はじめに
このドキュメントはハンドメイド作品を販売する方に向けた確定申告の入門書です。個人で販売を始めたばかりの方、売上や経費の扱いに不安がある方に特に役立ちます。
対象読者
– 個人でネット販売やイベント出店をする方
– 年間の売上や利益の判断に迷っている方
目的
– 確定申告が必要かどうかの基準をわかりやすく説明します
– 申告の流れ、経費にできるもの、節税の基本、必要書類や提出方法まで順を追って解説します
読むメリット
– 無駄な税負担を避けられる
– 必要な手続きを把握して安心して活動できる
本書の構成
第2章で申告の基本、第3章で手続きと具体例、第4章で開業届と節税、第5章で特定商取引法の対応、第6章で住民税の扱いを説明します。
まずは安心して読み進めてください。
ハンドメイド作家の確定申告ガイド
所得の分類
ハンドメイド作品の販売収入は、開業届を出しているかで扱いが変わります。開業届を出していなければ原則として雑所得、出していれば事業所得になります。事業として継続的に販売する場合は開業届を検討してください。
申告が必要になる基準
副業の場合は年間の所得(売上-経費)が20万円を超えると確定申告が必要です。専業の方は基礎控除後の所得が48万円以上で申告が必要になります。複数の副業がある場合は合算して判定します。
所得の計算と経費の例
所得とは売上から経費を引いた純利益です。経費には材料費、包材・送料、販売手数料、撮影費、制作に使った道具の減価償却費、会場出店料などが含まれます。例:年間売上20万円で材料費や手数料が5万円なら所得は15万円です。
フリマアプリでの取り扱い
自分の不用品を売るだけなら課税対象外です。ただし、仕入れて販売する、意図的に同じ商品を繰り返し売る場合は課税対象になります。領収書や仕入れ記録を残してください。
日常の実務ポイント
・売上と経費は帳簿や家計簿アプリで記録する。
・銀行口座やクレジットカードを分けると管理が楽です。
・領収書は税務署への説明用に保存する。
必要なら税理士や税務署の無料相談を利用して不安を解消してください。
確定申告の具体的な手続きと流れ
必要な証拠書類
確定申告では売上台帳や領収書・レシートが基本です。具体例として、材料(布・糸など)の購入領収書、梱包・発送の宅配伝票、ネットショップの売上データ、銀行振込の明細などを用意します。経費の内訳が分かるメモも役に立ちます。
手続きの流れ(ステップ)
- 経費の計算:材料費、包装費、発送費、光熱費の按分などを分類します。
- 売上の集計:月別や取引先別に集計すると分かりやすいです。
- 所得の計算:売上−経費で事業所得を出します。必要な控除(基礎控除など)も確認します。
- 税額の計算:所得に応じて税額を計算します。税額表や国税庁の計算ツールを利用できます。
- 申告書の作成・提出:e-Taxか紙で申告書を提出します。
- 納税または還付:税金を納めるか、還付があれば受け取ります。
提出方法:e-Taxと紙申告
e-Taxは自宅で手続きでき、処理が早い利点があります。マイナンバーカードやID・パスワード方式が必要です。紙申告は税務署窓口か郵送で提出し、控えを保管します。
青色申告のポイント
青色申告を選ぶと65万円控除などのメリットがあります。複式簿記や事前の届出が必要です。
保存期間と注意点
領収書や台帳は数年保存する必要があります。紛失を防ぐため、紙とデータの両方で管理すると安心です。
開業届と節税対策
開業届とは
開業届は事業を始めたことを税務署に知らせる書類です。提出するとその活動を「事業所得」として扱えます。継続的に作品を販売する場合は事業所得で申告すると所得税や住民税の負担を抑えやすくなります。
開業届を出すメリット
- 青色申告など節税制度を利用できる
- 事業用の口座や屋号で取引しやすくなる
- 経費を明確にして税負担を軽くできる
青色申告の主な特典
青色申告には帳簿を整えることで受けられる特典があります。たとえば、一定額の特別控除(簡易な帳簿は少額、複式簿記で大きな控除)や、家族に支払う給与を経費にできる場合があります。利点を得るには所定の帳簿づけが必要です。
手続きと帳簿の実務ポイント
開業届と並んで青色申告承認申請書を用意します。税務署へ持参や郵送で提出できます。日々の売上と領収書を記録し、経費は用途ごとに整理します。別口座を作ると管理が楽になります。会計ソフトやアプリを使えば負担が減ります。
節税の具体例と注意点
材料費、梱包・発送費、機材購入、オンライン出店の手数料などは経費になります。自宅の一部を作業場に使う場合、光熱費などを按分して経費にできます。ただし私的支出を経費に混ぜないこと、記録をきちんと残すことが重要です。税務署や税理士に相談して最適な方法を選びましょう。
特定商取引法への対応
はじめに
ハンドメイド作品を継続的に販売する場合、特定商取引法に基づく表記が必要です。これは購入者に事業者情報や追加費用を明示するためのルールで、個人でも反復・継続して販売する場合に該当します。
必要な表記項目(代表例)
- 事業者名(屋号または氏名)
- 代表者名
- 事業所在地(住所)
- 電話番号、メールアドレス
- 商品代金および消費税の扱い
- 送料・手数料など商品代金以外の必要料金
- 支払方法と支払時期
- 商品の引渡し時期
- 返品・交換の条件
- 販売数量の制限や販売条件
具体例:送料は「全国一律500円(税別)」、支払方法は「クレジットカード、銀行振込」を明記します。
表示方法のコツ
- ネットショップ:フッターや商品ページに見やすく表示します。リンクを目立たせると親切です。
- SNS販売:プロフィール欄や固定投稿に事業者情報と問い合わせ先を載せ、注文時に確認できるようにします。
- イベント・委託販売:ブースや納品書に屋号と連絡先を明示します。
注意点と対応
- 個人名での表示は問題ありませんが、住所を公開したくない場合は問い合わせ用のメールや専用電話(または事務所住所)を用意します。
- 返品ポリシーは明確にし、条件(不良品のみ可、到着後何日以内など)を具体的に示します。
- 表示内容を変更したら速やかにサイトや案内を更新します。
トラブル回避のポイント
購入者が問い合わせやすい連絡手段を用意し、注文記録や領収書は必ず保存します。表示漏れや誤表記があると消費者とのトラブルにつながるため、分かりやすく丁寧に記載してください。
住民税の申告
ポイント
副業の所得が年間20万円以下で確定申告をしなくても、確定申告を行わない場合は居住地の自治体へ住民税の申告が必要です。利益が1円でもあれば申告義務があります。
誰が申告するか
会社員で給与から住民税が天引き(特別徴収)される人でも、会社での年末調整や確定申告をしていない副収入がある場合は自治体へ申告します。個人事業主やフリマ・ハンドメイドで販売している人も同様です。
提出先と期限
提出先は住民票のある市区町村役所の税務課や窓口です。期限は自治体で異なりますが、毎年春ごろに申告を求められることが多いです。窓口持参、郵送、自治体のオンライン窓口で提出できます。
必要書類(例)
- 収入がわかる書類(売上台帳、振込明細、レシート)
- 経費を示す領収書
- 本人確認書類(運転免許証等)
- マイナンバーが必要な場合があります
申告の流れ(簡単ステップ)
- 売上と経費を整理して利益を計算します。例:売上10万円−経費6万円=利益4万円
- 市区町村の申告書を入手します(窓口・ダウンロード)
- 必要事項を記入して書類を添付し提出します
- 自治体からの連絡で税額や納付方法(特別徴収か普通徴収)を確認します
注意点
- 利益が少額でも申告しないと後で追徴課税や延滞金の対象になります。例として利益1円でも申告が原則です。
- 会社に副収入を知られたくない場合は、自治体に相談し普通徴収(自分で納付)を選べるか確認してください。
分かりにくい点があれば、住んでいる市区町村の税務窓口に相談すると安心です。












