はじめに
調査の目的
この調査は、ハンドメイド作家が実際にどのくらいの月収を得ているかを明らかにするために行いました。収入の幅や傾向を示し、これから活動を始める方や伸ばしたい方が現実的な目標を立てられるようにすることを目指します。
調査の範囲と方法
全国のハンドメイド作家を対象に、オンラインアンケートとインタビューを組み合わせて収集しました。販売場所は自宅販売、フリマアプリ、ハンドメイドマーケット、委託販売、ワークショップなど多岐にわたります。期間は過去1年間の月収に着目しています。
本レポートの構成と使い方
全10章で、収入の分布、活動スタイル別の目安、ジャンル別の違い、活動歴ごとの変化、成功事例、具体的な増収戦略、税務上の注意点まで幅広く扱います。各章は独立して読めますので、必要な箇所からご覧ください。
読者への期待
数字だけでなく具体例と実践的なアドバイスを重視しました。自分の活動に当てはめて現実的な計画を立てる手助けになれば幸いです。
ハンドメイド作家の月収の現実
現状の数字
ハンドメイド作家の収入は二極化しています。月売上が5,000円未満が32.1%、5,000〜1万円未満が15.6%、1〜2万円未満が11.2%で、月5万円以上は約7%にとどまります。平均では月5万円以下が多い一方、約8割の作家が何らかの収入を得ており、販売歴1年未満でも7割以上が売上を上げています。
なぜ二極化するのか
主な理由は「販売時間と価格設定」「販売チャネルの差」「継続的な顧客の有無」です。趣味で始める人は時間が限られ、価格を低く設定しがちです。販売先やプロモーションの違いで露出に差が出ます。商品ジャンルや季節需要も影響します。
実務的な見方
収入の現実は怖くありませんが、安定させるには意識が必要です。まずは原価と労働時間を把握して正しく値付けし、販売チャネルを複数持ち、リピーターを増やす工夫をしましょう。小さな目標を積み重ねることで収入は徐々に改善します。
活動スタイル別の収入目安
概要
ハンドメイド作家の収入は活動スタイルで大きく変わります。目安として、副業レベルは月1万円~5万円、本業レベルは月10万円~30万円、成功者レベルは月50万円以上となることが多いです。年収100万円超は約1割にとどまり、安定的な収入を得るのは難しい状況です。
副業レベル(週末販売・趣味程度)
週末のフリーマーケットや少数のネット出品が中心です。商品単価が低めで販売個数も限られるため、月1万〜5万円が現実的です。例えば、平均単価1,500円の商品を月10〜30個売れればこの範囲に入ります。
本業レベル(ネット販売中心)
ネットショップやSNSで継続的に集客できると月10万〜30万円を見込めます。平均注文額2,000〜5,000円で、月間数十〜数百件の注文がある状態を目指します。広告や梱包、材料費などのコスト管理が重要です。
成功者レベル(ブランド化・イベント出展)
ブランド化や大型イベント、卸売・法人案件を持つ作家は月50万円以上を稼ぐこともあります。単価の高い商品や受注生産、定期契約が収入安定化に寄与します。
収入の安定に向けて
収入の差は商品単価、販売チャネル、集客力、制作体制で決まります。価格設定の見直しや複数チャネル展開、委託・卸の活用が安定化の近道です。
ジャンル別の月収比較
月収の目安
- アクセサリー:平均3~5万円程度
- 洋服:平均5~10万円程度
- 雑貨:平均2~4万円程度
- アート/イラスト:幅広く1~10万円程度
数値は目安です。洋服は比較的高い傾向がありますが、多くのジャンルで月5万円前後が上限となることが多いです。
なぜ差が出るのか
- 単価:洋服は1点あたりの単価が高いです。アクセサリーや雑貨は単価が低めです。
- 制作時間と材料費:手間がかかる作品は単価を上げやすいです。材料費が高いと利益が圧迫されます。
- 販売チャネル:イベント向けのアイテムとネット向けでは売れ方が異なります。
- 需要の幅:季節性や流行の影響を受けやすいジャンルがあります。
ジャンル別の特徴と収入を伸ばすコツ
- アクセサリー(3~5万円):小ロットで回しやすく、SNSでの見せ方が効果的です。セット販売やギフト対応で単価を上げます。
- 洋服(5~10万円):サイズ展開や企画力で差をつけられます。受注生産やオーダー対応で高単価を狙います。
- 雑貨(2~4万円):価格帯を細かく設定しやすいです。日常使いに寄せた提案でリピートを増やします。
- アート/イラスト(1~10万円):原画販売や版権商品、ポートフォリオの見せ方で幅があります。印刷物やグッズ化で収益化します。
各ジャンルで共通するのは、価格設定と見せ方を工夫すると収入が伸びやすい点です。
活動歴による収入の伸び
はじめに
活動歴が長くなるほど収入が伸びる傾向があります。本章では、具体的な傾向とその理由、継続するための実践ポイントをやさしく解説します。
データで見る傾向
- 活動歴2年以上になると、月2〜5万円の層が約3倍に増えます。
- 活動歴5年以上では、月10万円以上を稼ぐ作家が約5.6倍に増える傾向です。
これらは継続が収入向上に大きく寄与することを示しています。
伸びる理由
- 信頼の蓄積:作品レビューやリピーターが増えます。
- 技術向上:作るスピードと品質が安定します。
- 販路の拡大:イベント出展やSNS、委託先が増えます。
具体例
- 例1:初年度は月数千円、3年で月3万円。作品点数増加とSNS発信の継続が要因です。
- 例2:5年目で月10万円超。教室開催や定期販売が収入源になりました。
継続のための実践ポイント
- 小さな目標を設定して達成感を積み重ねる。
- 定期的に価格や販売方法を見直す。
- リピーター向けの仕組み(メルマガや割引)を作る。
- 技術と効率を同時に磨く(時間短縮の道具導入など)。
活動を続けることで得られる効果は確実です。焦らず一歩ずつ改善していきましょう。
実際の成功事例
事例の概要
あるハンドメイド作家のブログ・販売を軸にした成功例です。公開初年度の7ヶ月で約56万円の利益、2年目に約230万円、3年目に約400万円となり、3年で利益が約7倍に成長しました。
何をしたか(具体的な行動)
- ブログを週1回以上更新し、作品の制作過程や使い方を丁寧に紹介しました。検索で見つかりやすくする工夫を続けています。
- 商品ラインを少しずつ増やして、価格帯を1,500〜8,000円に分け、買いやすさと満足度の両立を図りました。
- オンラインショップとハンドメイドマーケット、地域のイベントを併用して販路を分散しました。
- 定期的にリピーター向けの割引やセット販売を行い、顧客の定着を促しました。
- 利益の一部を材料仕入れと広告(SNSの有料投稿)に再投資しました。
結果と成長の要因
- 初期はブログ経由の流入とイベント販売が中心で、収入はゆっくり増えました。2年目はコンテンツ蓄積と商品数の増加で売上が飛躍しました。3年目はブランド認知が高まり、安定した注文とリピーターによって利益が大幅に増えました。
学べるポイント(実践しやすいこと)
- 情報発信を継続することが土台になります。毎週の更新は効果的です。
- 商品ラインを段階的に広げ、試しやすい価格帯を用意しましょう。
- オンラインとオフラインを組み合わせて販路を作るとリスクが減ります。
- 利益は次の成長へ再投資する意識が重要です。
月収10万円以上を得ている作家の特徴
概要
月収10万円以上を安定して得ている作家は少数派(全体の約2.3%)ですが、そのうち8割以上が毎月収入を確保しています。共通する生活習慣や工夫を紹介します。
制作時間と量
多くは週に20〜30時間を制作に充てます。例として、週5日で1日4〜6時間、月に40〜80点を目安に作る人がいます。一定の制作リズムが売上安定につながります。
収入源の分散
ネット販売、委託販売、イベント出店を組み合わせます。例えば、オンラインが月6万円、イベントで3万円、委託で1万円といった分散が多いです。
価格設定と利益管理
材料費と時間を計算して適正価格にします。単価を上げるために限定品やセット販売を導入する人が多いです。
作業効率と外注
工程を見直して時短を図り、必要に応じて一部を外注します。外注で販路拡大に集中できるようにします。
ファン作り
SNSやメルマガでリピーターを育て、定期的な購入を促します。小さな声にも応える姿勢が信頼を生みます。
収入を増やすための戦略
価格設定の最適化
材料費、制作時間、販売手数料、包装や配送費を合算し、希望する利益を上乗せします。具体例:材料500円+制作2時間×時給1,200円(2,400円)+手数料200円=3,100円。ここに利益20%(約620円)を加えると、販売価格は3,720円→3,800円に設定します。心理価格やセット販売で単価を上げる工夫も有効です。
ジャンル別の工夫
アクセサリーなら独自パーツやカスタム刻印、布小物は内ポケットや撥水加工、イラストは限定ナンバリングやサイズ展開を加えると差別化できます。素材や仕上げを変えるだけで価格帯を広げられます。
SNS活用でファンを増やす
制作過程の短い動画や制作写真を週2〜3回投稿します。ストーリーやライブで裏側を見せると信頼が増します。ハッシュタグとキャプションで狙った層に届くよう意識し、DMでクーポンや再購入の案内を送ると効果的です。
制作効率の向上
まとめ制作(同じ工程を何個分か続けて行う)、写真撮影の固定セット作り、工程のテンプレ化で時間を短縮できます。材料はまとめ買いで単価を下げ、作業は工程ごとに分けると外注しやすくなります。
実行の優先順位と指標
まずは価格見直し、写真改善、SNS投稿の3点を優先します。注文件数、客単価、リピート率を定期的に測ると改善点が分かります。これらを継続的に改善することで、月収50万円も現実的になります。
月収20万円を達成するためのロードマップ
1)目標を具体化する
月収20万円を「売上」で達成するのか「手取り」で達成するのかを決めます。まずは売上目標を立て、必要な利益率や販売数に落とし込みます。
2)収入モデルを設計する
商品を「主力商品(定番)」「高単価商品」「小物(試し買い)」の3本柱に分けます。例:主力を3,000円で月50個、高単価を10,000円で月5個、小物を1,000円で月40個で合計約20万円になります。
3)販路と集客を分散する
自分のEC、ハンドメイドマーケット、委託販売、イベント出店を組み合わせます。SNSで作品の魅力を伝え、メルマガやリピーター特典で継続購入を促します。
4)価格と利益計算を明確にする
材料費・手数料・梱包・発送を差し引いた実際の利益を把握します。広告や外注を使う場合は投資対効果を測ります。
5)週間スケジュールとタスク配分
制作(40%)、出品・写真(20%)、集客(20%)、梱包・発送(10%)、経理・改善(10%)を目安に習慣化します。
6)外注と投資の目安
売上の一部を写真撮影や広告、梱包代に投資します。自分が苦手な作業は外注で時間をつくり、制作量を増やします。
7)KPIで改善する
月別売上、販売数、客単価、リピート率、広告費対効果を定期的に確認して改善します。小さな改善を積み重ねることで安定した月収につながります。
税務上の注意点
確定申告が必要になる基準
ハンドメイド販売での「年間所得」が48万円以上になると確定申告が必要です。すでに給与所得(会社員など)がある場合は、副業の所得が年間20万円以上で申告が必要になります。
売上と所得の違い
売上は受け取った金額、所得は売上から材料費や送料などの経費を引いたものです。例:売上10万円、経費3万円なら所得7万円です。
経費にできる主な項目
材料費、包装・発送費、委託販売手数料、撮影や宣伝費、作業スペースの家賃按分などが経費になります。高額な工具は耐用年数で按分して経費にする場合があります。
青色申告と白色申告
青色申告は特典があり有利ですが、事前の届出と帳簿の記帳が必要です。白色申告は手続きが簡単ですが優遇は限定的です。ご自身の販売規模や帳簿管理の負担で選んでください。
記帳・保存と実務的な注意点
領収書や明細は必ず保存し、日々の売上や経費を記帳してください。通帳や経費用のクレジットカードを分けると管理が楽になります。会計ソフトや専門家の活用も有効です。
相談先
不明点は税務署や税理士に相談してください。ケースによって扱いが変わることがありますので、早めに確認すると安心です。












