はじめに
ご挨拶
本書をお読みいただきありがとうございます。本書は、AWS(Amazon Web Services)の無料利用枠について、アカウント作成時から2年目以降にどう扱われるかを分かりやすく解説するために作成しました。クラウド初心者の方でも理解できるよう、具体例を交えて丁寧に説明します。
本書の目的
AWSには複数の“無料枠”がありますが、種類ごとに適用条件や期間が異なります。本書では「12か月間無料」「常に無料(Always Free)」「トライアル」の3種類を軸に、2年目以降の扱いや注意点、料金発生のタイミングまでを整理します。これにより、思わぬ請求を防ぎ、無駄なコストを抑える手助けをします。
読み方の案内
各章は実務で役立つ見出しごとに分けています。まずは本章で全体像をつかみ、次章以降で詳しいルールや対策を順を追って学んでください。練習用の簡単な例も用意していますので、実際に操作しながら確認すると理解が深まります。
それでは次章から、3種類の無料利用枠の内容に入っていきます。
AWS無料利用枠の概要と3種類の無料枠
はじめに
AWSの無料利用枠は、利用者がサービスを試しやすくする仕組みです。目的や適用条件が異なる3種類があり、使い方によって得られる恩恵が変わります。
1. 12か月間無料枠
新しいAWSアカウント作成日から12か月間、有料サービスの一部を一定量まで無料で使えます。対象例:EC2(仮想サーバー)、S3(ストレージ)、RDS(データベース)など。注意点は開始日がアカウント作成日であることと、上限を超えると通常料金が発生する点です。
2. 常に無料枠
アカウント作成時期に関係なく、全ユーザーが常時利用できる枠です。例としてLambda(サーバーレス実行)やDynamoDB(NoSQL)などが含まれます。日常的に小規模な処理や学習用途で役立ちます。
3. トライアル枠
サービスごとに設定された短期の無料期間です。利用開始から一定期間だけ適用されます。内容と期間はサービスごとに異なるので、利用前に仕様を確認してください。
共通のポイント
- それぞれ上限があります。上限を超えると課金されます。
- 無料枠の対象かはAWSコンソールのドキュメントや請求ダッシュボードで確認できます。
2年目以降の無料枠の扱い
概要
アカウント作成からの「12か月間無料」枠は、12か月が経過すると適用されなくなります。2年目以降に無料で使えるのは、常に無料(Always Free)に指定されたサービスだけです。代表的な12か月無料対象のEC2、S3、RDSは2年目以降は自動的に有料になります。
終了時の具体的な扱い
期限を過ぎると、AWSは自動で通常料金に切り替えます。たとえばEC2のインスタンスを起動したままにしておくと、時間単位で課金されます。S3のオブジェクトは保存容量に応じて課金され、RDSは稼働時間とストレージで請求されます。
請求を防ぐための確認方法
請求ダッシュボードで利用状況を確認してください。Billingコンソールの「Free Tierの使用状況」やCost Explorerで、どのサービスが料金対象になったか分かります。予算(Budget)を設定して、閾値を超えたらメール通知を受け取ると安心です。
簡単な対策(実践例)
- 不要なインスタンスは停止または終了する。
- データはスナップショットやローカルに退避してから削除する。
- 長期間使う場合は料金表を確認して、コストの安い構成に切り替える。
ポイント
2年目以降も無料で使えるかどうかは、常に無料の対象かどうかで決まります。期限切れ後は自動で課金が始まるため、事前に確認と対策を行ってください。
無料枠終了後の注意点と料金発生について
概要
無料枠の上限を超えるか、12か月の無料期間が終了すると、自動で従量課金に移行します。事前の確認を怠ると意図せず料金が発生するため、期日や利用状況を把握することが重要です。
料金が発生するタイミング
- 無料枠の対象量を超えた瞬間から超過分に課金されます。
- 12か月無料枠は期限の翌日から通常課金になります。
特に注意すべきサービス(例)
- EC2:インスタンス起動中は時間単位で課金。停止でもボリューム(EBS)は課金されます。起動タイプやリージョンで単価が変わります。
- RDS:稼働中のDBインスタンスやストレージ、バックアップに対して課金されます。
- S3:保存容量、リクエスト数、データ転送で料金が発生します。
確認と対処の手順
- 請求ダッシュボードやCost Explorerで利用状況を確認する。
- AWS Budgetsで予算アラートを設定し、閾値を超えたら通知を受け取る。
- 不要なリソースは「停止」ではなく「終了(削除)」する。停止中でも一部課金が残る点に注意してください。
- スナップショットやバックアップを整理し、保存クラスやインスタンスタイプを低コストなものに変更する。
最後に
課金は自動で始まるため、2年目に入る前に対象サービスの洗い出しと整理を行ってください。削除前に必要なデータを必ずバックアップしてから操作してください。
第5章: 2年目以降も無料で使えるAWSサービス
概要
常に無料で使える枠(Always Free)は利用期間に制限がなく、2年目以降も使い続けられます。ここでは代表的なサービスと注意点をやさしく説明します。
代表的なサービス
- AWS Lambda
- 月あたり100万リクエストまで無料です。小さなイベント処理や定期処理に向いています。実行時間やメモリ量での課金があるため、無駄に長く実行しないようにしてください。
- Amazon DynamoDB
- テーブルのストレージで最大25GBまで無料枠があります。アクセス頻度が高くなると読み書きキャパシティに応じた課金が発生します。テーブル設計で読み書き量を抑える工夫が有効です。
- Amazon CloudWatch(特定のメトリクスやログ)
- 一部のログやメトリクスの無料枠があり、簡単な監視なら費用をかけずに済みます。ログ保持期間やメトリクス数が増えると課金対象になります。
利用時の注意点
- 無料枠は“枠内”のみ無料です。超過分は自動的に課金されます。
- 定期的に請求ダッシュボードや使用状況を確認してください。アラームや予算を設定すると安心です。
こんなときは見直しを
- テスト環境が成長して無料枠を超えそうなとき
- 長時間実行するLambda関数や大量のログが出る場合
簡単な監視と設計の工夫で、2年目以降も上手に無料枠を活用できます。
2年目以降のコスト対策・無料枠活用のコツ
定期的なチェックとアラート設定
請求と利用状況は定期的に確認してください。AWS Budgetsや請求アラートを設定すると、想定外の課金を早期に発見できます。例:月額予算を設定して超過時にメール通知を受け取る。
不要リソースの停止・削除
使っていないEC2インスタンスや未アタッチのEBSボリューム、古いスナップショットはコストの原因です。停止や削除を習慣にすると無駄な課金を防げます。
無料枠や低コストの代替への移行
継続利用が必要な機能は、無料枠対象サービスやより安価なオプションへ移行してください。例:常時稼働が不要ならスポット/スポットインスタンスやサーバーレス(Lambda)を検討します。
使用量の最適化と自動化
スケーリング設定でピーク時以外は自動で縮小するようにします。定期的に利用パターンを見直し、リソースサイズを見直してください。
クレジットとプロモーションの活用
AWSの新規クレジットやキャンペーン(例:最大200ドル)を利用できる場合があります。適用条件を確認して有効に使いましょう。
定期レビューと請求分析習慣
月次で請求書を確認し、サービス別の費用を把握してください。チームで共有するチェックリストを作ると検出が早くなります。
これらを組み合わせることで、2年目以降も無駄な支出を抑えつつ必要なサービスを使い続けられます。
まとめ・よくある質問
まとめ
- 12か月の無料利用枠は1年で終了します。2年目に自動延長はありません。
- 常時無料のサービスは引き続き無料で使えます(例:一部のS3機能やIAMなど)。
- 無料枠を超えると課金が発生します。不要なリソースは速やかに削除しましょう。
コスト管理チェックリスト
- 無料枠の利用状況を定期確認する。
- 請求アラートや予算アラートを設定する。
- 開発用環境は停止・削除でコストを抑える。
- リソース命名やタグで所有者を明確にする。
よくある質問
Q1: 12か月の無料枠は自動で延長されますか?
A1: いいえ。アカウント作成から12か月で終了します。
Q2: 2年目以降も完全に無料で使えますか?
A2: 一部のサービスは常時無料枠がありますが、すべてが無料になるわけではありません。したがって、利用状況を確認してください。
Q3: 無料枠終了後に急に高額請求されることはありますか?
A3: 条件次第で発生します。請求アラートを設定し、不要リソースを削除すればリスクを下げられます。
Q4: 誤って課金が発生したらどうすればいいですか?
A4: 請求履歴を確認し、必要ならサポートに連絡してください。証拠を用意すると手続きが早まります。
最後に
無料枠は便利ですが期限と範囲を把握することが重要です。日常的な確認と簡単な運用ルールで無駄な料金を防げます。ご不明点があれば気軽にご相談ください。












