webサイトの要件定義とは何か基本と効果を詳しく解説

目次

はじめに

本資料は、Webサイト制作における要件定義について、実務で使える知識を分かりやすくまとめたものです。要件定義の基本概念や目的、流れ、必要な項目、要件定義書の作り方などを順を追って解説します。プロジェクトの始め方や関係者との合意形成に役立つ実践的なポイントも含みます。

本章の目的

本章では、本資料の目的と読み方を示します。要件定義の全体像を把握して、次章以降を効率よく読み進められるようにします。どの立場の方でも実務にすぐ役立つことを目標にしています。

想定読者

  • 発注者(事業側)の担当者
  • プロジェクトマネージャーやPM補佐
  • デザイナーやフロントエンド/バックエンド開発者
  • 要件定義をこれから学ぶ方

本資料の使い方

各章は独立して読みやすく構成しました。まず第2章で要件定義の基本を確認し、必要に応じて第5章の要件定義書例を参照してください。実務に移す際は、章ごとのチェックリストを手元に置き、関係者と逐次確認しながら進めると効果的です。

この資料が、プロジェクトの失敗リスクを減らし、合意形成をスムーズにする一助になれば幸いです。次は第2章で要件定義の基本定義と役割について詳しく見ていきます。

要件定義の基本定義と役割

要件定義とは

要件定義は、作るWebサイトが何をするのかを明確にする作業です。目的やターゲット、必要な機能、デザインの方向性、公開時期などを具体化します。たとえば、ECサイトなら商品購入から決済までの流れ、問い合わせサイトならフォームや返信フローをはっきりさせます。

要件定義の主な役割

  • 関係者の共通認識を作る:クライアント、開発者、デザイナーが同じゴールを共有します。
  • 範囲と優先度を決める:何を最初に実装するかを決め、スコープの膨張を防ぎます。
  • 見積りとスケジュールの精度を高める:必要な作業や期間を予測しやすくなります。
  • リスク低減:あいまいな要求を減らし、手戻りを少なくします。

具体的に決める項目(例)

  • サイトの目的:情報提供、販売、ブランディングなど
  • ターゲット:年齢層や利用シーン
  • 機能:会員登録、検索、決済、コンタクトフォーム
  • デザイン指針:ブランドカラーや雰囲気
  • 非機能要件:表示速度、対応ブラウザ、セキュリティ
  • スケジュール・予算・成功指標(KPI)

関係者ごとの期待と役割分担

クライアントはビジネス目標を提示し、開発側は実現方法を提案します。デザイナーは見た目と操作性を作り、運用担当は公開後の維持管理を考えます。要件定義で役割を明確にすると、後工程での混乱を防げます。

要件定義で心がけること

あいまいな表現を避け、具体例や画面イメージで確認します。全てを完璧に決める必要はなく、優先度をつけて段階的に進めると現実的です。変更が出た場合の対応方法も事前に合意しておくと安心です。

要件定義に含まれる要素

制作の目的・背景

制作の意図や達成したいビジネス成果を明確にします。例えば売上向上、問い合わせ増加、ブランド認知向上などを具体的数値や期日で示すとわかりやすくなります。

実装すべき機能(UI/UXを含む)

ユーザーが使う具体的機能を列挙します。例:会員登録、検索、カート、決済、投稿機能。画面ごとに何をできるかを記載し、利用者の操作手順も書きます。

共通部品・コンポーネント

ヘッダー、フッター、ナビゲーション、ボタン、フォームなどサイト全体で使う部品を定義します。再利用性やデザインの一貫性を保つために必要です。

ページ数とコンテンツ種類

想定するページ数(例:トップ、商品一覧、商品詳細、お問い合わせ)と掲載するコンテンツ(テキスト、画像、動画、PDF)を決めます。

ユーザーフロー

訪問者の行動経路を図や文章で示します。例:広告→ランディング→商品詳細→カート→購入。離脱ポイントや誘導箇所も明示します。

必要なシステム

CMS、EC機能、検索エンジン、外部API連携など必要なシステムを列挙します。既存システムとの接続がある場合は仕様や制約を記載します。

スケジュールと制作体制

各工程の期日、担当者、レビュー・承認フローを明示します。制作と保守の役割分担も記載します。

非機能要件(性能・運用)

表示速度、同時接続数、バックアップ、ログ保管期間など運用に関わる条件を記載します。

権限・セキュリティ・法令対応

ログイン権限の設計、個人情報の取り扱い、利用規約や著作権対応など法的要素を明確にします。

要件定義の流れと各段階

現状分析と課題の整理

現状のサイトや業務フローをデータとヒアリングで確認します。アクセス解析で流入経路や離脱ページを把握し、コンテンツの欠落や運用上の手間を洗い出します(例:問い合わせフォームが使いにくく、離脱率が高い)。

仮説の立案と方向性の決定

解決すべき課題をもとにサイトのコンセプトや大まかなサイトマップを作ります。例:トップ/商品一覧/商品詳細/カート/問い合わせ。必要機能(検索、会員、CMS連携など)と優先度を決め、簡単なワイヤーや画面遷移で検証します。

関係各所との合意形成

分析結果と仮説を関係者に分かりやすく提示し、要件の優先順位とスコープを合意します。ステークホルダーの決裁者を明確にし、合意内容は議事録や承認サインで記録します。

要件定義書の作成

合意した内容を要件定義書にまとめます。構成は背景・目的、スコープ、機能要件、非機能要件、運用体制、スケジュール、検収基準などです。制作会社がドラフトを作り、依頼側と共同で精査・承認します。

実務的な注意点

必須(Must)と実現希望(Want)を分け、段階的に実装する計画を立てます。簡易プロトタイプで早めに確認し、変更管理と版管理を徹底すると開発がスムーズになります。

第5章: 要件定義書に含めるべき項目

はじめに

要件定義書はプロジェクトの設計図です。読み手が迷わないよう、5W1Hを基本に必要な情報を抜けなく書きます。以下は実務でよく使う項目です。

5W1Hに沿った必須項目

  • Why(目的・背景)
  • Web制作の目的、現状の課題、期待する効果。例:問い合わせ数を月間50件増やす。
  • Who(ターゲット)
  • 想定する利用者層、年齢、利用シーン。例:30〜40代の忙しいビジネスパーソン。
  • When(スケジュール)
  • 着手日、主要マイルストーン、公開予定日。
  • What(範囲と機能)
  • サイト構成(ページ一覧、サイトマップ)、必要な機能と優先度。例:お問い合わせフォーム、CMS、決済連携。
  • Where(提供環境)
  • 公開サーバー、ドメイン、対応ブラウザ・端末。
  • How(実現方法)
  • 使用技術、外部API、既存システムとの連携方法の概要。

その他の重要項目

  • 成功指標(KPI):測定方法と目標値を明確にします。例:PV、CVR、滞在時間。
  • 非機能要件:性能、可用性、セキュリティ、運用体制。
  • 制約と前提:予算、法令、既存資産の制約。
  • 役割分担と承認フロー:担当者と決裁者を明示します。
  • 納品物と検収基準:納品形式、検収の合格条件。
  • 変更管理:要件変更時の手続きと影響範囲の扱い。

どの項目も具体的な数値や例を添えると誤解が減ります。まずは簡潔に書き、必要に応じて付録で詳細を示すと実務で使いやすくなります。

機能要件と非機能要件の分類

機能要件とは

機能要件は「何をできるようにするか」を示します。具体的な機能の一覧です。例:
– お問い合わせフォーム(入力項目、確認画面、送信完了メール)
– 商品検索(絞り込み、ソート、キーワード検索)
– 会員登録・ログイン(メール認証、パスワード再発行)
– 管理画面(商品登録、注文管理)
各機能は受け入れ基準(期待する動作)を明確にしてください。例:「メール送信は送信ボタン押下後30秒以内」など、検証できる形にします。

非機能要件とは

非機能要件は品質面の要望です。主な項目と例:
– 性能:ページ表示を2秒以内にする、同時接続数1000人に耐える
– 可用性:稼働率99.9%を目標にする
– セキュリティ:SSL必須、パスワードはハッシュ化、脆弱性対応
– ユーザビリティ:スマホ対応、画面読み上げへの配慮
– 保守性:ログ取得・監視、バックアップ方針
項目は数値や手順で定義すると検証しやすくなります。

分類のコツと実務ポイント

  1. 測定可能に書く:曖昧な表現を避け、目標値を入れます。
  2. 優先度を付ける:必須・優先・任意で整理します。
  3. 検証方法を決める:受け入れ基準とテスト手順を添えます。
  4. 関連付け:ある機能が非機能要件に影響することを明記します(例:検索機能は性能要件と密接)。
    これらを守ると、開発中の認識ズレを減らせます。

要件定義と設計の違い

目的の違い

要件定義は「何を作るか」を明確にします。サイトの目的、利用者ができること、優先度や制約を洗い出します。一方、設計は「どう作るか」を詰めます。画面遷移やデータの流れ、技術や構成を決めて実装に渡します。

成果物の違い

要件定義の成果物は目的・機能一覧・非機能要件などです。具体例:ログインが必要、検索機能、対応ブラウザなど。設計の成果物は画面設計、ER図、API仕様、インフラ構成図などです。

役割と時期

要件定義は企画担当やビジネス側と密に進めます。設計は開発者やインフラ担当が中心になります。要件定義が固まってから設計に入るのが普通です。

実務上の注意点

要件があいまいだと設計で手戻りが発生します。早めに関係者で合意を取り、小さな例で確認しながら進めると良いです。設計段階でも不明点は要件に戻して確認してください。

チェックポイント

・要件が誰にとっての価値か明確か
・設計で要件を実現できるかの検証
・変更時の影響範囲を見える化すること

このように、要件定義は計画作り、設計は計画を形にする工程と考えてください。

要件定義の重要性と効果

重要性

要件定義はプロジェクトの設計図に当たります。関係者の認識を揃え、目標や優先度を明確にすることで、後続作業の手戻りを減らします。早い段階で疑問点を洗い出すと、無駄な開発や仕様変更を避けられます。

期待できる効果

  • 作業の効率化:サイトマップやワイヤーフレーム作成がスムーズになります。
  • 品質向上:成果物のイメージが共有されるので、期待と実際の差を小さくできます。
  • コスト削減:仕様の曖昧さによる後戻りが減り、工数や予算を節約できます。
  • リスク低減:要件の抜けや制約を事前に把握でき、問題発生を未然に防げます。

具体例

例えばECサイト構築なら、対象ユーザー、決済方法、配送条件を明確にします。これにより画面設計やテスト項目が早く確定し、開発期間を短縮できます。

運用での注意点

要件定義は作りっぱなしにせず、関係者と定期的に見直してください。要件はプロジェクトの進行や外部状況で変わるため、変更管理のルールを決めておくと混乱を防げます。

実務的な進め方のポイント

はじめに

要件定義は「何のために」「誰が」「いつまでに」を明確にする作業から始めます。最初に5W1Hで整理すると抜け漏れを防げます。

5W1Hで考える実例

  • Who(誰が):発注者、利用者、運用担当者を特定します。例:商品管理担当者が主利用者。
  • What(何を):必須機能と期待される機能を分けます。例:在庫一覧は必須、分析レポートは任意。
  • Why(なぜ):目的と効果を一文で書きます。例:在庫ミスを減らし出荷効率を上げるため。
  • When(いつまでに):納期とマイルストーンを設定します。
  • Where(どこで):利用環境(PC/スマホ/社内ネットワーク)を明示します。
  • How(どのように):想定される操作や連携先を記載します。

ステークホルダー整理と合意形成

関係者を図にして役割と決定者を明示します。ワークショップで認識を揃え、議事録と決定事項を残します。

ドキュメントと管理方法

要件定義書にバージョンを付け、ベースライン化して承認ルートを明確にします。変更は必ず影響範囲とコスト試算を付けます。

優先順位とプロトタイピング

要件に優先度を付け(必須/望ましい/任意/除外)、早期に簡易プロトタイプで確認します。画面イメージは早めに共有すると齟齬が減ります。

受け入れ基準とテスト計画

各要件に受け入れ条件を設定します(例:検索が3秒以内に結果表示)。受け入れ試験の計画を要件段階で用意します。

変更管理とリスク対応

変更要求は書面で提出し、優先度・影響・スケジュールへの影響を評価します。リスクは定期的に見直し、対策を記録します。

コミュニケーションの頻度

定例ミーティングと短いレビューを組み合わせます。要件の重要部分は何度も確認して合意を取ります。

実務チェックリスト(短縮)

  • 5W1Hでの初期整理
  • ステークホルダーの明確化
  • 優先度付けとプロトタイプ確認
  • 受け入れ基準の設定
  • 変更管理フローの整備
  • 定期レビューと議事録の保管

これらを丁寧に回すことで、実務での要件定義は安定して進みます。

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