はじめに
本資料は、ハイレベルサイトマップと一般的なサイトマップの違いを分かりやすく整理したものです。設計段階での意思決定や運用方針の共有に役立つポイントを中心に解説します。
- 目的:ハイレベルサイトマップの定義、作成時期、用途、メリット、作成方法、ECサイト運用での重要性を明確にすること。
- 対象読者:企画担当者、EC運営者、デザイナー、開発担当者など、サイト設計に関わる方。
- 本資料の読み方:第2章で全体像を示し、第3章以降で種類や違い、具体的な作成手順や運用上の意識点を順に説明します。実務で使える視点を重視し、事例を交えて丁寧に進めます。
ハイレベルサイトマップとは
定義
ハイレベルサイトマップは、Webサイト全体の骨組みを簡潔に示す図です。主要なページやセクションと、それらの大まかなつながりを俯瞰できます。ページ単位の細かい情報は省き、構造の「見取り図」を作ることが目的です。
何のために使うか
プロジェクトの初期段階で関係者の共通認識を作るために使います。設計の方向性や情報のまとまり、主要な導線を早めに確認できます。公開資料ではなく、内部での意思決定や設計の基礎資料になります。
主な特徴
- 深さは浅く、階層は少ない
- 各ノードはセクション名や代表ページで表現
- リンクは大きな導線だけ示す
- パワーポイントやスプレッドシート、ホワイトボードで作成しやすい
作成のタイミングと関係者
サイト設計のキックオフ時や要件整理の段階で作ります。プロジェクトマネージャー、UXデザイナー、開発リード、営業やマーケ担当が主な利用者です。
読み方と具体例
ノードを「カテゴリ」や「主要ページ」として読みます。たとえば「トップページ → 商品一覧 → 商品詳細」のような主要な導線を示します。各ノードに目的(例:購入導線、情報提供)を付けると分かりやすくなります。
作成時の注意点
詳細に踏み込みすぎないことが重要です。あまり細かくすると本来の目的を失います。優先度やユーザーの主要な導線を明示し、関係者と確認しながら繰り返し更新してください。
サイトマップの種類と違い
概要
サイトマップは主に「ハイレベルサイトマップ」と「詳細サイトマップ」の2種類に分かれます。ハイレベルはサイト全体の大まかな構造を示し、詳細は個々のページやリンクのつながりを細かく書きます。ハイレベルの後にディレクトリマップを作り、ページ群ごとの内容や階層を整理します。
ハイレベルサイトマップ(概略)
- 目的:関係者にサイトの全体像を素早く伝える
- 表現:トップページ、主要カテゴリ、重要な機能(例:カート、マイページ)をボックスで示す
- 利点:設計の初期段階で方針を共有しやすい
詳細サイトマップ(ページ単位)
- 目的:実装や設計の指示書として使う
- 表現:各ページのURL、テンプレート、主要なリンクやメタ情報を列挙
- 利点:開発者や制作担当が仕様を正確に把握できる
ディレクトリマップの位置づけ
ハイレベルと詳細の中間で、カテゴリごとのページ構成やファイル配置を明確にします。特にECサイトではカテゴリ→商品一覧→商品詳細という流れを具体化します。
使い分けと順序
まずハイレベルで方針を決め、次にディレクトリマップでカテゴリやフォルダを整理し、最後に詳細サイトマップでページ単位の仕様を詰めます。関係者の確認を早めに行うと、手戻りを減らせます。
注意点
作成後もサイトの変化に合わせて更新することが大切です。最初から詳細にこだわりすぎると全体像が見えにくくなるため、段階を踏んで作ることをおすすめします。
ハイレベルサイトマップのメリット
可視化で全体が見える
ハイレベルサイトマップはサイトの骨組みを一目で示します。ページやカテゴリの抜けや重複が見つけやすく、たとえば同じ商品が複数のカテゴリに重複登録されているといった問題を早期に発見できます。手戻りを減らし作業を効率化します。
ユーザー導線の把握とCVR改善
主要な導線(例:トップ→カテゴリ→商品→カート)を図にすることで、離脱ポイントが見えます。導線を整理すれば購入までのステップが短くなり、コンバージョン率改善につながります。A/Bテストの設計も行いやすくなります。
プロジェクト管理の効率化
各ページの役割や優先順位を明確にすると、担当割り当てや工数見積もりが簡単になります。制作・開発・編集の進捗管理がスムーズになり、リリース遅延のリスクを下げられます。
関係者間の認識合わせと外注管理
ビジュアルな設計図は、クライアント、社内チーム、外注先の共通言語になります。仕様のズレを防ぎ、修正回数を減らせます。外注先への発注時にも条件を明確に伝えられます。
実務のポイント
簡潔に作ること、定期的に見直すこと、そして関係者がアクセスできる場所で管理することが重要です。こうした運用を続ければ、サイトの改善スピードが上がります。
ハイレベルサイトマップの作成方法
ステップ1: 必要なコンテンツを洗い出す
まずサイトで提供する情報や機能をすべて書き出します。トップページ、カテゴリ、商品詳細、カート、決済、会員ページ、お問い合わせ、FAQ、会社情報などを具体例として挙げます。関係者への聞き取りや既存のアクセス解析、競合サイトの確認が役立ちます。
ステップ2: ページをグループ化する
洗い出した要素を目的別にまとめます。例:購入に関わるページ(カテゴリ→商品→カート→決済)、情報閲覧(ブログ→特集→FAQ)、サポート(お問い合わせ→修理案内)。カードソーティングや付箋で視覚的に整理すると分かりやすくなります。
ステップ3: ページの移り変わり(ユーザーフロー)を検討する
代表的な利用シーンを想定して流れを描きます。例:トップ→カテゴリ→商品→カート→決済。検索やフィルター、外部広告からの流入も想定して、入口と出口、主要なCTA(購入ボタン、問い合わせ)を明確にします。
ステップ4: ハイレベル図を作成する
主要なページ群をボックスで表し、矢印で遷移を示します。ページの優先度やアクセス頻度を注記すると設計上の判断が楽になります。手書きのラフでも構いませんし、図ツールで簡単に作成しておくと共有がスムーズです。
ステップ5: 検証と反復
チームや実際のユーザーに見せてフィードバックを受けます。問題点があればページの配置や遷移を調整します。サイト構築後はHTMLサイトマップと照合して抜けや冗長を確認し、必要に応じて更新します。
ECサイト運用における重要性
概要
ECサイトを効果的に運用するには、ハイレベルサイトマップが欠かせません。サイト全体の構造を視覚化し、主要なページや導線を示すことで、関係者が共通理解を持てます。これにより、導線設計や改善案が具体的になります。
なぜ重要か
- ユーザー導線を早い段階で把握できます。たとえば、トップページから商品一覧、商品詳細、カートへと続く流れを図にするだけで、離脱ポイントを特定しやすくなります。
- 関係者間の認識ずれを減らします。ディレクター、デザイナー、エンジニアが同じ地図を見れば、要件の食い違いを防げます。
実運用での活用例
- UX改善の優先順位づけ:アクセス解析で離脱が多いページをサイトマップ上で強調し、改善計画を立てます。
- 新機能導入時の影響確認:会員機能やレコメンドをどの位置に入れるかを検討し、他ページへの影響を可視化します。
- チーム間コミュニケーション:ミーティングでサイトマップを用いると、設計意図が伝わりやすくなります。
運用時のポイント(チェックリスト)
- 主要な顧客行動を盛り込んでいるか(検索→一覧→詳細→購入)
- 新旧コンテンツやキャンペーンの導線が分かるか
- 更新履歴や担当者が明示されているか
- 定期的にアクセスデータと照らして更新しているか
維持管理のコツ
サイトマップは作って終わりにしないでください。改善のたびに小さな変更を反映し、四半期ごとに見直すと運用が楽になります。小さな図示を習慣にすると、問題の早期発見につながります。












