はじめに
オウンドメディアの運用や制作を外部に委託することを検討している方向けに、このシリーズをお届けします。
この記事で目指すこと
このシリーズは、委託の基礎知識から実務で役立つ具体的なポイントまで、やさしく丁寧に解説します。費用や業務範囲、選び方、失敗例と対策まで網羅しますので、初めて外注を考える方にも役立ちます。
誰に向いているか
・自社での運用に限界を感じている経営者やマーケ担当者
・専門知識やリソースが不足している中小企業やスタートアップ
・業者選びで失敗したくない広報担当者
本シリーズの使い方
各章は独立して読めますが、流れを把握するなら順に読むと分かりやすいです。まずは自社の目的(集客・ブランディング・採用など)と予算を整理しておくと、次の章から具体的に検討できます。
この先では、実務に直結する具体例や注意点も交えて説明していきます。気軽に読み進めてください。
オウンドメディアとは何か?委託の背景
オウンドメディアの定義
オウンドメディアは、企業が自ら所有・運営する情報発信の場です。自社サイト、ブログ、メールマガジン、SNSアカウントなどを含みます。外部プラットフォームに依存せず発信をコントロールできます。
活用の目的(具体例付き)
- ブランディング:企業の価値観や専門性を伝えるために事例紹介や対談記事を掲載します。
- リード獲得:ホワイトペーパーや問い合わせ誘導で見込み客を集めます。
- 顧客育成:メルマガや連載で関係を深めます。
運用が難しい理由
コンテンツ制作、編集、デザイン、SEO、効果測定まで必要です。専門知識と継続的な工数を求められます。社内で人材が不足したり、他業務に時間を取られて更新が滞ることが多いです。
委託(運用代行)が増える背景
外部に委託すると、専門スキルの導入、更新頻度の確保、成果の見える化が可能になります。例えば、社内にライターやSEO担当がいない場合、短期間で品質の高い記事を安定供給できます。
委託を検討する目安
・更新が滞っている・効果が出ない・社内で運用できる人員が足りない場合は委託を検討してください。外注は費用だけでなく時間と専門性の補完策です。
オウンドメディア委託(運用代行)の主な業務範囲
戦略設計・コンサルティング
メディアの目的やターゲットを明確にし、コンセプトを定めます。SEOで狙うキーワード選定や数値目標(PV、CVなど)、運用スケジュールもここで決めます。具体例:半年で流入を1.5倍にするためのキーワードと投稿頻度の設計。
立ち上げ・構築
サイト設計、サーバー準備、デザイン企画、CMS導入を行います。テンプレート作成やスマホ表示の最適化まで対応します。具体例:WordPress導入と記事投稿がすぐできる管理画面の設定。
コンテンツ制作・編集
記事企画、執筆、編集、画像や動画制作を担当します。ユーザー調査に基づきニーズに合った内容を作ります。具体例:検索意図に合わせた記事構成とアイキャッチ画像の制作。
運用・更新・効果測定
定期投稿、アクセス解析、コンバージョン分析を実施し、改善提案と実行を行います。毎月のレポートで数値と施策を共有します。
内製化サポート
社内で運用できるようにノウハウ共有や人材育成、業務フローの仕組み化を支援します。研修やマニュアル作成も含みます。
部分委託(記事のみや解析のみ)からフルパッケージまで選べます。まずは得意分野と提供範囲を確認するとよいです。
委託のメリットとデメリット
メリット
- 専門的な知見とノウハウで高品質な運用が可能です。プロはSEOや編集、効果測定の経験を持つため、効率的に成果を出せます。例:検索順位改善や記事の回遊率向上。
- 自社の人的リソースを削減できます。社内での作業負担が減り、採用や教育コストも抑えられます。
- コア業務に集中できます。営業・商品開発など本来の業務へ注力でき、生産性が上がります。
- 成果分析や改善サイクルの構築が容易です。定期レポートやA/BテストでPDCAを回せます。
- 最新のSEOやコンテンツ手法に対応できます。トレンドやアルゴリズム変化にも迅速に対応します。
デメリット・注意点
- ノウハウ蓄積や人材育成が遅れるリスクがあります。外部任せにすると社内に知識が残りにくいです。対策:ナレッジ共有の仕組みや定期的な社内研修を設けましょう。
- 継続的な費用がかかります。短期契約の更新や月額費用を見積もっておく必要があります。費用対効果を定期的に確認してください。
- コミュニケーションや情報共有の手間が増える場合があります。担当者を明確にし、連絡フローと報告頻度を決めると円滑に進みます。
- 品質や方針のズレが起きることがあります。方針を共有し、成果物のチェック体制を作ると安心です。
費用相場・料金体系
概要
オウンドメディア委託の費用は、委託範囲や記事本数、制作の深さで大きく変わります。ここでは代表的なプランと料金目安、見積もり時の注意点を分かりやすく説明します。
料金プランの目安
- フルパッケージ:月額80万円〜(月間8本以上を想定)。社内工数は週2時間程度。
- ハイブリッド型:月額50万円〜(月間4〜8本)。社内工数は週5時間程度。
- 部分委託:月額20万円〜(4本以上)。社内工数は週1時間程度。
記事単価・初期費用
記事単価の目安は2〜10万円/本です。取材や専門性、撮影が入ると高くなります。CMS構築や戦略設計など初期構築費用が別途発生する場合があります。なお見積もりに何が含まれるかを必ず確認してください。
価格変動の主な要因
企画・取材の有無、専門性、画像・動画の制作、SEO対策、分析・改善頻度、納品スピードなどで金額が上下します。契約期間や成果連動の報酬体系も影響します。
見積もりを取る際のポイント
- 月間の記事本数と想定工数を明確にする。
- 初期構築(戦略・CMS・タグ設定)を含むか確認する。
- 成果指標(流入・問い合わせ)と報告頻度を合わせる。
- 解約条件や追加作業の単価を事前に確認する。
依頼の目安(簡易例)
- 小規模:月1〜2本なら部分委託が現実的。費用は20万円前後。
- 成長期:月4本前後ならハイブリッド型を検討。社内での連携を増やします。
- 大規模:月8本以上や包括的運用はフルパッケージが向きます。
最後に、見積もりは支援範囲と契約条件で変わるため、複数社で比較して条件を揃えて確認することをおすすめします。
委託会社の選び方・比較ポイント
1) 実績・事例の確認
- 自社と似た業界や目的(BtoB・EC・集客など)で成功事例があるか確認します。例えば、BtoB製造業で問い合わせ数が倍増した事例などがあると安心です。
- 数字で示す事例(アクセス数、CVR、リード数)を求めましょう。
2) 対応範囲・得意分野
- 戦略設計、コンテンツ制作、SEO、広告運用、分析まで一貫して対応できるか確認します。
- 得意分野が偏っている場合は、組み合わせ運用や外部連携の提案があるかもチェックします。
3) 費用体系の明確さ
- 見積もりが項目別に明確か、成果報酬の有無、追加費用の条件を確認します。
- 月次の作業時間や成果指標も提示されると納得しやすいです。
4) コミュニケーション・サポート体制
- 担当者の専門性、定例会の頻度、報告フォーマットを確認します。
- 緊急時の対応方法や連絡経路も事前に決めておくと安心です。
5) 内製化支援の有無
- 将来、自社で運用する意向があれば教育やマニュアル提供の有無を確認します。
- 事例として、運用移行後のサポート期間が明示されていると良いです。
6) 比較のポイントと質問例
- 比較表に「実績」「対応範囲」「費用」「報告頻度」「内製支援」を並べて点数化すると判断しやすいです。
- 例:過去の成功事例を具体的に説明できますか? 見積もりに含まれない想定外の費用はありますか?
7) 選定の注意点(チェックリスト)
- 成果を数字で示せない会社は慎重に。短期で効果を約束する過度な主張も要注意です。
委託の流れと注意点
1. 委託前の準備
・現状分析:アクセスやコンバージョンなど数値を集めます。例:月間PVや流入経路。
・目標設定:達成したい成果(例:月間問い合わせ数+30件)を明確にします。
・範囲と予算決定:記事制作のみか運用まで含めるか、予算感を固めます。
2. 問い合わせ〜選定
・複数社へ要件を提示して見積もりを取ります。
・実績や担当者の相性を確認します。事例や業種の近さを重視してください。
3. 契約〜キックオフ
・KPIや納品物、納期、保守範囲を契約書に明記します。
・情報共有の手段(チャット/メール/ツール)と頻度を決め、初回ミーティングで役割分担を明確にします。
4. 運用開始と定例
・定例ミーティングで進捗・数値を確認します。週次・月次の頻度を業務量に合わせて設定します。
・レポートは原因と次の施策を含めて受け取ると改善が早まります。
5. 成果確認と改善
・KPIに基づき効果を評価し、改善案を優先順位化して実行します。
・成果が出ない時は仮説→検証のサイクルを短く回してください。
注意点(必ず確認すること)
・KPIを具体的にする:数値・期間を決めます。
・情報セキュリティ:アクセス権や個人情報の取り扱いを明確にします。
・コミュニケーション体制:窓口と報告頻度を契約前に確認します。
・解約条件:期間や違約金を事前に確認すると安心です。
実績のある運用代行会社・サービス紹介
概要
実績のある運用代行会社は種類が多く、目的に応じて選べます。ここでは代表的なタイプと特徴、費用感、選び方のポイントを分かりやすくまとめます。
業界特化型(BtoB・医療・不動産など)
特徴:業界知識が深く、専門用語や読者像を反映した記事を作れます。例:医療分野なら監修体制を整えた会社が信頼できます。
費用感:月額10万〜50万円が目安。
SEO強化型
特徴:キーワード設計や内部施策、被リンク対策などで検索流入を伸ばします。数値に基づく改善提案を出す会社が多いです。
費用感:月額15万〜80万円。
フルパッケージ(戦略立案〜制作〜解析)
特徴:ワンストップで実行。社内リソースが不足している場合に向きます。
費用感:初期費用+月額30万〜150万円。
技術支援型(CMS構築・解析)
特徴:サイト改修やタグ設計、GAやSearch Consoleの高度な運用を補佐します。
費用感:プロジェクト単位で数十万〜数百万円。
選び方のポイント
- 実績の具体例(業界・KPI)を確認する
- 担当体制とコミュニケーション頻度を明確にする
- 成果指標と報告形式を合意する
事例イメージ
- 小規模BtoB:月10万で記事制作+SEO改善で流入改善
- ECサイト:フルパッケージでCVR向上と広告連携を実施
目的に合わせてタイプを絞り、数社で相見積もりを取り比較してください。
よくある失敗例と対策
1) 委託範囲や目標が曖昧
失敗例:何を誰がするか決めないまま発注し、記事の品質や納期で齟齬が生じる。例えば「記事作ってください」だけでターゲットや目標がない。
対策:運用目的(認知、リード獲得など)とKPI(CV数、問い合わせ数、滞在時間など)を最初に決め、成果指標と報告頻度を明文化します。
2) 費用対効果が低い
失敗例:高額な委託費を払っても問い合わせや売上につながらない。最初から全額固定で契約していたため見直しが難しい。
対策:試行期間や段階的投資を設け、小さな施策で効果検証を行います。成果報酬型や部分的な外注でリスクを下げ、KPIに基づく判断で継続可否を決めます。
3) 自社担当者のリソース不足
失敗例:社内で承認や連携が滞り、スケジュール遅延や方針ずれが起きる。
対策:役割分担表(RACIなど)を作り、連絡窓口と承認ルールを明確にします。定期ミーティングや共有ダッシュボードで進捗を可視化し、必要なら外注範囲を広げて負担を減らします。
4) コミュニケーション不足
失敗例:期待値のズレにより修正が増えコスト増大。
対策:初回にガイドラインを作成し、定期レポートで数値と施策を合わせて確認します。小さな改善を繰り返す運用(PDCA)を定着させます。
まとめ
要点の再確認
オウンドメディアの委託は、専門性と効率を同時に得られる有力な手段です。目的(認知拡大、顧客獲得、ブランディング等)を最初に定め、KPIを具体化すると成果を測りやすくなります。
パートナー選びのポイント
費用だけで選ばず、実績・業務範囲・コミュニケーション体制を重視してください。実例の確認や短期トライアルで相性を確かめると失敗を減らせます。
契約と運用の注意点
目標、納品物、報告頻度、費用の内訳を明確にします。定期的なミーティングと数値レビューで軌道修正を行い、改善サイクルを回してください。
成功のための行動チェックリスト
- 目的とKPIを社内で共有する
- 優先する業務範囲を決める(記事制作、SEO、SNS等)
- 評価期間(例:3〜6ヶ月)を設ける
- レポート形式と頻度を合意する
最終的に、外部の知見を活用しつつ自社で意思決定を続けることが成功の鍵です。丁寧な連携と継続的な改善を重ねてください。












