱した場合は直帰にカウントされます。
計算式と具体例
計算式はシンプルです。
直帰率（％）＝ 1ページのみを閲覧して離脱したセッション数 ÷ そのページ全体のセッション数 × 100
例：あるページでセッションが100件あり、そのうち30件が1ページだけで離脱した場合、直帰率は30％になります。
計測上の注意点
- UAはセッションベースの指標です。セッションのタイムアウトや参照元の構成で数値が変わります。
- 直帰したセッションの「平均滞在時間」は計算できず、UA上では0秒として扱われます。
- イベント送信で直帰率を変えられます。イベントを「インタラクションあり」と送ると、そのセッションは直帰とみなされなくなります。これを使ってシングルページや動画再生などの正しい挙動を計測します。
以上がUAにおける直帰率の基本的な定義と計算方法です。
GA4における直帰率の定義と計算方法の変化
定義の変更
GA4では直帰率の定義が大きく変わりました。従来の「1ページだけ見て離脱した割合」から、「エンゲージメントのないセッションの割合」へ移行しています。ここでいう直帰は、ユーザーが十分な関与を示さなかったセッションを指します。
エンゲージメントの基準
GA4はセッションを「エンゲージメントあり／なし」で判断します。エンゲージメントとみなす主な条件は次の通りです。
– 滞在時間が10秒以上
– ページ遷移がある
– イベント（例：クリック、動画再生など）が発生
これらを満たさない短時間で離脱したセッションが「エンゲージメントのないセッション」です。
計算式と具体例
直帰率（％）の計算式は次の通りです。
– 直帰率（％） = エンゲージメントのなかったセッション数 ÷ そのページから始まるセッション数 × 100
または
– 直帰率（％） = 100％ − エンゲージメント率（％）
例：あるページで開始セッションが100件あり、エンゲージメントありが30件なら直帰率は70％になります（100 − 30 = 70）。
実務上の注意点
GA4の直帰率はエンゲージメント定義に依存するため、従来の指標と単純比較できません。イベント設計や滞在時間計測の設定が結果に影響します。ページごとの計測対象は「そのページから始まるセッション」に限定される点にも留意してください。
第4章: UAとGA4の直帰率の主な違い
定義の違い
- UA（ユニバーサルアナリティクス）は「セッション内でページが1つだけ表示された割合」を直帰率とします。たとえば訪問者が1ページ見て離脱すると直帰扱いになります。
- GA4は「エンゲージメントベース」です。セッションが10秒以上続く、コンバージョンやイベントが発生する、あるいは2回以上のページ／画面表示があると「エンゲージメントあり」と判断し、直帰に含めません。
計測の単位と対象
- UAはページビューやセッション中心で、Web向けに設計されています。
- GA4はイベント単位で計測し、Webに加えアプリや動画なども一貫して扱えます。例えば動画の再生やスクロールがイベントになると、そのセッションは直帰にカウントされにくくなります。
実務上の違いと注意点
- GA4は直帰率が低く出る傾向があります。単純な数値比較は避け、どの定義で計測しているかを常に確認してください。
- 報告やKPI設定では、エンゲージメント率や平均エンゲージメント時間などGA4の指標を使うと現状をより正確に伝えやすくなります。
GA4の直帰率が低くなる理由と実務的意義
理由
GA4は「ユーザーのアクション」を重視します。ページを開いただけで終わっても、スクロールや動画再生、リンククリックなどの「エンゲージメント」が発生すれば、そのセッションは直帰と見なされません。結果として、UA（ユニバーサルアナリティクス）より直帰率が低く出る傾向があります。たとえば、1ページだけ見て30秒以上滞在しスクロールすればGA4では“非直帰”になります。
実務的意義
実務では、従来の直帰率だけを改善目標にするのは不十分でした。GA4ではユーザーの具体的な行動を評価できるため、サイトの使いやすさやコンテンツの有効性を正確に把握できます。例えば、購入や問い合わせにつながる行動を重視して分析すれば、改善施策の優先順位を明確にできます。
実務での注意点
比較時は数値の意味が変わったことを周知してください。過去のUAデータと単純に比べると誤解が生じます。また、重要な行動をイベントとして設計し、測定できるように設定しましょう。レポートでは「エンゲージメント率」や「エンゲージドセッション」を併せて見ると有益です。
