はじめに
概要
本記事は、AWS東京リージョン(ap-northeast-1)におけるアベイラビリティゾーン(AZ)の構成や識別方法、最新のAZ情報、廃止予定のAZへの対応、他リージョンとの比較、システム構成の選択肢、周辺サービスの展開についてまとめます。IT担当者や設計者が実務で使える情報を中心に記載します。
目的
読者が東京リージョンのAZを正しく理解し、冗長化や移行の判断を自信を持って行えるようにします。具体例や注意点を交えて分かりやすく解説します。
想定読者
- クラウドを使っているエンジニアや運用担当者
- システム設計を検討しているプロジェクトマネージャー
- 初めてAWSの可用性概念に触れる方
本章での扱い
以降の章で、AZの一覧と識別方法、廃止時の対応手順、大阪リージョンとの比較、設計パターン、関連サービスの展開を順に説明します。本章では目的と全体像を示し、読み進める際のポイントを整理します。
注意事項
本記事は技術方針や操作手順の一般的な解説を目的とします。実際の運用ではAWSの公式ドキュメントや管理コンソールで最新情報を確認してください。
AWS東京リージョンのアベイラビリティゾーン一覧
概要
提供された情報によると、東京リージョンは ap-northeast-1a、ap-northeast-1b、ap-northeast-1c、ap-northeast-1d の4つのアベイラビリティゾーン(AZ)で構成されています。ただし、2025年2月28日に「apne1-az3」に対応するAZが廃止される予定で、廃止後は3つのAZになります。
現在のAZと注意点
AZ名(ap-northeast-1a など)は見かけ上の名前です。実際の物理的なゾーンはAWSアカウントごとにランダムに割り当てられます。あるアカウントで “1a” が北側のデータセンターを指しても、別のアカウントでは別の場所を指します。
AZ名とAZ IDの確認方法
AWS CLIで確認する例:
aws ec2 describe-availability-zones –region ap-northeast-1 –query “AvailabilityZones[*].[ZoneName,ZoneId]” –output text
マネジメントコンソールでは、EC2 の「Availability Zones(アベイラビリティゾーン)」画面で確認できます。ZoneName が ap-northeast-1a 等、ZoneId が apne1-azX のように表示されます。
運用上のポイント
- 廃止予定のAZにリソースがないか早めに確認してください。EC2、EBS、ENI、RDS のマルチAZ設定などに注意が必要です。
- インフラはAZ名に依存しない設計を推奨します。具体的にはサブネットをAZごとに用意し、リソースを複数AZに分散させます。
- IaC(CloudFormation/Terraform)や運用スクリプトで特定のZoneNameを直接参照している場合、見直しとテストを行ってください。
以上が東京リージョンのAZ一覧と運用上の基本ポイントです。
アベイラビリティゾーン廃止に伴う対応
概要
2025年2月28日に東京リージョンのAZ「apne1-az3」が廃止されます。影響を受けるリソースはAWS Health Dashboardで確認し、該当するリソースを他のAZへ移行または再構築する必要があります。不要な非アクティブ資源は削除を推奨します。
対応手順
- 対象確認:AWS Health Dashboardとリソース一覧(EC2、EBS、RDS、ELB、EFSなど)を照合します。自動タグやスクリプトで一覧を取得すると漏れが減ります。
- 優先度付け:本番→ステージング→開発の順で優先度を決めます。ダウンタイムの許容範囲を各サービスごとに定めます。
- 移行実施:スナップショットやAMIを作成し、別AZへ復元します。ロードバランサーやサブネットの設定も更新してください。
- 削除と整理:非アクティブなボリュームやスナップショットを削除しコストを削減します。
- 検証:移行後に接続・性能・監視を確認します。テストユーザーでの動作確認を行ってください。
注意点
- IPアドレスやAZ固有の設定は移行で変わることがあります。したがって、依存関係を事前に洗い出してください。
- リージョン間移行ではなくAZ内の移動を基本とします。作業はメンテナンスウィンドウ内で行うと安全です。
実例(短く)
EC2とEBSなら、AMI作成→別AZでインスタンス起動→EBSをアタッチ→動作確認→旧リソース削除、の流れが基本です。
大阪リージョンとの比較
概要
国内には東京リージョンのほかにアジアパシフィック(大阪)リージョン(ap-northeast-3)があります。大阪リージョンは3つのアベイラビリティゾーン(AZ)で構成され、AZ1は「apne3-az1」というAZ IDが割り当てられています。
規模と配置の違い
東京は多数のAZやサービスが集中し、大規模な構成に向きます。大阪はAZが3つでコンパクトな設計となるため、地域分散や災害対策で補助的に使う場面が多いです。例として、本番を東京に置き、大阪を待機リージョンにする構成がよく使われます。
レイテンシとユーザー体験
ユーザーが東京圏に多ければ東京を優先します。関西圏や西日本のユーザーを重視する場合は大阪を利用すると応答が改善します。複数リージョンを使うと、広域にわたる可用性が高まります。
コストと運用の観点
クロスリージョンのデータ転送やレプリケーションは追加コストが発生します。小規模なサービスでは大阪をメインにし、必要に応じて東京にバックアップを置く運用も検討できます。
推奨の使い分け例
- 本番:東京の複数AZで稼働、DR(復旧拠点):大阪にレプリカを配置。
- 地域最適化:関西向けのフロントは大阪、全国向けは東京で処理を分散。
注意点
AZ IDはリージョンごとに固有です。apne3-az1は大阪専用の識別子なので、設定やスクリプトで混同しないようにしてください。ネットワーク接続や権限設定も事前に整備しておくと移行やフェイルオーバーが円滑になります。
システム構成の選択
構成の選択肢
東京・大阪いずれのリージョンでも、主に「シングルAZ」と「マルチAZ」を選べます。シングルAZは単一の可用性ゾーンにリソースを置く構成で、小規模サイトや開発環境で使いやすいです。マルチAZは複数のAZにリソースを分散し、障害耐性を高めます。例えば、Webサーバーを2つのAZで稼働させ、DBは同期レプリカで冗長化します。
選ぶ基準
- 可用性: サービス停止を避けたいならマルチAZを優先します。
- コスト: マルチAZはネットワークと運用コストが増えます。
- 遅延要件: 同一AZ内通信は低遅延です。遅延に厳しい処理は設計を工夫します。
- 運用負荷: 複数AZは運用が複雑になります。
推奨構成
本番環境は原則マルチAZを推奨します。例として、ロードバランサーでトラフィックを振り分け、Web層を各AZに配置し、DBはマスターとフェイルオーバー用のレプリカを別AZに置きます。コストは上がります。しかしダウンタイムと影響範囲を小さくできます。
運用時の注意点
バックアップと復旧手順を定期的に検証してください。フェイルオーバー試験や監視アラートの整備が重要です。ネットワーク転送量やデータ整合性の確認も忘れないでください。
周辺サービスの展開
エッジロケーションの役割
東京リージョンには20個のエッジロケーションがあり、主にコンテンツ配信やレイテンシー削減に使います。具体例として、静的ファイルを配信する際にCloudFrontを使うと、ユーザーは近くのエッジから応答を受け取り表示が速くなります。これによりバックエンド負荷も下がります。
主要サービスと活用例
- CloudFront:静的サイトや動画配信、キャッシュ制御でレスポンス改善。ログ収集やTLS終端も可能です。
- Lambda@Edge / CloudFront Functions:リクエスト改変や認証処理をエッジで実行し、オリジン負荷を減らせます。
- Route 53・Global Accelerator:DNSフェイルオーバーやグローバルなIPによる接続安定化に使います。APIやゲームの低遅延接続に有効です。
- WAF・Shield:エッジで攻撃を遮断し、アプリケーションの可用性を守ります。
Local Zone(ap-northeast-1-tpe-1a)の扱い
台湾にあるLocal Zoneは東京リージョンに属し、コントロールプレーンは東京が担当します。つまり、リソース管理や課金は東京リージョンと同様に扱いますが、ユーザーに近い場所で低遅延の処理を行えます。データ所在地要件がある場合は配置先と通信経路を確認してください。
設計・運用上の注意点
- キャッシュ戦略を明確にし、キャッシュヒットを最大化するとコストが下がります。
- エッジでのロジックは簡潔に保ち、デバッグ・ロギング設計を行ってください。
- Local Zoneを使うと通信経路が変わるため、ネットワーク設定や監視項目を追加します。
- コスト、コンプライアンス、障害時のフォールバック経路を事前に決めます。
展開手順の簡易例
1) CloudFrontディストリビューション作成(オリジンにS3やALBを指定)
2) 必要なLambda@Edgeを作成して関連付け
3) Route 53でDNS設定とフェイルオーバーを用意
4) WAFとShieldで保護、ログと監視を有効化
5) Local Zoneでの低遅延要件があれば、東京リージョンでリソースを管理しつつLocal Zoneを活用する設定を追加
これらを組み合わせることで、東京リージョンとそのエッジ群、そして台湾のLocal Zoneを効果的に活用できます。












