cdnとzoomとus障害解析から学ぶ最新インフラ戦略の全貌

目次

はじめに

目的

本章では、本ドキュメントの目的と読み方を丁寧に説明します。検索キーワード「cdn zoom us」に関する調査結果をまとめ、特に2025年4月16日に発生したZoomの大規模DNS障害を中心に扱います。障害の原因、影響範囲、復旧の流れ、そしてZoomのCDNやDNSの技術的背景を分かりやすく解説します。

対象読者

IT運用者、ネットワーク担当者、技術に関心のある一般読者を想定しています。専門知識がなくても理解できるよう、専門用語は最小限にし、具体例で補足します。

本ドキュメントの構成

全8章で構成します。第2章で障害の概要を示し、第3〜第7章でDNSやTLD、Route53、登録者側の制限など技術的側面を詳述します。第8章ではCDN技術とZoomのインフラ戦略を解説します。各章は独立して読めるように配慮しています。

2025年4月16日のZoom大規模障害の概要

概要

2025年4月16日、Zoomは世界規模の大規模障害を経験しました。障害はUTCで18:25頃に初めて観測され、おおむね2時間継続しました。20:12 UTCごろからサービスは段階的に復旧し始めましたが、一部の利用者は20:30 UTCまで断続的な接続障害を報告しました。

タイムライン

  • 18:25 UTC: 初回観測。ユーザーがログインや会議参加でエラーを確認。
  • 約2時間の全体的な影響。多くの機能でアクセス不能となる状態が続きました。
  • 20:12 UTC: サービス復旧の兆しが現れ始める。
  • 20:30 UTC: 多くのユーザーで通常利用が回復した一方、断続的な問題は残存。

影響の特徴

この障害はZoomの全サービスへのアクセス不能を伴い、世界中の会議や授業、業務に深刻な影響を与えました。例として、会議に参加できない、録画やチャットが使えないといった問題が広く報告されました。

次章へのつなぎ

技術的な原因は後の章で詳しく説明しますが、本章では規模と経過を把握しておくことが重要です。

DNS層での障害メカニズム

概要

DNS(ドメインネームシステム)はドメイン名をIPアドレスに変換します。今回の障害はこの変換が止まったため、zoom.usへの接続が世界中でできなくなりました。ThousandEyesのテストではzoom.usとサブドメインの可用性が完全に低下し、各地のエージェントがIPを解決できませんでした。

DNSの基本と役割

DNSは階層構造です。利用者の端末→再帰的リゾルバ(ISPなど)→TLD(トップレベルドメイン)ネームサーバ→権威ネームサーバと問い合わせが進みます。各段階で名前とIPの対応が返され、通信先が決まります。キャッシュも動作し、短時間は過去の結果を使います。

障害の具体的メカニズム

今回のように「名前が解決できない」状況は主に次の原因で起きます。
– TLDや権威ネームサーバに必要なレコードが存在しない、または削除された。
– ネームサーバへの到達経路が遮断される(ネットワーク障害やBGP経路の問題)。
– キャッシュが期限切れで、再問い合わせが失敗する。
これらが重なると、世界のリゾルバが一斉に名前解決に失敗します。

ThousandEyesの観察と意味

ThousandEyesは世界中の観測点からDNS応答とHTTP応答を確認します。観測ではDNSでの応答がなく、HTTP試験は当然失敗しました。DNSが根本的に動作しないと、アプリやブラウザはサーバーに到達できません。

TLDネームサーバーレベルでの記録欠落

概要

ThousandEyesのDNS Traceが示したのは、zoom.usのレコードがTLD(最上位ドメイン)ネームサーバーに存在しなかった点です。TLDネームサーバーはzoom.usに対して「存在しないドメイン(NXDOMAIN)」で応答していました。これにより、名前解決が始めの段階で止まってしまった可能性が高いと考えられます。

TLDネームサーバーとは

TLDネームサーバーは「.us」や「.com」などの最上位ドメインを管理するサーバーで、どのネームサーバーがそのドメイン(この場合はzoom.us)を扱うかを教えます。たとえば電話帳で市役所の窓口を案内する役割に似ています。

何が起きたか(仕組みの説明)

通常、DNS問い合わせはルート→TLD→権威ネームサーバーとたどります。TLDでzoom.usの情報がなければ、問い合わせはそこで「その名前は存在しない」と判断されます。したがって、最終的なサービスのサーバー情報に到達できず、利用者はZoomに接続できなくなります。

考えられる原因

・ゾーン情報の誤削除や更新ミス
・ドメイン登録機関(レジストリ)側の同期エラー
・自動化された更新プロセスの失敗
これらはいずれもTLDレベルでのレコード欠落を招くことがあります。

検出と対応の流れ

1) ThousandEyesのような外部トレースでTLDがNXDOMAINを返すことを確認
2) 登録業者(レジストラ)とレジストリへ連絡してゾーンの状態を照会
3) 権威ネームサーバーのゾーンが正しく公開されているかを確認し、必要ならバックアップから復元
4) TTLの設定や監視を見直し、再発防止策を導入

この章では、TLDレベルでの記録欠落がいかに早期の解決を困難にするかを示しました。外部の監視と登録情報の管理が重要です。

DNSの重要性と障害の影響範囲

説明

DNSはインターネットの「電話帳」のように働き、ドメイン名を使ってサービスの場所を教えます。正しいDNS情報がないと、ブラウザやアプリはどこに接続すればよいかわかりません。

今回の影響範囲(例)

  • 対象:zoom.us とその全サブドメイン(顧客のバニティ名含む)およびZoomのステータスページ
  • 表面化した症状:サービスに接続できない、DNS未解決、HTTP 502 Bad Gateway(zoom.com)

なぜDNS障害で広範囲が止まるのか

DNSが欠落すると、クライアントはサーバーのIPを取得できません。たとえバックエンドが正常でも、名前解決ができなければ接続が始まりません。直接IPでの接続も難しいです。多くのサービスは1つのIPで複数のドメインを扱い、TLSのSNI(サーバ名表示)が必要だからです。

障害が引き起こす具体的な困りごと

  • ミーティング参加や予定の表示ができない
  • モバイルアプリやAPI連携が失敗する
  • 企業のSSOやカレンダー同期が止まる

運用上の留意点(簡単な対策)

  • DNSの冗長化:複数の権威DNSプロバイダーを利用する
  • マルチロケーション監視:世界各地からの名前解決をチェックする
  • TTLの設定見直しと事前の障害対応手順の整備

これらの対策で影響範囲を狭め、復旧時間の短縮に役立ちます。

AWS Route53と公開DNSインフラの役割

概要

zoom.usの権威ネームサーバーはAWS Route53でホストされ、障害時もRoute53自体は到達可能で設定も正しかったという点が重要です。しかしTLD(トップレベルドメイン)側でのNSレコード欠落により、ユーザーのDNSクライアントはRoute53へたどり着けませんでした。

Route53の役割

Route53はドメインの公式な住所録として、問い合わせに対し正しいIPアドレスを返します。例えると、建物の番地が正しく登録されている郵便局のような存在です。Route53自体は応答できる状態でしたが、番地が電話帳に載っていないため利用されませんでした。

TLDレベル欠落の影響

親ゾーンにあるNS情報が欠けると、世界中のリゾルバは権威サーバーがどこか分からず問い合わせを止めます。結果として自社のネームサーバーが正常でも外部から到達不能になります。

公開DNSインフラの監視重要性と対策

公開DNSは親ゾーンやレジストラ側も含めて監視する必要があります。外部からの定期的な委譲(delegation)確認、複数の公共リゾルバからの監視、レジストラ設定の自動チェック、アラートの設定などが有効です。こうした監視を組み合わせると、Route53自体に問題がなくても親側の異常を早期発見できます。

DNS登録者による制限とサービス復旧

事象の内容

Zoomは、zoom.usドメインへのアクセスがDNS登録者による制限でブロックされていたことを認めました。登録者側の設定や手続きでドメインが名前解決されない状態になり、多くの利用者が接続できなくなりました。登録者レベルの制限は、DNSの上位で発生するため広範囲に影響します。

復旧の経過

ブロック解除後、20:12頃から順次アクセスが回復し始め、20:30までにほとんどのユーザーが再アクセス可能になりました。影響は短時間で広がったため、復旧も段階的に進行しました。

ユーザーが取るべき対処

DNSキャッシュのフラッシュで早く回復できる場合があります。主な手順は次の通りです。
– Windows: 管理者でコマンドプロンプトを開き、ipconfig /flushdns を実行します。
– macOS: ターミナルで sudo dscacheutil -flushcache; sudo killall -HUP mDNSResponder を実行します。
– iOS/Android: 機内モードのオン/オフ、または端末再起動でキャッシュを更新できます。
– ルーターやISPのキャッシュは手元で消せないため、時間経過を待つ必要があります。

ブラウザやアプリのキャッシュも影響するため、ブラウザの再起動やZoomアプリの再起動が有効です。問題が続く場合は、一時的に別の公開DNS(例:8.8.8.8)を試すことも検討してください。

CDN技術とZoomのインフラストラクチャ戦略

CDNとは何か

CDN(コンテンツ配信ネットワーク)は、画像やスクリプト、動画などをユーザーに近い拠点(エッジ)から届ける仕組みです。これにより、読み込みが速くなり負荷が分散します。具体例として、会議に使う静的ファイルやウェブサイトのページが各地のサーバーでキャッシュされます。

ZoomがCDNを使う理由

Zoomは世界中に利用者がいるため、遅延を抑え安定した配信が必要です。CDNは会議開始時のページ表示やミーティング資料の配布、ソフトウェア更新などで役立ちます。CDNはTLS終端や負荷分散も担い、サービスの応答性を高めます。

今回の障害とCDNの関係

ご提示の通り、今回の障害はCDNのバックエンド接続に影響を与えました。エッジとオリジンサーバー間の通信が途切れると、最新データの取得や認証処理に失敗し、ユーザーが会議に参加できなかったりウェブ機能が不安定になったりします。

インフラ戦略と対策

有効な対策は多層の冗長化です。具体的には複数のCDN(マルチCDN)を併用し、異なる経路で配信すること、オリジンを複数用意してフェイルオーバーを自動化すること、健康監視で問題を早期検知することが挙げられます。DNSの設定(例: 短めのTTLやRoute 53のような高度なレコード管理)と組み合わせると切り替えが速くなります。

利用者側の影響緩和

ユーザー端末では再試行やローカルキャッシュの活用で影響を和らげられます。Zoom側は段階的な機能縮小(映像を低解像度にするなど)で会議を継続する運用も可能です。

この章では、CDNの仕組みと今回の障害が示したインフラ設計の重要点、そして実務的な冗長化策を中心に説明しました。

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