はじめに
目的
本記事は、AWSのリザーブドインスタンス(Reserved Instances、RI)について分かりやすく説明することを目的としています。主にEC2などを長期で利用する際のコスト削減策としての位置づけや、導入判断に必要な基礎知識を提供します。
対象読者
クラウド利用を始めたばかりの方、現在AWSを利用していてコスト最適化を検討している方、IT担当者や経営者の方に向けています。専門用語は最低限にし、具体例で補います。
この記事で学べること
- リザーブドインスタンスの基本的な仕組み
- RIの種類と違い
- 支払いオプションとコストの見方
- 導入するときの注意点とメリット・デメリット
読み方のアドバイス
まず第2章で仕組みを押さし、第3章以降で自社の利用状況に合う選択肢を検討してください。実際の費用比較は第4章を参照すると分かりやすいです。
AWSリザーブドインスタンスとは
概要
リザーブドインスタンス(RI)は、AWSのEC2などを長期間利用する前提で事前に契約することで、利用料を大幅に割引できる仕組みです。通常のオンデマンド(使った分だけ支払う方式)に比べて、最大で70%前後の割引が得られます。主に1年または3年の契約期間が選べ、安定した運用や予算管理を重視する場合に有効です。
仕組みのイメージ
RIは「利用を約束する代わりに割引を受ける」仕組みです。具体的には、契約した期間中に対象のインスタンスを使うと自動的に割引が適用されます。たとえば、オンデマンドで1時間100円のインスタンスが、RIを契約すると1時間30円になるとします。この場合、1日24時間、1か月(30日)使うと、オンデマンドでは72,000円、RIなら21,600円となり、大きな差が生まれます。
具体的にどんなときに向くか
- 常時稼働するWebサーバーやデータベースなど、負荷が安定しているサービス
- 予算を確実に計画したい場合
- 長期間にわたり同じ性能のインスタンスを使い続ける見込みがあるとき
初めて使うときのポイント
- 契約期間中は料金の優遇を受けますが、短期間での解約による返金は基本的に期待できません。
- 割引は契約条件(インスタンスタイプやリージョンなど)に基づいて適用されます。条件に合うインスタンスを使えば自動で割引がかかります。
この章では制度の全体像を分かりやすく示しました。次章でリザーブドインスタンスの種類と違いを詳しく説明します。
リザーブドインスタンスの種類
リザーブドインスタンスには主に2つのタイプがあります。ここではそれぞれの特徴と、選ぶときのポイントをわかりやすく説明します。
スタンダード(Standard RI)
スタンダードは割引率が高く、購入時に指定したインスタンスタイプやリージョンで使います。契約期間の途中で別のインスタンスに変更できません。たとえば、1年間同じ種類のWebサーバーを安定して動かす予定がある場合に向いています。コストを最大限に下げたいときに選びやすいタイプです。
コンバーティブル(Convertible RI)
コンバーティブルは割引幅はスタンダードより小さいものの、契約期間中にインスタンスタイプやOSなど一部の条件を変更できます。たとえば、最初は小さめのインスタンスで始めて、あとで性能を上げたいときに別のタイプへ切り替えられます。将来のリソース変動が予想されるケースに適しています。
選び方のポイント
- ワークロードの予測がつくならスタンダードが有利です。長期間同じ構成で動かすと割引効果が高くなります。
- 将来の変更が見込まれるならコンバーティブルを検討してください。柔軟性が高い分、割引は抑えめです。
- まずは現状の利用状況を確認し、安定性と柔軟性のどちらを重視するかで決めると選びやすくなります。
具体例
- 定期的なバッチ処理や社内システムなど、構成がほとんど変わらない場合:スタンダードをおすすめします。
- 成長フェーズでリソースを頻繁に変える可能性があるWebサービス:コンバーティブルが向きます。
以上が主要な種類と選び方のポイントです。
支払いオプション
AWSのリザーブドインスタンス契約時には、支払い方法が3種類あります。契約全体の支払い方法で割引額やキャッシュフローが変わります。
全額前払い(All Upfront)
- 契約開始時に期間分を一括で支払います。
- 割引率が最大になり、長期利用で最もコストを抑えられます。
- メリット:月ごとの請求が発生せず会計が簡単、総コストが最も低くなりやすいです。
- デメリット:初期費用が大きくなります。利用が不確実だと負担が大きく感じます。
部分前払い(Partial Upfront)
- 一部を契約時に支払い、残りを期間中に分割で支払います。
- 割引は中間的です。初期負担を抑えつつ割引も得たい場合に向きます。
- メリット:キャッシュを完全に固めたくないが割引も欲しい場合に有効です。
前払いなし(No Upfront)
- 契約時の前払いはなく、月ごとに支払います。
- 割引率は最も低いですが、初期投資が不要でキャッシュフローに余裕が出ます。
- メリット:資金に制約がある、または将来の利用見込みが不確かな場合に選びやすいです。
選び方のポイント
- 利用予定期間、手元資金、需要の確実さで選びます。長期で確実に使うなら全額前払い。資金に余裕がないがある程度確信があるなら部分前払い。短期や不確定なら前払いなしが現実的です。
リザーブドインスタンスのメリット
概要
リザーブドインスタンス(RI)は、長期利用を前提にすることで大きな割引を受けられる仕組みです。主な利点は「コスト削減」「予算の見通しやすさ」「高稼働率のワークロードに適する点」です。
1. 大幅なコスト削減
長期間(通常1年または3年)使うことで、オンデマンド料金に比べて最大で72〜75%程度の節約が期待できます。例えば、オンデマンドで月1万円かかるインスタンスを長期契約にすると、数千円台に下がることがあり、トータルの運用費を大きく圧縮できます。
2. 予算計画が立てやすい
RIは料金が固定化されやすいため、月次・年次のコスト見積もりが簡単です。突然の料金変動が少ないため、経理や予算管理がしやすくなります。したがって、長期的な支出計画を立てたい場合に有利です。
3. 高稼働率のシステムに向く
常時稼働するWebサーバー、APIサーバー、定期実行のバッチ処理、稼働率の高いデータベースなど、ほぼ常に動いているシステムで効果を発揮します。稼働率が高いほど割引の恩恵を受けやすくなります。
4. 導入時の実務的ポイント
事前に現在の利用状況を測定し、実際に長期稼働が見込めるか確認してください。インスタンスタイプや容量を適切に選ぶことで、さらに無駄を減らせます。また、将来の利用変化を想定して余裕を持った計画を立てると安心です。
注意点・デメリット
柔軟性の制約
スタンダードRIは契約時のインスタンスタイプ、リージョン、OSなどが固定されます。途中で別のタイプやリージョンに変更できないため、将来の設計変更に対応しにくいです。コンバーティブルRIでもある程度の変更は可能ですが、期待通りに移行できないケースがあります。
使い切れないリスク
契約した期間中は割引が適用されますが、使用量が想定より少ない場合でも料金は発生します。たとえば、24時間稼働を見込んで予約していても実際はピーク時のみしか使わないなら無駄が出ます。
長期契約の不確実性
一般に1年または3年の契約が多く、事業やシステムの方針が変わると負担になります。短期のプロジェクトや成長が不確定な場合は慎重に判断してください。
管理と見積りの重要性
適切な予約数・サイズを見誤るとコスト効率が下がります。定期的に利用状況を確認し、必要ならリザーブの見直しや別の割引手段を検討することが大切です。
他の選択肢との比較
セービングスプランやスポットインスタンスなど、用途に合う別の割引手段があることも意識してください。用途や変動性に応じて最適な方法を選ぶと良いです。
まとめ
リザーブドインスタンス(RI)は、長期間にわたり安定して稼働するワークロードのコストを抑える有効な手段です。たとえば、常時稼働するWebサーバーやデータベースのように利用が安定しているリソースには大きな効果を発揮します。
導入判断では、契約期間中の柔軟性と利用率を見極めることが重要です。スタンダードRIは割引率が高く、利用パターンが変わらない場合に適します。コンバーティブルRIは割引率がやや低くても、インスタンスタイプの変更など将来の変化に対応できます。支払いは全額前払い・一部前払い・前払なしの選択肢があり、初期コストとランニングコストのバランスで選びます。
導入の流れとしては、まず現在の利用状況をモニタリングし、平均的な稼働率や将来の計画を確認します。次に、契約期間(1年・3年)や支払い方法を決め、スタンダードかコンバーティブルかを選びます。契約後も定期的に利用状況を見直し、必要ならば設定変更や追加購入を検討してください。
最後にチェックリストを示します。
- 常時稼働のリソースがあるか確認する(目安:高い稼働率)
- 1年・3年でどちらが適切か検討する
- 支払い方法でキャッシュフローに合うものを選ぶ
- スタンダードとコンバーティブルの特徴を照らし合わせる
- 導入後も利用状況を継続的に確認する
これらを踏まえ、運用形態に合ったプランを選べば、コスト削減と安定運用の両立が図れます。












