第1章: はじめに
本記事の目的
本記事は、英国のメーカーSolid State Logic(SSL)が手掛けるプロフェッショナル向けデジタルミキサーについて、分かりやすく解説することを目的とします。主にSSL L550 PlusとSSL Oracleの設計思想、音の特性、操作性、接続性や拡張性に触れます。現場での使い方を想定した具体例を交え、導入検討や運用の参考になる情報をお届けします。
対象読者
ライブエンジニア、劇場音響担当、放送技術者、機材導入を検討するプロや施設の管理者、またデジタルコンソールに興味がある方が対象です。専門用語は必要最小限に抑え、初めて読む方でも理解できる表現で説明します。
本記事の構成と読み方
第2章でSSL L550 Plusの特徴と用途を詳しく説明します。第3章でSSL Oracleのアナログとデジタルの融合設計を取り上げます。両章では操作画面の例や接続イメージ、適した運用シーンを具体的に示しますので、目的に応じて章を参照してください。
SSL L550 Plus:プロフェッショナルグレードのデジタルコンソール
概要
SSL L550 Plusは最大256入力チャンネルに対応するハイエンドのデジタルミキシングコンソールです。大規模ライブ、スタジオ、放送など多様な現場を想定して設計されており、96 kHz・96ビットの浮動小数点処理で高品質な音声を保ちます。19インチのタッチスクリーンと物理フェーダー、ロータリーエンコーダーを組み合わせた直感的な操作性が特長です。
主な特徴
- 入力対応:最大256チャンネル。多人数バンドや大型イベントに適します。
- 処理性能:96 kHz/96ビット浮動小数点により細かなダイナミクスを残します。
- 多様な入出力:アナログ、AES/EBU、MADI、Danteに対応。Danteはネットワーク経由で多数のチャンネルを扱う方式、MADIは長距離伝送に強い方式です。
- 操作系:タッチスクリーンで視覚的に操作し、フェーダーやロータリーで微調整します。
操作性とワークフロー
画面でグループやバスを視認しつつ、フェーダーで即座に音量調整できます。プリセットやシーン管理機能でステージ移行を素早く行えます。リモートコントロールも可能で、FOH以外の場所からモニタリングや変更を行えます。
音質と信頼性
高精度の内部処理と堅牢な設計により、長時間使用でも安定したパフォーマンスを発揮します。ライブ現場での信頼性を重視し、冗長電源やバックアップ設定に対応するシステムとも組み合わせやすいです。
設置と取り扱い
寸法は48.3cm×18.5cm×66.5cm、重量24kgで比較的コンパクトながら堅牢です。ラックや専用スタンドに載せて運用しやすく、ツアーや常設スタジオどちらにも適しています。
推奨される使用例
フェスやツアーのフロントオブハウス、放送のミックス作業、大規模なスタジオ録音などで特に力を発揮します。多チャンネルを扱う現場で、効率よく高音質なミックスを行いたい場合に最適です。
SSL Oracle:アナログとデジタルの融合コンソール
概要
SSL Oracleは、伝統的なSSLサウンドを守りつつデジタル制御を組み合わせた24チャンネルのインラインミキサーです。アナログ回路の温かみを残しながら、ActiveAnalogue™による精密なコントロールを実現します。例えば、スタジオでのポップスや映画のダイアログ作業など幅広く使えます。
主要な機能
- 入出力とバス:4ステレオミックスバス、16トラックバス、10オーギュリアリーバス、8ステレオFlexグループを搭載し、最大112入力まで対応します。
- マイクプリとバス:PureDriveマイクプリとORIGIN電流駆動バスにより、ダイナミックで明瞭な音像を得られます。
- チャンネルストリップ:入力ゲイン、ハイパスフィルター、EQ、モーターフェーダーを備え、高解像度スクリーンで直感的に操作できます。
音作りとモニタリング
Dolby Atmos対応やM/Sエンコーディング、クラシックVUメーター表示など多彩な機能で、立体的なミックスや繊細な音作りが可能です。実際の例では、映画の劇伴で高さ方向の定位を作る際にAtmos出力が役立ちます。
設置と運用のポイント
アナログ回路は13Uの19インチラックに収まり、設置の柔軟性が高いです。統合プロセッシングやSSL Dynamic Automation Systemにより、ライブ現場でもスタジオでも安定した自動化と一貫したサウンドが得られます。












